超人ゾンビ

魚木ゴメス

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「残念だったな。もう少しだったのにな」

 心を読まれたと確信した。

 こ、こいつは人間じゃねえ~っ!

 壁がどんどん遠ざかっていく。

 沖に流されていく漂流者の気分だった。

「おまえ臭えなぁ~っ、ゲロ以下どころじゃねえ、ドブの匂いがするぜ。庶民の血税でまるまる太った南京虫なんきんむし野郎が」

 え? 庶民の血税? 南京虫?

 何を言っているのかわからなかった。

「言い忘れてたがオレはおまえを殺しに来たんだよ」

 ええええーっ!

 脳内が絶叫するマスオさんで埋め尽くされた。

 今度は完璧にわかった。

 ほ、本当かい?

 と聞き返す勇気はなかった。

 破裂しそうな蚊藤の心臓にさらなる負荷がかかる。

「おまえ聞いてねえか。おとついZ務事務次官殺されたろ」

 キッズルームに籠もって悦子と母乳三昧の生活を送る蚊藤の耳にも、つい二日前に起きたその事件の情報は入っていた。

 Z務事務次官というか屠塚個人を逆恨みしたキチガイの犯行で、すぐ犯人は捕まるだろうと思っていた。

 ましてや自分に関係があるとは思ってもいなかった。

「あ、ああ、あれは……」

「そうだ。オレがやった。オレは国の資産を外国資本に叩き売り、返す刀で国民には増税ラッシュ、重税に次ぐ重税を課し塗炭の苦しみを味わわせ続けている真性の売国奴にして真性の国賊の巣窟そうくつ、Z務省の歴代トップを見せしめに十人ぶち殺すことに決めた。パンパカパーン! おめでとうございます。おまえは二人目だ」

 蚊藤はドラゴンボールのキャラが気を高めるときのように心の中で叫んだ。
 
 ただし疑問形で。
 
 寝耳に水どころではない、寝耳に銃弾だった。

 この男は奇跡的な確率で偶然ここに来たのではなかった。

 キチガイはキチガイに違いないが明確に自分の命を狙って来たのだ。
 
 キチガイを説得できるのか。

「そ、それは違う! 違いますっ!」

「何が違う」

「わ、わたしたちZ務官僚は常に公正公平な税体系作りを心がけているっ、あなたがた国民の皆さんが安穏あんのんに暮らせるのは、わたしたち優秀なZ務官僚のお蔭なんですよっ! か、感謝されこそすれ、殺される謂われなんかないっ!」

「それな。おまえらそう言うけどよ、じゃあなんで日本の財政は慢性的な大赤字なんだよ! おまえらのどこが日本一優秀だっ! 不況だろうが何だろうが大赤字埋める口実で増税に次ぐ増税しまくってんだろうが! しかも増税する度におまえら官僚の給料ばかり上がってんだろうがっ! ……確かに日本国民も悪い。何も抗議しないからな。殺される順番を黙って待ってる家畜同然の腑抜ふぬけばかりだ。おまえらZ務省がやりたい放題なのは国民の自業自得とも言える。だがこのままでは何も変わらん。だからオレが決起した。そして悦子を見てオレの魔羅は勃起した。そんなことはどうでもいい。蚊藤、てめえは殺す」

 蚊藤は最悪の事態になったことを悟った。
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