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夏休み

2日目昼!

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 2日目の昼。昨日の夜はあれから、順のフルチン事件などが起こりかけたが2人の説得により事なきを得ていた。更に仁はここにきても勉強する明晰夢を見ることとなり、逆にこの漂流が現実のものだと、完全に受け入れたようだった。

「朝の陽ざしの強いうちは宿題を片付けよう」

 もともとは海の見える場所で1週間ほど過ごすなんていう計画を立てていたのだ。仁は口酸っぱく全員に宿題を持ってくるように言っており……遥と順はしっかりと宿題を持って来ていた。朝ごはんは昨日の残ったフルーツとお菓子で済ませてしばらくは勉強。昼、少しだけ太陽が傾き始めたら本格的に活動開始である。

「当分の目標は食料を安定して手に入れることだな……昨日のフルーツは食べても問題なかったから、それを中心に集めよう。あとはたんぱく質だな」
「それなら釣り道具とか銛とかもあったから素潜りでいけるかもしれないぜ」
「んじゃあ、俺は……」

 順が海、仁が森に行くのであれば、体力の少ない仁の方へとついていこうかなと遥は考えていた。

「遥は拠点の整備や道具の点検を頼みたい。道具を全部見れたわけではないと思うし、ぱっとみ使い方がわからなかったものがどういう道具なのかとかな」
「とって来たものを料理もしてほしいからゆっくりしてろよ。でけぇ魚とか取って来てやるから」
「お、おう、わかった。あ、でもキャンプ飯は順もできるんだろ、だったら明日は順が俺の役回りだからな」

 順と仁が続けざまにまくしたてる。自分だったら遥と2人きりになりたい。しかし、それは相手も考えていることだろう。であるならば、遥には拠点に残ってもらっていたほうがいい。そして、より多くの食料を早めに持って遥の元へ帰ることができればいいアピールになるはずだ。昨日の夜のうちに順と仁は全く同じ結論へとたどり着いていたのだ。

「よし、道具オッケー。いってくるぜ!」
「順は素潜りか……溺れたりしないように気を付けろよ」
「こっちも行ってくる。別のフルーツとかもあればとってこよう」
「仁なら心配いらないだろうけど、気を付けろよー」

 遥は2人を送り出す。ふと、主夫とはこういう感じで人を送り出すのだろうなぁ。と将来に思いをはせる。
 順は家を継ぐのだろうから、順のオヤジさんたちがつけているどんぶり、仁はサラリーマンだろうからスーツなのだろう。
 そこまで妄想して遥は2人と結婚生活をしている風景を思い浮かべてしまっていることに気が付いてしまい。

「うぉぉぉぉぉぉ!?」

 とりあえず、全力で手動ポンプを動かして冷たい井戸水頭が冷えるまで浴び続けた。

「うぉ……どうした、遥、頭べっしょべしょだぞ」
「おぉ……ちょっと、あれだ、熱中症対策だ」
「なるほど、あ、小物だけどとりあえず置いとくぜ。下準備とかあるだろうしよ」
「おぉ、なんの魚わからないけどうまそうだな。さすが順」
「そ、そうだろう! 任せとけ。次はもっとでかいの取ってくるからよ」

 先に戻ってきたのは順だったが、まだまだ潜るつもりらしく。一人前はありそうな魚を3匹ほど遥に手渡すと海へと戻っていく。新鮮でおいしそうだが、生で食べるにはちょっと怖い……ボリュームも出すために小麦粉を使ってつみれにすることにしようと遥はさっそく魚を下ろしていく。

「ただいま、なんだ、順はまだ戻ってなかったのか」
「おかえり、順は夜ごはん分をもってきてまた潜っていったぞ。次はでっかいのとるとかいってたな」

 続いて仁がフルーツを入れ物に入れて持って帰って来た。おかえりといわれて仁の表情は一瞬華やいだが、順がすでに来て食べ物を置いていったことを知ると難しそうな顔になる。

「僕ももう少し取ってくることにする」
「お、おう、気を付けろよ?? 無理するなよ? 休んでてもいいんだぞ?」
「無理はしてない」

 そういって仁は遥の前にとって来たフルーツを置いていく。小ぶりなものがひとり2つずつぐらい。
 仁は……動かなくて場所も知っているのに少ししかとってこれなかったということが悔しかった。順と比べると見劣りしてしまっているような気がしたのだ。

「ただいまー。お、仁も戻って来てたんだな」
「おう、また戻っていったけどな」
「なら、オレももうちょっとやってくるぜ」

 今度の魚も遥が見たこともない種類の大きな魚を順はとって来た。
 こうして、仁は数や質で負けていると思い森へ戻り、順は仁がいないと海に戻るを繰り返す。

「お、おい、もういいから! もういいから!!!」

 大量の海の幸、大量の森の幸でいっぱいになってきたところで遥が必死に止めることになるのだった。
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