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27.逮捕
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「俺はこんなところで死ねない! 無事帰って、愛するアーシャと結婚するんだ。お前には悪いがここで俺に狩られろ」
グアアアッ!!!
俺とジュール様とゴズワルドはブラッディベアと対峙していた。ソフィーとヨルギス、他の副長はケーラと村人の保護と抵抗する護衛隊を捕縛していっている。
矢の尽きた奴らは俺達の相手ではなく、手負いのヨルギスはアランと剣戟を繰り広げていた。
「さっきは随分、俺を虐めてくれたなぁ!」
「貴様の相手などしている場合ではない! そこを退かぬなら、刀の錆びにしてくれる!」
護衛隊では全く刃に立たなかったブラッディベア……
だが、俺達騎士団に取って、不足のない相手。しかも団長が揃っているのだ。
(何も怖い相手じゃない!)
「ゴズ! あのデカ物の動きを一時的で良いんだ、止められるか?」
「分からねえ……だが、俺が止めなければ、皆が危ない! やってみる」
「私も援護する!」
ガキーン!
大顎で噛み付き攻撃してきたブラッディベアに対して、グラムで防ぐ。並みの剣じゃ折られてしまうような凄まじい顎の力……
俺が受けて止めている間にジュール様はレイピアを抜き放ち、即座に眼球を突き刺した。
グアアア!!!
「くっ!? 全力で突いたが頭蓋を打ち抜けんとはとんでもない硬さだ!」
だが、負傷した片目から血を流し、前脚で押さえて痛がっている。もう片方の前脚もゴズが大盾で防いでいた。
「今だ! 俺に力を貸してくれっ、グラム!!!」
首筋に向かって、両手で思い切り振りかぶって叩きつける!!!
ブシュ!!
確かな手応えがあり、頸動脈まで刃筋が入っていた……だが、このまま振り払われたら、俺は地面に叩き付けられて、死ぬかもしれない。
「俺は無事に帰ってアーシャと結婚するんだ! こんなところで死ねるかぁぁーー!!」
彼女の笑顔を思い出し、全身の力を振り絞って、そのまま両断した。
「はぁ……はぁ……終わった……」
「良くやった! やはりヴェルは違うな!」
「ヴェル兄、スゴい!」
「何言ってんだよ、二人のお陰に決まってる。俺だけでこんな化け物倒せないって」
村を襲い、護衛隊を惨殺した魔物は二つの肉塊となって、その動きを止めている。それを見たアラン達は……
「な!? なんだと……我々が全く相手にならなかった魔物相手にそんないとも簡単に倒せるのだ……?」
驚愕していた。だが、俺達騎士団にとっては普通のこと。
「俺達、騎士はお前らみたいに弱い者虐めばっかりしてんじゃねえっ! 特に団長達は化け物みたいな奴らを屠ってきた。潜った修羅場が違うんだよぉぉ!!!」
バキーーンッ!
そう叫びながら、ヨルギスはアランの刀を叩き折っていた。
「くそっ! これでも食らえっ!」
懐から取り出したナイフを投げつけるが剣で見事に弾いたヨルギス。だが、アランはその隙に反転し、その場から逃げ去ろうとしていた。
「逃げるな、待てっ!」
「待てと言われて待つ馬鹿がどこにいる、次に会ったときには貴様の命はない! 覚えてい……」
ガンッ!!!
「ソフィー団長!?」
「全く……よええ癖にコイツは良く吠える……」
ソフィーがヨルギスの負傷を見越して、援護に駆け付け、逃げ去ろうとしていたアランを籠手で殴りつけていた。
顔面を歪ませ、崩れ落ちるアラン。
「済まねえ、ヨルギスの美味しいとこ持っち行ってしまった……」
「いえっ! とんでもありません。こいつを逃がすとまた、犠牲になる者が出たはず。ありがとうございました!」
「んな、頭下げんなって。それより肩貸してやんよ」
「おっ、おいっ! 大丈夫か!?」
「済みません……もう、体力の限界でした」
急に足に来たのか、ソフィーに向かって倒れ込むヨルギスだった。
「たくっ、甘えん坊だな、お前は……」
「面目ないです、はは……」
ヨルギスの介抱をソフィーに任せ、俺達はヘンリー王子を追う。追い付くと街道で二つの騎馬が遠くで対峙している。
一方は白銀の甲冑を纏ったヘルマン卿、もう一方は漆黒の甲冑のヘンリー王子……
「ヘルマン! 道を開けろ! それとも不敬にも俺の道を塞ぐ痴れ者に成り下がったか?」
「まだ、終わってませんぞ! あなたの部下を見捨てるおつもりですかな?」
「ふん、奴らは所詮、ただの駒。俺が逃げられればいつでも再編出来る!」
「陛下は偉大だが、あなたの育て方だけは上手くいかなかったようだ」
「父上のような小物と俺を比べるな! やはり騎士団は潰しておかぬと俺に刃向かうようだな……」
「御託はいい! 何が欲しい? 金か? 爵位か? それとも女か?」
「もう、どれも要りませぬ! いや、一つだけありますな」
「ほう、何だ、それは?」
「若者達の行く末にございます。故にあなたはここで捕縛させて頂きます!」
「抜かせ! 貴様のようなロートルに俺が捕まるとでも思ったか!?」
剣を抜いたヘンリー王子がいきなり斬りつけるがヘルマン卿は難なく、剣で受け止めていた。
「失礼致します……むんっ!」
「ぐはぁ……」
そして、刃を立てずに鎬で胸に打ち付けると王子は……
「ごほっ、ごほっ……くっ!? 貴様がここまでやるとは……認めてやろう。だが……」
ヘンリー王子は卑怯にも馬の尻を剣で軽く突いていた。
ヒヒヒーーーン!
馬は嘶き、ヘンリー王子の下から走り去ってしまう。
「はっはっはっ! 何も敵を殺すだけが戦いではない!」
暴走する馬を御することに苦心するヘルマン卿とすれ違う。
「ヘルマン卿!」
「間に合ったか! 今こそアーシャの思いを代弁するのだ!」
俺に一言だけ告げて、走り去ってしまった。だが、アーシャを貶めた男を捕らえる機会を譲って頂いたようなもの……
「ヘンリー殿下……あなたを拘束させて頂きます」
「一介の騎士如きがふざけた真似を……そこを退くなら命だけは助けてやろう」
「退けません」
そう告げた瞬間、襲い掛かってきたので俺は軽く剣で振り払うと王子は体勢を崩して、落馬していた。
「馬鹿な……この俺が負けるだと……」
なんとか四つん這いになったところに剣を突き付けると……
「欲しいのは何だ? 望むものは何でも与えてやるぞ」
「ならば、アーシャに心から謝罪して頂きたい!」
「はっはっはっ、あの女に俺が頭を下げるか……中々、堅物だと思ったが面白い冗談が言えるようだな! だが、そんなことは飲めん」
俺はその一言でこの男を斬り殺してやりたい衝動に駆られた。
「殺ってみろよ! 腰抜けの貴様には出来まい!」
「ヴェル! 止めろ! そんなことをすれば……」
ジュール様が俺を制止し、ゴズが王子を後ろ手に縛る。
「ヘンリー殿下、あなたの身柄は拘束させて頂く」
「ふん、腰抜けの貴様に捕縛されてしまうとは……だが、こんなことをして、ただでは済まさんぞ!」
どこまでも憎らしい男だった……
グアアアッ!!!
俺とジュール様とゴズワルドはブラッディベアと対峙していた。ソフィーとヨルギス、他の副長はケーラと村人の保護と抵抗する護衛隊を捕縛していっている。
矢の尽きた奴らは俺達の相手ではなく、手負いのヨルギスはアランと剣戟を繰り広げていた。
「さっきは随分、俺を虐めてくれたなぁ!」
「貴様の相手などしている場合ではない! そこを退かぬなら、刀の錆びにしてくれる!」
護衛隊では全く刃に立たなかったブラッディベア……
だが、俺達騎士団に取って、不足のない相手。しかも団長が揃っているのだ。
(何も怖い相手じゃない!)
「ゴズ! あのデカ物の動きを一時的で良いんだ、止められるか?」
「分からねえ……だが、俺が止めなければ、皆が危ない! やってみる」
「私も援護する!」
ガキーン!
大顎で噛み付き攻撃してきたブラッディベアに対して、グラムで防ぐ。並みの剣じゃ折られてしまうような凄まじい顎の力……
俺が受けて止めている間にジュール様はレイピアを抜き放ち、即座に眼球を突き刺した。
グアアア!!!
「くっ!? 全力で突いたが頭蓋を打ち抜けんとはとんでもない硬さだ!」
だが、負傷した片目から血を流し、前脚で押さえて痛がっている。もう片方の前脚もゴズが大盾で防いでいた。
「今だ! 俺に力を貸してくれっ、グラム!!!」
首筋に向かって、両手で思い切り振りかぶって叩きつける!!!
ブシュ!!
確かな手応えがあり、頸動脈まで刃筋が入っていた……だが、このまま振り払われたら、俺は地面に叩き付けられて、死ぬかもしれない。
「俺は無事に帰ってアーシャと結婚するんだ! こんなところで死ねるかぁぁーー!!」
彼女の笑顔を思い出し、全身の力を振り絞って、そのまま両断した。
「はぁ……はぁ……終わった……」
「良くやった! やはりヴェルは違うな!」
「ヴェル兄、スゴい!」
「何言ってんだよ、二人のお陰に決まってる。俺だけでこんな化け物倒せないって」
村を襲い、護衛隊を惨殺した魔物は二つの肉塊となって、その動きを止めている。それを見たアラン達は……
「な!? なんだと……我々が全く相手にならなかった魔物相手にそんないとも簡単に倒せるのだ……?」
驚愕していた。だが、俺達騎士団にとっては普通のこと。
「俺達、騎士はお前らみたいに弱い者虐めばっかりしてんじゃねえっ! 特に団長達は化け物みたいな奴らを屠ってきた。潜った修羅場が違うんだよぉぉ!!!」
バキーーンッ!
そう叫びながら、ヨルギスはアランの刀を叩き折っていた。
「くそっ! これでも食らえっ!」
懐から取り出したナイフを投げつけるが剣で見事に弾いたヨルギス。だが、アランはその隙に反転し、その場から逃げ去ろうとしていた。
「逃げるな、待てっ!」
「待てと言われて待つ馬鹿がどこにいる、次に会ったときには貴様の命はない! 覚えてい……」
ガンッ!!!
「ソフィー団長!?」
「全く……よええ癖にコイツは良く吠える……」
ソフィーがヨルギスの負傷を見越して、援護に駆け付け、逃げ去ろうとしていたアランを籠手で殴りつけていた。
顔面を歪ませ、崩れ落ちるアラン。
「済まねえ、ヨルギスの美味しいとこ持っち行ってしまった……」
「いえっ! とんでもありません。こいつを逃がすとまた、犠牲になる者が出たはず。ありがとうございました!」
「んな、頭下げんなって。それより肩貸してやんよ」
「おっ、おいっ! 大丈夫か!?」
「済みません……もう、体力の限界でした」
急に足に来たのか、ソフィーに向かって倒れ込むヨルギスだった。
「たくっ、甘えん坊だな、お前は……」
「面目ないです、はは……」
ヨルギスの介抱をソフィーに任せ、俺達はヘンリー王子を追う。追い付くと街道で二つの騎馬が遠くで対峙している。
一方は白銀の甲冑を纏ったヘルマン卿、もう一方は漆黒の甲冑のヘンリー王子……
「ヘルマン! 道を開けろ! それとも不敬にも俺の道を塞ぐ痴れ者に成り下がったか?」
「まだ、終わってませんぞ! あなたの部下を見捨てるおつもりですかな?」
「ふん、奴らは所詮、ただの駒。俺が逃げられればいつでも再編出来る!」
「陛下は偉大だが、あなたの育て方だけは上手くいかなかったようだ」
「父上のような小物と俺を比べるな! やはり騎士団は潰しておかぬと俺に刃向かうようだな……」
「御託はいい! 何が欲しい? 金か? 爵位か? それとも女か?」
「もう、どれも要りませぬ! いや、一つだけありますな」
「ほう、何だ、それは?」
「若者達の行く末にございます。故にあなたはここで捕縛させて頂きます!」
「抜かせ! 貴様のようなロートルに俺が捕まるとでも思ったか!?」
剣を抜いたヘンリー王子がいきなり斬りつけるがヘルマン卿は難なく、剣で受け止めていた。
「失礼致します……むんっ!」
「ぐはぁ……」
そして、刃を立てずに鎬で胸に打ち付けると王子は……
「ごほっ、ごほっ……くっ!? 貴様がここまでやるとは……認めてやろう。だが……」
ヘンリー王子は卑怯にも馬の尻を剣で軽く突いていた。
ヒヒヒーーーン!
馬は嘶き、ヘンリー王子の下から走り去ってしまう。
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暴走する馬を御することに苦心するヘルマン卿とすれ違う。
「ヘルマン卿!」
「間に合ったか! 今こそアーシャの思いを代弁するのだ!」
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「一介の騎士如きがふざけた真似を……そこを退くなら命だけは助けてやろう」
「退けません」
そう告げた瞬間、襲い掛かってきたので俺は軽く剣で振り払うと王子は体勢を崩して、落馬していた。
「馬鹿な……この俺が負けるだと……」
なんとか四つん這いになったところに剣を突き付けると……
「欲しいのは何だ? 望むものは何でも与えてやるぞ」
「ならば、アーシャに心から謝罪して頂きたい!」
「はっはっはっ、あの女に俺が頭を下げるか……中々、堅物だと思ったが面白い冗談が言えるようだな! だが、そんなことは飲めん」
俺はその一言でこの男を斬り殺してやりたい衝動に駆られた。
「殺ってみろよ! 腰抜けの貴様には出来まい!」
「ヴェル! 止めろ! そんなことをすれば……」
ジュール様が俺を制止し、ゴズが王子を後ろ手に縛る。
「ヘンリー殿下、あなたの身柄は拘束させて頂く」
「ふん、腰抜けの貴様に捕縛されてしまうとは……だが、こんなことをして、ただでは済まさんぞ!」
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