超人ゾンビ

魚木ゴメス

文字の大きさ
上 下
46 / 155

46

しおりを挟む
 ドアを開けると既に閣僚全員揃っていた。

「やあやあ、お待たせしました」

 にこやかに挨拶する。

 全員立ち上がって首相の着席を待った。

「冒頭、総理に残念なお知らせがあります」

 国家公安委員長が発言した。

 なにぃ? 残念なお知らせだと? まさか犯人が捕まったか! 

 そんな心の動揺をおくびにも出さず余裕たっぷりに尋ねる。

「ん、どうしたのかね? まさかサザエさんが終了するとか?」

 どっと笑い声が起こる。

「いえ、そうではありません。総理、新たな犠牲者が出てしまいました。つい先程、国素(くにもと)元Z務事務次官が殺されました」

 それを聞いた瞬間、亜婆はタマヨ、ゴシマ、コロステリェフ、シライ、ペネフ、シライ2、ゴリバノフ、サパタ、シライ3と進んで最後にリューキンを決め、十八・五点を叩き出した──心の中で。

 イィィィィヤホォォオウ!

 侵略者の白人騎兵隊を撃破したアパッチのように心の中で雄叫びをあげた。

 国素元Z務事務次官、それはついさっき口を極めて亜婆を罵倒していた電話の相手の名前だった。一番最初に殺された屠塚の前任者で、六十六歳の亜婆より六つも年下だった。にも拘らずあの口調だった。完全に亜婆を舐めきっていて、昼休みにメロンパン買いに行かせるパシりくらいにしか思っていなかった。

 とどのつまり日本国首相など日本の権力機構の序列で言えばそんな程度なのであった。
  
 亜婆はそのことを一期目の政権で思い知り、二期目からは彼らZ務省の忠実な犬になっていた。
 いや手段を問わない覚悟さえあれば、泥水を飲む覚悟さえあればZ務省に対抗する術などいくらでもあるのだが、泥水を飲むどころか高校生になってもお手伝いさんの母乳を飲んでいた超おぼっちゃん育ちの亜婆にそんな覚悟があるはずもなく。

 熱いトタン屋根でたった一度だけ火傷した猫のように、一期目の挫折で完全に心を折られてしまっていた。

 それになにより自分も上級国民の一員なのだ、その自分が何で下級国民のために矢面に立たにゃならんのだ、TPPが成立しようが種子法廃止しようが水道が民営化しようが移民が入って来ようが法人税下げようが消費税が上がろうが道州制になろうが自分は金持ちだから全く困らん、する気もない憲法改正だけ言ってりゃ、下級国民の奴ら勝手に期待して自分を支持してくれるから、それを最大限利用してZ務省が望む法案全部通したれ、そして日本憲政史上最長政権記録を樹立してやる、と完全に開き直っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

笑い話オリジナルジョーク集

合高なな央
大衆娯楽
気分転換にいいですよ

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

処理中です...