9 / 14
9.策謀
しおりを挟む
「言ってきてやったぜ」
「ご苦労様。もう帰っていいわ」
路地裏に潜んでいたヴィクトリアにディックが話し掛けた。しかし、用が済んだことを確認すると立ち去るよう伝えるなど、連れない態度だった。
「ちょっと待った、お嬢様よぉ、もっかい訊くがエレンを好きにしていいってのは本当なんだろうな?」
「勿論よ。私はエレンを公爵家から追い出したい。あなたは追い出されたエレンを好きにする。それに何か、問題があって?」
「いやよぉ、王家からの賜りもんなんて、盗んで無事でいられっのかと思ってよぉ……」
「あなたが心配するようなことではありません。貴族のことは貴族に任せなさい」
ヴィクトリアはエレンとディックを助けるつもりなど、さらさらなく、二人とも始末するつもりでいた。
「まあ、良く分かんねえけど、どの道、このままだとエレンに手出し出来ねえんだ。協力してやるよ」
――――数ヶ月前のこと。
ヴィクトリアは公爵家に彷徨くディックを怪しみ、声を掛けた。
「ここで何をしていらっしゃるの?」
「ああ? ここに世話になってるメイドに話があんだよ。あんた、ここの家の身内か、何かか?」
「そうね、もうすぐ身内になるわ。そう、あのメイドに……少し、お話しできないかしら? あなたにも悪い話じゃないと思うけど」
ヴィクトリアはディックを伯爵家の離れに招き、二人の関係を聞き出していた。
「そうなんですね。あなたとあのメイドが浮気を……とんだ淫乱女ですこと……」
(そんな女が私の婚約者のお世話だなんて……)
自らのことを棚に上げ、エレンを非難する。
「あいつは中々の玉だぜ、何せ、俺が仕込んでやったんだ」
「じゃあ、あの女はあなたの言うことは利くのね?」
「ああ、あいつは俺に逆らえねえ!」
利害が一致したことで互いにほくそ笑んでいた。
☆
――――伯爵ルートヴィヒの執務室。
私はどうすれば良いのか、分かりませんでした。分からないながらも翌日、アンナさんに体調が戻ったことを伝え、仕事に復帰していて、旦那様のお部屋を綺麗にしております。
ディックにはああ言ったけど、偶然にもレオ様から場所を聞いておりました……
執務室に飾られた国王陛下の肖像画の裏に鍵があり……旦那様様の机の引き出しの中段……
私は掃除の手を止め、肖像画を外し、鍵を見つけました。そして、引き出しに手を掛け、開けると眩い光が照らしました。
――――約束の日。
「持ってきました。もう、これっきりに……」
「分かった、分かった。早く物を渡せ」
「はい……こちらです」
私は包みを解き、ディックに金時計を見せました。開いた瞬間、顔が写り込むくらい輝いています。
「すげ~ぜ! こいつは……一体、幾らになるんだ? 一生、遊んで暮らせそうだぜ!」
私から受け取り、小躍りしていたのですが……
「エレン……俺とお前は共犯者だ。黙って欲しかったら、分かるよなぁ、くっくっくっ。また、抱いてやる感謝しろ」
「そんな……これっきりって……」
私の願いなど、始めから利くつもりなんてなかったのです。
「騙されだってか? 世の中なぁ、騙される方が悪いんだよ!!!」
勝ち誇ったように私の腰に手を回そうとしたときでした。
「待て、悪党! 僕のエレンに触れるなっ!」
レオ様が現れ、ディックに向かって叫んだのです。
「何でここにガキが!? エレン! 騙しやがったな!」
「私はもう、あなたの言いなりにはなりません!」
「くそっ!」
ディックは私を押し退け、一目散に逃げ出しました。
「待てえ~!!!」
と、レオ様は叫びましたが、追い掛ける素振りは見せませんでした。
「ご苦労様。もう帰っていいわ」
路地裏に潜んでいたヴィクトリアにディックが話し掛けた。しかし、用が済んだことを確認すると立ち去るよう伝えるなど、連れない態度だった。
「ちょっと待った、お嬢様よぉ、もっかい訊くがエレンを好きにしていいってのは本当なんだろうな?」
「勿論よ。私はエレンを公爵家から追い出したい。あなたは追い出されたエレンを好きにする。それに何か、問題があって?」
「いやよぉ、王家からの賜りもんなんて、盗んで無事でいられっのかと思ってよぉ……」
「あなたが心配するようなことではありません。貴族のことは貴族に任せなさい」
ヴィクトリアはエレンとディックを助けるつもりなど、さらさらなく、二人とも始末するつもりでいた。
「まあ、良く分かんねえけど、どの道、このままだとエレンに手出し出来ねえんだ。協力してやるよ」
――――数ヶ月前のこと。
ヴィクトリアは公爵家に彷徨くディックを怪しみ、声を掛けた。
「ここで何をしていらっしゃるの?」
「ああ? ここに世話になってるメイドに話があんだよ。あんた、ここの家の身内か、何かか?」
「そうね、もうすぐ身内になるわ。そう、あのメイドに……少し、お話しできないかしら? あなたにも悪い話じゃないと思うけど」
ヴィクトリアはディックを伯爵家の離れに招き、二人の関係を聞き出していた。
「そうなんですね。あなたとあのメイドが浮気を……とんだ淫乱女ですこと……」
(そんな女が私の婚約者のお世話だなんて……)
自らのことを棚に上げ、エレンを非難する。
「あいつは中々の玉だぜ、何せ、俺が仕込んでやったんだ」
「じゃあ、あの女はあなたの言うことは利くのね?」
「ああ、あいつは俺に逆らえねえ!」
利害が一致したことで互いにほくそ笑んでいた。
☆
――――伯爵ルートヴィヒの執務室。
私はどうすれば良いのか、分かりませんでした。分からないながらも翌日、アンナさんに体調が戻ったことを伝え、仕事に復帰していて、旦那様のお部屋を綺麗にしております。
ディックにはああ言ったけど、偶然にもレオ様から場所を聞いておりました……
執務室に飾られた国王陛下の肖像画の裏に鍵があり……旦那様様の机の引き出しの中段……
私は掃除の手を止め、肖像画を外し、鍵を見つけました。そして、引き出しに手を掛け、開けると眩い光が照らしました。
――――約束の日。
「持ってきました。もう、これっきりに……」
「分かった、分かった。早く物を渡せ」
「はい……こちらです」
私は包みを解き、ディックに金時計を見せました。開いた瞬間、顔が写り込むくらい輝いています。
「すげ~ぜ! こいつは……一体、幾らになるんだ? 一生、遊んで暮らせそうだぜ!」
私から受け取り、小躍りしていたのですが……
「エレン……俺とお前は共犯者だ。黙って欲しかったら、分かるよなぁ、くっくっくっ。また、抱いてやる感謝しろ」
「そんな……これっきりって……」
私の願いなど、始めから利くつもりなんてなかったのです。
「騙されだってか? 世の中なぁ、騙される方が悪いんだよ!!!」
勝ち誇ったように私の腰に手を回そうとしたときでした。
「待て、悪党! 僕のエレンに触れるなっ!」
レオ様が現れ、ディックに向かって叫んだのです。
「何でここにガキが!? エレン! 騙しやがったな!」
「私はもう、あなたの言いなりにはなりません!」
「くそっ!」
ディックは私を押し退け、一目散に逃げ出しました。
「待てえ~!!!」
と、レオ様は叫びましたが、追い掛ける素振りは見せませんでした。
0
お気に入りに追加
419
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?
もふきゅな
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。
王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト
悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
二階堂まや
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫
梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。
それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。
飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!?
※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。
★他サイトからの転載てす★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる