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Tは結局机を叩くことなく、しばらくして腕を静かに下ろし、また股の間に戻して手を組んだのだった。
「オレがその美少女、アカネを避けた理由に妹と似た雰囲気を感じていたという事実がある。何か身内っぽいというか、親戚ぽいというか、オレの女版というか、自分と同じ系統ぽかったので、見た目から性格までオレとまるきり違うタイプの女を求めていたから相手にしなかった、というのがある。ほんとにそうなんだよ。でもオレの女版なら、オレとひとつになっていれば、オレという人間が完全体になっていたかもしれないと、今になって思う。さっき気付いた、てか前から気付いてた、アカネがもし……こういう言い方は嫌だけど、ドブスだったら、オレはこれほどまでに後悔したか? いやしない、絶対しない。結局オレは見た目で判断しているんだよT! それは、その思考は、ナチスと何ら変わらず、白人優越思想と何ら変わらず。それらの思想・思考を否定、完全否定したいんだろ? オレは当時アカネより好きな女がいた。名前をセイラと言った。セイラとアカネは親友だった。今思えばアカネのほうが断然良かったのだが。クソッ! 認めろ。オレが中一のとき、アカネが何度もモーションかけてきたのに無視したオレに全責任がある。バカ親二匹にインスパイアされたからじゃねぇ! オレが、バカだったんだ! オレが選り好みして、果てしなく欲かいて、生涯最初で最後のチャンス、アカネを振ったんだよ! 終わりだ! 死ね! 死んでしまえ! バカなオレ! 利口なオレに生まれ変われ! でもオレって猿並みの知能だろ? 絶対猿並みの知能だよオレ。もうオレにチャンスはない。あるのは神の御心のみ。アカネは中学二年のときに大阪へ転校していった。中三になったときオレはセイラに文通を申し込んだ。なんとセイラは受けてくれた。オレたちはしばらく文通を続けた。卒業間近にオレはセイラに手紙で告白した。ハッキリ断られた。そしてセイラはオレにアカネさんとかどう? と打診してきた。アカネは大阪にいるがそんなことはどうでもいい! そんな距離の問題でなく、オレはセイラに振られて、オレを振ったセイラにアカネはどうかなんて言われてじゃあアカネにするわ~、ひとつよろしく。なんて言えるほど人間がこなれていなかった、頭の切り替えが早くなかった、要するに純粋、正確に言えば幼稚そのものだった。オレは振られた屈辱で激怒に身を震わせ、そのセイラからの最後の手紙を破り捨て、灰皿に入れて燃やした。そこでまたオレはチャンスを逃している。どうしようもない馬鹿間抜けだ。セイラとはそれっきりだ。高校入ってから偶然会うこともあったが、お互い友だち連れで自転車に乗っていて、すれ違いざま、おう、と軽く挨拶する程度だった。
(つづく)
「オレがその美少女、アカネを避けた理由に妹と似た雰囲気を感じていたという事実がある。何か身内っぽいというか、親戚ぽいというか、オレの女版というか、自分と同じ系統ぽかったので、見た目から性格までオレとまるきり違うタイプの女を求めていたから相手にしなかった、というのがある。ほんとにそうなんだよ。でもオレの女版なら、オレとひとつになっていれば、オレという人間が完全体になっていたかもしれないと、今になって思う。さっき気付いた、てか前から気付いてた、アカネがもし……こういう言い方は嫌だけど、ドブスだったら、オレはこれほどまでに後悔したか? いやしない、絶対しない。結局オレは見た目で判断しているんだよT! それは、その思考は、ナチスと何ら変わらず、白人優越思想と何ら変わらず。それらの思想・思考を否定、完全否定したいんだろ? オレは当時アカネより好きな女がいた。名前をセイラと言った。セイラとアカネは親友だった。今思えばアカネのほうが断然良かったのだが。クソッ! 認めろ。オレが中一のとき、アカネが何度もモーションかけてきたのに無視したオレに全責任がある。バカ親二匹にインスパイアされたからじゃねぇ! オレが、バカだったんだ! オレが選り好みして、果てしなく欲かいて、生涯最初で最後のチャンス、アカネを振ったんだよ! 終わりだ! 死ね! 死んでしまえ! バカなオレ! 利口なオレに生まれ変われ! でもオレって猿並みの知能だろ? 絶対猿並みの知能だよオレ。もうオレにチャンスはない。あるのは神の御心のみ。アカネは中学二年のときに大阪へ転校していった。中三になったときオレはセイラに文通を申し込んだ。なんとセイラは受けてくれた。オレたちはしばらく文通を続けた。卒業間近にオレはセイラに手紙で告白した。ハッキリ断られた。そしてセイラはオレにアカネさんとかどう? と打診してきた。アカネは大阪にいるがそんなことはどうでもいい! そんな距離の問題でなく、オレはセイラに振られて、オレを振ったセイラにアカネはどうかなんて言われてじゃあアカネにするわ~、ひとつよろしく。なんて言えるほど人間がこなれていなかった、頭の切り替えが早くなかった、要するに純粋、正確に言えば幼稚そのものだった。オレは振られた屈辱で激怒に身を震わせ、そのセイラからの最後の手紙を破り捨て、灰皿に入れて燃やした。そこでまたオレはチャンスを逃している。どうしようもない馬鹿間抜けだ。セイラとはそれっきりだ。高校入ってから偶然会うこともあったが、お互い友だち連れで自転車に乗っていて、すれ違いざま、おう、と軽く挨拶する程度だった。
(つづく)
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