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(つづき)
アカネは敬虔なクリスチャンだった、はずだ。当然オレと付き合えますようにって神に祈っただろう。それでオレたちは付き合えなかったってことは、そのほうが彼女の為になるからだ。神が彼女を守ったのだ。彼女をオレから守ったのだ。だから彼女は今も昔もずっと幸せだ。間違いない。ヤバイ。今これを思い出してる時点で怒りがどんどん溢れてくる。ムカついてしょうがない。どうせ死ぬんだ、やってやる!」
洪水のような怒濤の如きTの告白ショーはまだ続く。
やってやるって、もうやっただろ!
そう怒鳴りつけようとしたとき、嗚咽が聞こえた。うんざりした調子で舌打ちをしながら村西はTの肩越し、その向こう側に目をやる。
記録係の島田刑事だ。
彼は刑事になるくらいだから正義感は人一倍強い。感受性も強かった。
先ほどは、Tに比べて自分は何と幸運だったかと、余りにも恵まれた己のこれまでの人生を神に感謝し感激の涙を流したのだったが、今度こそ、Tのよくわからないが、とにかく凄まじい後悔と呪詛の念に満ち溢れた奇天烈な告白に完全に感化されていた。霊媒が悪霊に乗り移られたようなものだった。
可哀想過ぎる、この男、可哀想過ぎる! 俺ならとっくに死んでるっ、こんな惨めな人生、あり得ない。気の毒になぁ。
心の底からそう思っていた。
村西と違い、島田はTは整形し、手足は骨延長手術で伸ばしたのだろうと考えていた。
島田を度外れた馬鹿と思うなかれ。
繰り返すが、村西と違い、Tを正面から凝視せずに話だけ聞いている島田に、整形はともかく骨延長手術などという突飛な発想をさせしめる、魔力のごとき迫真の響きがTの声にはあった。
「泣くなっ!」
村西は一喝した。
この男Tに同情される資格なんかない。おまえはTのために泣いたことを後できっと後悔する。そのとき三度目の涙を流すだろう。
視線を戻す。
Tは島田の嗚咽にも村西の一喝にもまるで無関心なのだった。Tの告白は続く。この後ついに最大の山場がやってきた。
アカネは敬虔なクリスチャンだった、はずだ。当然オレと付き合えますようにって神に祈っただろう。それでオレたちは付き合えなかったってことは、そのほうが彼女の為になるからだ。神が彼女を守ったのだ。彼女をオレから守ったのだ。だから彼女は今も昔もずっと幸せだ。間違いない。ヤバイ。今これを思い出してる時点で怒りがどんどん溢れてくる。ムカついてしょうがない。どうせ死ぬんだ、やってやる!」
洪水のような怒濤の如きTの告白ショーはまだ続く。
やってやるって、もうやっただろ!
そう怒鳴りつけようとしたとき、嗚咽が聞こえた。うんざりした調子で舌打ちをしながら村西はTの肩越し、その向こう側に目をやる。
記録係の島田刑事だ。
彼は刑事になるくらいだから正義感は人一倍強い。感受性も強かった。
先ほどは、Tに比べて自分は何と幸運だったかと、余りにも恵まれた己のこれまでの人生を神に感謝し感激の涙を流したのだったが、今度こそ、Tのよくわからないが、とにかく凄まじい後悔と呪詛の念に満ち溢れた奇天烈な告白に完全に感化されていた。霊媒が悪霊に乗り移られたようなものだった。
可哀想過ぎる、この男、可哀想過ぎる! 俺ならとっくに死んでるっ、こんな惨めな人生、あり得ない。気の毒になぁ。
心の底からそう思っていた。
村西と違い、島田はTは整形し、手足は骨延長手術で伸ばしたのだろうと考えていた。
島田を度外れた馬鹿と思うなかれ。
繰り返すが、村西と違い、Tを正面から凝視せずに話だけ聞いている島田に、整形はともかく骨延長手術などという突飛な発想をさせしめる、魔力のごとき迫真の響きがTの声にはあった。
「泣くなっ!」
村西は一喝した。
この男Tに同情される資格なんかない。おまえはTのために泣いたことを後できっと後悔する。そのとき三度目の涙を流すだろう。
視線を戻す。
Tは島田の嗚咽にも村西の一喝にもまるで無関心なのだった。Tの告白は続く。この後ついに最大の山場がやってきた。
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