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Tは意外といった顔つきで口笛を吹いた。
「あっそ。まぁどっちでもいいや。じゃあ次、青忌(あおき)の話な。ってあれ、そっちの刑事さんまた泣いてるの? これで三度目だね」
村西刑事も気付いていた。
島田記録係の肩が震えてる。
嗚咽していた。
やっぱりだ。奴は三度目の涙を流した。この男・Tに同情したことを後悔する涙をだ。犯行に至るまでのTの心情吐露、あの奇妙奇天烈な告白が本当なら、その人生には確かに不幸な部分がたくさんある。だがそれを差し引いても、今回の連続殺人事件についてTに情状酌量の余地は全くない。こいつは正真正銘の外道だ。
村西はTにあごをしゃくった。
「気にするな。続けろ」
警察は当初、屠塚Z務事務次官の殺害は通り魔的犯行または個人的な恨みによるものと考えていた。
だがその二日後に惨殺された蚊藤がZ務事務次官OBだったことで、二件の殺しはある意図をもって行われた犯行、連続テロである可能性が高まった。
その見方は捜査関係者だけでなく世間一般にも拡がった。
屠塚が殺された時点で既に世間は蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていたが、蚊藤が殺害されたことで騒ぎはますます大きくなった。
我々虐げられし日本国民のためについに誰かが決起したのだ!
などと無責任なことを言い出す者まで現れ始めた。
実際そういう声は多かった。
「祭」が始まったと。
逆にどうやら当事者らしいことがわかってきたZ務事務次官OBたちは、 身の程知らずにも上級国民である自分たちに牙を剥く狂人の出現に怒り、苛立った。
おい警察! おまえら一体何をやっている? 一刻も早くこの殺人犯を捕まえろ!
とブラック企業の社長のように厳命していた。
それぞれ大企業や政府系機関、大手地方銀行や大手シンクタンクなどに天下り、現職の首相ともツーカーにしていまだ社会に絶大な影響力を持つ彼らは、蚊藤が殺された翌日に緊急会合を開いた。
「あっそ。まぁどっちでもいいや。じゃあ次、青忌(あおき)の話な。ってあれ、そっちの刑事さんまた泣いてるの? これで三度目だね」
村西刑事も気付いていた。
島田記録係の肩が震えてる。
嗚咽していた。
やっぱりだ。奴は三度目の涙を流した。この男・Tに同情したことを後悔する涙をだ。犯行に至るまでのTの心情吐露、あの奇妙奇天烈な告白が本当なら、その人生には確かに不幸な部分がたくさんある。だがそれを差し引いても、今回の連続殺人事件についてTに情状酌量の余地は全くない。こいつは正真正銘の外道だ。
村西はTにあごをしゃくった。
「気にするな。続けろ」
警察は当初、屠塚Z務事務次官の殺害は通り魔的犯行または個人的な恨みによるものと考えていた。
だがその二日後に惨殺された蚊藤がZ務事務次官OBだったことで、二件の殺しはある意図をもって行われた犯行、連続テロである可能性が高まった。
その見方は捜査関係者だけでなく世間一般にも拡がった。
屠塚が殺された時点で既に世間は蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていたが、蚊藤が殺害されたことで騒ぎはますます大きくなった。
我々虐げられし日本国民のためについに誰かが決起したのだ!
などと無責任なことを言い出す者まで現れ始めた。
実際そういう声は多かった。
「祭」が始まったと。
逆にどうやら当事者らしいことがわかってきたZ務事務次官OBたちは、 身の程知らずにも上級国民である自分たちに牙を剥く狂人の出現に怒り、苛立った。
おい警察! おまえら一体何をやっている? 一刻も早くこの殺人犯を捕まえろ!
とブラック企業の社長のように厳命していた。
それぞれ大企業や政府系機関、大手地方銀行や大手シンクタンクなどに天下り、現職の首相ともツーカーにしていまだ社会に絶大な影響力を持つ彼らは、蚊藤が殺された翌日に緊急会合を開いた。
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