超人ゾンビ

魚木ゴメス

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 まるで透明人間の仕業か、あるいは殺害現場の部屋に瞬間移動したようにしか思えなかった。
 
 そう、まさに瞬間移動。

 その瞬間移動したとしか思えない、全ての現場で共通した侵入方法、どうやってやったかまるでわからないが、確かに同じトリックによるものかもしれない。

 思いながら村西はTに問い質した。

「全く同じ方法なのか」

「全く同じ方法だ」

「そうか……まぁいい、続けろ」

「オレはオレの意図を世間に知らしめるため、その記念すべき最初のターゲットとして、屠塚にとびきり残酷な処刑方法を実施してやった。オレは屠塚にすぐにとどめを刺さないで、ガキがウスバカゲロウの羽や足をプチプチもぐように肉片をむしり、抉り取り、生まれてくるんじゃなかったと思うような激痛を何時間もかけて味わわせてやった。まぁ聞けや。楽には死なせなかった。それはな、連中の特権的人生と、連中に好き放題搾取され、干上がったミミズのようになすすべもなく死んでいく大多数の庶民の人生との帳尻合わせする必要があったからさ」

「帳尻合わせだと」

「そうだ。奴ら高級官僚は、何も並外れた努力をしたわけじゃない。世襲だ。イカサマだ。インチキだ。親が高級官僚ならその子供はバカでもアホでも自動的に高級官僚になれる。公務員試験、マークシート方式? いくらでも操作できる」

「そんなわけあるか」

 思わず笑いながら村西は言った。

「俺はちゃんと試験受けて自分で答え書いて、後で自己採点もしてみたが間違いなく書いた通りの結果だったぞ」

「あんたは実力で受かったんだろ。でもな、本来落ちるはずの奴らが、実力では受からない奴らが、親のコネで合格してるんだよ。イカサマ採点でな」

「アホ抜かせ」

 日本刀の切れ味で遮るように村西は言った。

 あり得ない。そんなこと絶対にあり得ない。もしそんなカラクリがあったら、この国の未来には破滅しかない。ある意味生きながらにして腐敗が進行している状態ではあるが……

 しかし村西が日本刀の切れ味で言下に否定してみせても、Tもまた、その歪みきってはいるが絶対に崩れない不動の信念というか妄想を確固として維持しているのだった。

 にしても脱線もいいとこだ。こいつの話は脱線だらけだ。最初の告白、全部が脱線だったではないか。

「蚊藤元Z務事務次官の件だ」

 いささかうんざりして村西が促す。

「そうそう蚊藤のおじいちゃんの話だったな。こいつは傑作だぞプフフフ」

 高級官僚とミミズのように干上がって死んでいく庶民の人生の帳尻合わせの話はどうでもよかった感じであった。

 ここからは再度、島田記録係の出番だ。
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