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一学期
始業式の後
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あれよあれよという間に始業式が終わる。席順や仁の出席番号についてはそのままということになり、席替えまでは仲良し3人組が団子状態になることが決まった。
「よし、遥。カラオケいこうぜ! 駅前のカラオケのポテト無料券あってさ」
「おっ! それなら久しぶりに3人同じクラスになった記念って事で仁もくるだろ?」
「そうだな、今日は塾も休みだし……親に遅くなることを連絡しておく」
始業式は昼前には終わる。
学生の本分は勉強なのかもしれないが、学校が終わったのだから少しぐらい遊んでも罰は当たらないはずだと遥は思っていた。思っていたのに……
「も、も、も申し訳ございません、ただいま満室でして……」
「マジかぁぁ!」
「仕方ない、近場のカラオケ探すか」
「この辺だと僕の通っている塾の近くに同じ系列のカラオケがあったな」
同じことを考える学生は想像以上に多かったようで、すでに満室で3時間待ちだった。順はこの世の終わりでも来たかのように絶望感あふれる表情で嘆いており、可哀想にその迫力に店員が圧されてしまっている。
「ぴきゃっ!? もうしわけございません。しらべたら、ひとつへやがあいていました。すこしてぜまですが、それでもよければごあんないできます」
「マジで!? 3人だから多少狭くてもどうにかなるよな! よろしく!」
「……なんか、すごい声だしてなかったか?」
「それに手元も何も見ずに何を調べたと言うんだあの店員」
表情が明るくなった順とは対照的に仁と遥は表情が暗くなる。特に遥は頭を抱えてしまっている。とてもとても嫌な予感がしたのだ。そして、その嫌な予感は的中してしまう。
「うわぁ。本当に狭いなにこれ?」
「違法性を感じる狭さなんだが、ここ本当に大丈夫か?」
そこはネカフェの1人用ブース程度の広さの部屋だった。そんな小さなスペースにカラオケの装置と小さなテーブルなんかを置いただけで圧迫感がある。そこに椅子が2つ置かれると、何かに当たらないと身動きが取れないぐらいになる。
「とりあえず、腹減ったしポテトとドリバ頼むぜ。あとは……ピザと唐揚げとお菓子の盛り合わせと」
「おい、絶対乗らないぞ! このテーブルにそれだけの量は乗らないからな! あと僕らにもメニューをみせろ!」
「なせばなる!」
「まぁ、最悪膝に置こう……問題は椅子が2つって事だろう」
仁のツッコミのような説得も虚しく、順はそのまま注文を済ませてしまう。そして、そのままかず少ない椅子に腰掛ける。
どこまでも自分勝手なやつである。
「よし、遥、ここに来い!」
「絶対行かない! 別に仁でもいいだろ」
「僕を巻き込むな!」
順はそのまま膝をぽんぽんと叩いて遥に来るように促してくる。もともとからこういうことをするタイプではあったが、順が自分のことを好きであるという情報を得た遥にとっては色々と別の意味に見えてきてしまう。
「この中で遥がいちばん小さいし、遥なら膝に乗せても苦にならないぜ? オレ、鍛えてるし」
「いや、それならもう、椅子を隅にやって立って歌うとか。とにかく人に座るのはなしだ」
「楽な姿勢で歌いたくね?」
「それはそうだけど……あと、俺も小さいわけじゃないから。順が画面みれなくなるだろ」
順と遥が言い争っているうちに仁はいつの間にかドリンクバーに行っていたようで各人の好きな物を小さなテーブルの上に乗せていく。
「それで、どうなったんだ?」
「人の上に座らず」
「楽な姿勢で」
「カラオケの邪魔にならない」
「全員平等」
「わかった考えてみる」
順と遥が何か争うと第三者かつ頭のいい仁に意見を求めるというのも3人にとってはいつも通りの光景である。そして、今回頼りになる男、仁の出した答えは!
「失礼しますーご注文の商品を……ひっ」
「そこ置いといてー! よし、もういっちょいくぜ!」
「なぁ、仁さんや。『ひっ』と言われたんだが」
「この狭さであの条件を満たすならこれしかないだろ」
「秀才なのにばーか」
「バカと天才はかみひとえー!」
「遥に言われるのはまだ許せるが順だけは絶対に言われたくないんだが!!!」
テーブルや椅子を隅に寄せて、川の字で並んで寝ながらカラオケをするという方法だった。確かに楽な姿勢で、人の上に座らず、カラオケの邪魔にはなっていないし、全員平等ではある。しかし、遥はこうでは無い気がしてならなかった。
「よし、遥。カラオケいこうぜ! 駅前のカラオケのポテト無料券あってさ」
「おっ! それなら久しぶりに3人同じクラスになった記念って事で仁もくるだろ?」
「そうだな、今日は塾も休みだし……親に遅くなることを連絡しておく」
始業式は昼前には終わる。
学生の本分は勉強なのかもしれないが、学校が終わったのだから少しぐらい遊んでも罰は当たらないはずだと遥は思っていた。思っていたのに……
「も、も、も申し訳ございません、ただいま満室でして……」
「マジかぁぁ!」
「仕方ない、近場のカラオケ探すか」
「この辺だと僕の通っている塾の近くに同じ系列のカラオケがあったな」
同じことを考える学生は想像以上に多かったようで、すでに満室で3時間待ちだった。順はこの世の終わりでも来たかのように絶望感あふれる表情で嘆いており、可哀想にその迫力に店員が圧されてしまっている。
「ぴきゃっ!? もうしわけございません。しらべたら、ひとつへやがあいていました。すこしてぜまですが、それでもよければごあんないできます」
「マジで!? 3人だから多少狭くてもどうにかなるよな! よろしく!」
「……なんか、すごい声だしてなかったか?」
「それに手元も何も見ずに何を調べたと言うんだあの店員」
表情が明るくなった順とは対照的に仁と遥は表情が暗くなる。特に遥は頭を抱えてしまっている。とてもとても嫌な予感がしたのだ。そして、その嫌な予感は的中してしまう。
「うわぁ。本当に狭いなにこれ?」
「違法性を感じる狭さなんだが、ここ本当に大丈夫か?」
そこはネカフェの1人用ブース程度の広さの部屋だった。そんな小さなスペースにカラオケの装置と小さなテーブルなんかを置いただけで圧迫感がある。そこに椅子が2つ置かれると、何かに当たらないと身動きが取れないぐらいになる。
「とりあえず、腹減ったしポテトとドリバ頼むぜ。あとは……ピザと唐揚げとお菓子の盛り合わせと」
「おい、絶対乗らないぞ! このテーブルにそれだけの量は乗らないからな! あと僕らにもメニューをみせろ!」
「なせばなる!」
「まぁ、最悪膝に置こう……問題は椅子が2つって事だろう」
仁のツッコミのような説得も虚しく、順はそのまま注文を済ませてしまう。そして、そのままかず少ない椅子に腰掛ける。
どこまでも自分勝手なやつである。
「よし、遥、ここに来い!」
「絶対行かない! 別に仁でもいいだろ」
「僕を巻き込むな!」
順はそのまま膝をぽんぽんと叩いて遥に来るように促してくる。もともとからこういうことをするタイプではあったが、順が自分のことを好きであるという情報を得た遥にとっては色々と別の意味に見えてきてしまう。
「この中で遥がいちばん小さいし、遥なら膝に乗せても苦にならないぜ? オレ、鍛えてるし」
「いや、それならもう、椅子を隅にやって立って歌うとか。とにかく人に座るのはなしだ」
「楽な姿勢で歌いたくね?」
「それはそうだけど……あと、俺も小さいわけじゃないから。順が画面みれなくなるだろ」
順と遥が言い争っているうちに仁はいつの間にかドリンクバーに行っていたようで各人の好きな物を小さなテーブルの上に乗せていく。
「それで、どうなったんだ?」
「人の上に座らず」
「楽な姿勢で」
「カラオケの邪魔にならない」
「全員平等」
「わかった考えてみる」
順と遥が何か争うと第三者かつ頭のいい仁に意見を求めるというのも3人にとってはいつも通りの光景である。そして、今回頼りになる男、仁の出した答えは!
「失礼しますーご注文の商品を……ひっ」
「そこ置いといてー! よし、もういっちょいくぜ!」
「なぁ、仁さんや。『ひっ』と言われたんだが」
「この狭さであの条件を満たすならこれしかないだろ」
「秀才なのにばーか」
「バカと天才はかみひとえー!」
「遥に言われるのはまだ許せるが順だけは絶対に言われたくないんだが!!!」
テーブルや椅子を隅に寄せて、川の字で並んで寝ながらカラオケをするという方法だった。確かに楽な姿勢で、人の上に座らず、カラオケの邪魔にはなっていないし、全員平等ではある。しかし、遥はこうでは無い気がしてならなかった。
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