超人ゾンビ

魚木ゴメス

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 それは屠塚を絶望させるに十分な状況だったが、それ以上に屠塚を絶望させる光景が目の前に繰り広げられていた。
 
 そう、目の前では、北欧調の豪華な木製のダブルベッドの上で、屠塚の妻と娘がTにむさぼられていたのだ。
 
 さすがに具体的には書けない。これは出歯亀の好奇心を満たすための低俗な三文週刊誌ではない。
 
 だが代わりに島田記録係の拙い比喩をもってお伝えしよう。
 
 屠塚の妻は獣のように咆哮・絶叫しながら、充血したアワビをナメクジのようにテラテラと粘液ねんえきまみれにさせながら、Tのねちっこい変質者のような愛撫を受け入れていた。
 
 その粘液の量は凄まじく大量で、もしそのまま水の中に沈めたら、Tもろとも屠塚の妻の全身は粘液でできた分厚い膜に覆われてしまったことであろう。
 
 そう、ヌタウナギが敵から身を守るとき、全身を粘液でできた分厚い膜で覆うが如く。
 
 Tは屠塚の妻のナメクジのようにテラテラ光るアワビを、その亀裂きれつを押し広げ、その深奥しんおうを、内臓が見えるまで押し広げ、椅子に固定されている屠塚に見せつけてみせた。

御開帳ごかいちょう~、おら屠塚、いい眺めだろぉ~、もう二度と見ることはねえんだ、この世の土産みやげによっく見とけよ~」
 
 満面の笑みで屠塚に語りかける。

「うぬぬ……」
 
 全身から恐怖と怒りで滝のように汗を滴らせ歯ぎしりする屠塚。

「ああん、そんな奴に構ってないで、もっともっと私を可愛がってぇ~ん」
 
 従順な妻だった。
 
 女の選り好みが激しい屠塚が選びに選んだ学歴も容姿も文句の付け所のない妻だった。
 
 妻とのセックスにはバイアグラは不要だった。
 
 その妻が、二十五年連れ添ってきた屠塚を案山子かかしかペットの犬のように邪険に扱う。
 
 屠塚は怒りと屈辱で頭がクラクラした。

「許さん……絶対に許さんぞ……このままで済むと思うなよ……」
 
 腹の底から絞り出すような声で屠塚がうめく。
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