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4.初顔合わせのお茶会
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今日はレオ様とご婚約相手の伯爵家のご令嬢との初顔合わせのお茶会です。皆様、ご準備に忙しくされていて、私もそのお手伝いをさせておりました。
準備をしているとレオ様は私に手を振ってくれたり、背伸びしてハンカチで汗を拭いたりして下さったのです
「エレン、汗を掻いているよ。拭いてあげるね」
「レオ様、ありがとうございます。ですが、次期ご当主が一メイドにお気遣い頂くのは……」
「僕の大事なエレンなんだから、一メイドなんかじゃないよ。エレンが頑張ってるから、僕も頑張れるんだ!」
「レオ様……」
幼いながらもとてもお優しい言葉にジーンと心が温まったのでした。
そこへ見慣れない出で立ちの方がいらっしゃり……
「あなた様がレオ様ですね。ヴィクトリアと申します。どうぞ、よろしくお願い致します」
赤い髪にキリッとした目鼻立ち……私が一生、着れないような美しい光沢を放つ赤のドレスを身に纏い、サッとレオ様の前で目を見張るような仕草でカテーシーをされました。
メイド長にお訊きしたところ、歳はレオ様より八つほど上だそうです。
「うん、よろしくね」
皆様がヴィクトリア様の仕草に見惚れる中、レオ様はどこ吹く風と言った具合でご挨拶が終わると私とのお話を再開してしまい、あまり彼女には関心がなさそうに感じてしまったのです……
そのとき、レオ様に向ける羨望の眼差しが私に視線を移した途端、鋭い目つきで睨み付けられているような胸騒ぎを覚えました。
そんな中、旦那様のご挨拶から始まり、お茶会が催されたのです。公爵様と伯爵様ご夫妻が相席され、ご歓談される中、私はレオ様とヴィクトリア様の座る席の給仕を任されたのですが……
「あなたのような下賤な者が淹れた紅茶など、不味くて喉を通りません。別の者に代わって頂けるかしら?」
「申し訳ございません。すぐに別の者に代わります」
「早く代わって、頂戴」
そのときでした。すっと席を立たれたレオ様はヴィクトリア様に平謝りする私達を差し置いて、彼女のカップに手を伸ばし……
「そっか、ヴィクトリアの口には合わなかったんだね。じゃあ、僕が飲んであげるよ」
「「えっ!?」」
これが大人だと許されないお行儀の悪いことなのかもしれませんが屈託のない笑顔で子供らしい無邪気さを発揮されておりました。
ごくごくと美味しそうに飲まれたあと……
「また、ヴィクトリアの好きな銘柄を教えてよ。次は用意しておくからさ」
「ありがとうございます、レオ様」
ヴィクトリア様はレオ様にお礼を言わざる得なかったのでしょう。彼のお気遣いに私はこれほど感謝したことがありません。
ヴィクトリア様のご機嫌もレオ様のお気遣いにより保たれ、お茶会がつつがなく終わりを迎えました。
旦那様と伯爵様夫妻がお屋敷の応接室で引き続き、お話を続けられておりましたが、私達にはまだ、片付けの仕事が残っておりました。
「あなた……ちょっと、いいかしら?」
「ヴィクトリア様!」
カップやソーサー、ティーポットを銀のトレーに乗せ、運んでいたときに呼び止められたのです。
「どういうつもりなの? メイド如きがレオ様にあんなことさせるなんて。恥を知りなさい」
「申し訳ございません……」
ヴィクトリア様はいずれレオ様の奥様になられるお方……私にとって、レオ様と同じくその言葉は重みのあるものなのです……
「まあ、いいわ。でも、覚えておいて頂戴。私とレオ様が結婚した暁にはあなたはすぐに解雇致します」
「そんな……」
「あら、メイドの分際で私に口答えする気? いい度胸だわ」
そのときでした。遠くから姿を見つけられたのか、レオ様が駆けていらっしゃいました。
「エレ~ン! 遅いと思ったら、ここに居たんだね。また、膝枕で本を読んでくれないかな?」
「レオ様ぁ~、そんなことでしたら、私が……」
ヴィクトリア様は先程までの私に向ける鋭い視線から頬が緩み、レオ様に甘えたような声で語り掛けられていたのです。
「ん~、エレンの方がいいんだけど……」
キッと私の方を見て、合図を送られます。私にレオ様にお伝えするようにと……
「レオ様……申し訳ございません。私は片付けのお仕事が残っておりますので次の機会にでも……」
「そっか……それは残念。でも、次を楽しみにしてるよ」
私に見せ付けるようにレオ様の手を引き、ヴィクトリア様はその場を立ち去られたのです。
唇をぐっと噛み締めて、これが本来の姿でレオ様とヴィクトリア様の仲が深まることが私の幸せだと自分に言い聞かせたのでした。
準備をしているとレオ様は私に手を振ってくれたり、背伸びしてハンカチで汗を拭いたりして下さったのです
「エレン、汗を掻いているよ。拭いてあげるね」
「レオ様、ありがとうございます。ですが、次期ご当主が一メイドにお気遣い頂くのは……」
「僕の大事なエレンなんだから、一メイドなんかじゃないよ。エレンが頑張ってるから、僕も頑張れるんだ!」
「レオ様……」
幼いながらもとてもお優しい言葉にジーンと心が温まったのでした。
そこへ見慣れない出で立ちの方がいらっしゃり……
「あなた様がレオ様ですね。ヴィクトリアと申します。どうぞ、よろしくお願い致します」
赤い髪にキリッとした目鼻立ち……私が一生、着れないような美しい光沢を放つ赤のドレスを身に纏い、サッとレオ様の前で目を見張るような仕草でカテーシーをされました。
メイド長にお訊きしたところ、歳はレオ様より八つほど上だそうです。
「うん、よろしくね」
皆様がヴィクトリア様の仕草に見惚れる中、レオ様はどこ吹く風と言った具合でご挨拶が終わると私とのお話を再開してしまい、あまり彼女には関心がなさそうに感じてしまったのです……
そのとき、レオ様に向ける羨望の眼差しが私に視線を移した途端、鋭い目つきで睨み付けられているような胸騒ぎを覚えました。
そんな中、旦那様のご挨拶から始まり、お茶会が催されたのです。公爵様と伯爵様ご夫妻が相席され、ご歓談される中、私はレオ様とヴィクトリア様の座る席の給仕を任されたのですが……
「あなたのような下賤な者が淹れた紅茶など、不味くて喉を通りません。別の者に代わって頂けるかしら?」
「申し訳ございません。すぐに別の者に代わります」
「早く代わって、頂戴」
そのときでした。すっと席を立たれたレオ様はヴィクトリア様に平謝りする私達を差し置いて、彼女のカップに手を伸ばし……
「そっか、ヴィクトリアの口には合わなかったんだね。じゃあ、僕が飲んであげるよ」
「「えっ!?」」
これが大人だと許されないお行儀の悪いことなのかもしれませんが屈託のない笑顔で子供らしい無邪気さを発揮されておりました。
ごくごくと美味しそうに飲まれたあと……
「また、ヴィクトリアの好きな銘柄を教えてよ。次は用意しておくからさ」
「ありがとうございます、レオ様」
ヴィクトリア様はレオ様にお礼を言わざる得なかったのでしょう。彼のお気遣いに私はこれほど感謝したことがありません。
ヴィクトリア様のご機嫌もレオ様のお気遣いにより保たれ、お茶会がつつがなく終わりを迎えました。
旦那様と伯爵様夫妻がお屋敷の応接室で引き続き、お話を続けられておりましたが、私達にはまだ、片付けの仕事が残っておりました。
「あなた……ちょっと、いいかしら?」
「ヴィクトリア様!」
カップやソーサー、ティーポットを銀のトレーに乗せ、運んでいたときに呼び止められたのです。
「どういうつもりなの? メイド如きがレオ様にあんなことさせるなんて。恥を知りなさい」
「申し訳ございません……」
ヴィクトリア様はいずれレオ様の奥様になられるお方……私にとって、レオ様と同じくその言葉は重みのあるものなのです……
「まあ、いいわ。でも、覚えておいて頂戴。私とレオ様が結婚した暁にはあなたはすぐに解雇致します」
「そんな……」
「あら、メイドの分際で私に口答えする気? いい度胸だわ」
そのときでした。遠くから姿を見つけられたのか、レオ様が駆けていらっしゃいました。
「エレ~ン! 遅いと思ったら、ここに居たんだね。また、膝枕で本を読んでくれないかな?」
「レオ様ぁ~、そんなことでしたら、私が……」
ヴィクトリア様は先程までの私に向ける鋭い視線から頬が緩み、レオ様に甘えたような声で語り掛けられていたのです。
「ん~、エレンの方がいいんだけど……」
キッと私の方を見て、合図を送られます。私にレオ様にお伝えするようにと……
「レオ様……申し訳ございません。私は片付けのお仕事が残っておりますので次の機会にでも……」
「そっか……それは残念。でも、次を楽しみにしてるよ」
私に見せ付けるようにレオ様の手を引き、ヴィクトリア様はその場を立ち去られたのです。
唇をぐっと噛み締めて、これが本来の姿でレオ様とヴィクトリア様の仲が深まることが私の幸せだと自分に言い聞かせたのでした。
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