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月の砂漠のかぐや姫 第164話
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ザシィンッ! ドンッ、ゴロンゴロン・・・・・・。
騎馬隊の先頭に立って突入してきた冒頓に対して、サバクオオカミの奇岩の群れの中央を走ってきた一頭が飛び掛かりました。その奇岩は冒頓の正面から近づいてきていて、群れの中で彼に最も距離が近いものでした。つまり、冒頓の方からも「まず、こいつが飛び掛かってくるだろうな」と予想されていた一頭だったのです。そのような直線的な攻撃が冒頓に通じるはずがありませんでした。サバクオオカミの奇岩の頭は、冒頓の短剣の一撃で切り落とされ、地面に転がり落ちました。
冒頓は、頭の転がっていく先などは一向に気にせず、力をなくして馬にもたれかかってきた奇岩の胴を足で蹴り飛ばすと、さらに前に馬を進めました。
今度は、冒頓の馬を狙って、正面から飛び掛かってくる奇岩がありました。
冒頓は愛馬の手綱を力いっぱい引いて、前足を大きく上げるようにしました。興奮して振り回される馬の前足は、ちょうど襲い掛かってきたサバクオオカミの奇岩の頭の位置になりました。固い蹄を何度も叩きつけられた奇岩は、肩から上が粉々に砕けてしまいました。
「おら、おらぁっ」
冒頓は左右から自分に飛び掛かってくるサバクオオカミの奇岩には短剣で応戦しながらも、自分から攻撃は仕掛けずに、前へ前へと馬を進めました。冒頓がサバクオオカミの奇岩の群れを掻き分けてくれるおかげで、彼の後ろを走る騎馬隊の男は、自分たちの前と外側からの攻撃にだけ集中することができました。そして、後続の者たちも、自分から攻撃を仕掛けて隊形を崩すようなことはせず、自分に向かってこない敵は、さらに後ろに控える仲間に任すようにしていました。
槍の穂先の隊形をしっかりと維持した騎馬隊は、サバクオオカミの奇岩の攻撃を確実に退けながら、先ほどと同じように敵の群れをやすやすと分断していきました。騎馬隊が通った後には、少し前まではサバクオオカミの奇岩だった砂岩の断片が、幾つも幾つも転がっていました。そして、そこには、傷を負って倒れている騎馬隊の男は一人もおりませんでした。
やはり、隊形をしっかりと保ち、一か所に留まることなく奇岩の群れの中を駆け抜ければ、一人が複数の敵に囲まれて攻撃されることは防げるようでした。
ただし、こちらから攻撃を仕掛けないことから、一度の突撃で倒すことのできる敵の数は、それほど多くはありません。「敵の群れを突き破っては、反転して再度突撃をする」、これを何度も繰り返せば、味方の損害を最小限に抑えたままで、敵をせん滅することは可能だと思われますが、最大限の速度で駆けさせる馬にかかる負担は大きく、これを何度も何度も繰り返すことはできません。それに、未だに細かな振動を繰り返している地面に冒頓は不安を感じていましたから、馬がつぶれたり状況が悪化したりする前に、できるだけ早くの決着をつけようとしていたのでした。
サバクオオカミの奇岩の群れを突き破り反対側に出た冒頓は、馬上で頭を高く上げて、周囲を見回しました。
ポツンポツンと大きな砂岩の塊が、湖に浮かぶ小島のように、盆地の中に点在しています。そして、その盆地の地肌には、大きな裂け目が幾つも口を開けて、地上を走るものを呑み込もうと待ち構えています。冒頓の鋭い視線は、その奇怪な光景を通り抜けた先に、他の男では見分けられないようなほんの小さな大きさでしたが、サバクオオカミの奇岩の群れと、人の姿に似た形をした砂岩の像があるのを見分けました。
盆地の外周部で、幾つも幾つも存在する大きな岩や大地の裂け目を避けながら、サバクオオカミの奇岩と走りあっている間に、母を待つ少女の奇岩がいる中心部からは遠く離れたところに、彼らは来ていたのでした。
「よし、ちょうどいいなっ。悪いな、相棒、もう少し頑張ってくれよっ」
冒頓は、勢いよく上下する愛馬の首筋を軽く叩くと、その鼻先を盆地の中心部に向けました。そして、持っている全ての力を絞り出すようにと、激しく波打っているその腹を蹴って伝えました。これまでもサバクオオカミの奇岩との追走劇で走り通しだった冒頓の愛馬は、口の端から泡を飛ばしながらも、主人の指示に応えようとさらに足に力を籠めるのでした。
「お前らっ、敵の親玉を叩くぞっ。後ろから来るオオカミには構うなっ。母を待つ少女を砕くんだっ」
「おうっ!」
「よおしっ。了解ですっ」
サバクオオカミの奇岩の群れを突き抜けた騎馬隊は、先ほどとは違って反転をすることはせず、盆地の中心部に小さく見える母を待つ少女の像を目指して、さらに勢いを速めて馬を駆けさせました。
全ての力を振り絞って馬を走らせれば、先ほど断ち割ったサバクオオカミの奇岩の群れが後ろから追いかけてきたとしても、自分たちの方が速いのです。もちろん、馬がその速度で走り続けることはできませんが、冒頓は馬が疲れ切って足を止めてしまう前に、母を待つ少女の奇岩とそれを守るサバクオオカミの奇岩の元に辿り着いて、一撃の元にそれを破壊するつもりでした。
騎馬隊の先頭に立って突入してきた冒頓に対して、サバクオオカミの奇岩の群れの中央を走ってきた一頭が飛び掛かりました。その奇岩は冒頓の正面から近づいてきていて、群れの中で彼に最も距離が近いものでした。つまり、冒頓の方からも「まず、こいつが飛び掛かってくるだろうな」と予想されていた一頭だったのです。そのような直線的な攻撃が冒頓に通じるはずがありませんでした。サバクオオカミの奇岩の頭は、冒頓の短剣の一撃で切り落とされ、地面に転がり落ちました。
冒頓は、頭の転がっていく先などは一向に気にせず、力をなくして馬にもたれかかってきた奇岩の胴を足で蹴り飛ばすと、さらに前に馬を進めました。
今度は、冒頓の馬を狙って、正面から飛び掛かってくる奇岩がありました。
冒頓は愛馬の手綱を力いっぱい引いて、前足を大きく上げるようにしました。興奮して振り回される馬の前足は、ちょうど襲い掛かってきたサバクオオカミの奇岩の頭の位置になりました。固い蹄を何度も叩きつけられた奇岩は、肩から上が粉々に砕けてしまいました。
「おら、おらぁっ」
冒頓は左右から自分に飛び掛かってくるサバクオオカミの奇岩には短剣で応戦しながらも、自分から攻撃は仕掛けずに、前へ前へと馬を進めました。冒頓がサバクオオカミの奇岩の群れを掻き分けてくれるおかげで、彼の後ろを走る騎馬隊の男は、自分たちの前と外側からの攻撃にだけ集中することができました。そして、後続の者たちも、自分から攻撃を仕掛けて隊形を崩すようなことはせず、自分に向かってこない敵は、さらに後ろに控える仲間に任すようにしていました。
槍の穂先の隊形をしっかりと維持した騎馬隊は、サバクオオカミの奇岩の攻撃を確実に退けながら、先ほどと同じように敵の群れをやすやすと分断していきました。騎馬隊が通った後には、少し前まではサバクオオカミの奇岩だった砂岩の断片が、幾つも幾つも転がっていました。そして、そこには、傷を負って倒れている騎馬隊の男は一人もおりませんでした。
やはり、隊形をしっかりと保ち、一か所に留まることなく奇岩の群れの中を駆け抜ければ、一人が複数の敵に囲まれて攻撃されることは防げるようでした。
ただし、こちらから攻撃を仕掛けないことから、一度の突撃で倒すことのできる敵の数は、それほど多くはありません。「敵の群れを突き破っては、反転して再度突撃をする」、これを何度も繰り返せば、味方の損害を最小限に抑えたままで、敵をせん滅することは可能だと思われますが、最大限の速度で駆けさせる馬にかかる負担は大きく、これを何度も何度も繰り返すことはできません。それに、未だに細かな振動を繰り返している地面に冒頓は不安を感じていましたから、馬がつぶれたり状況が悪化したりする前に、できるだけ早くの決着をつけようとしていたのでした。
サバクオオカミの奇岩の群れを突き破り反対側に出た冒頓は、馬上で頭を高く上げて、周囲を見回しました。
ポツンポツンと大きな砂岩の塊が、湖に浮かぶ小島のように、盆地の中に点在しています。そして、その盆地の地肌には、大きな裂け目が幾つも口を開けて、地上を走るものを呑み込もうと待ち構えています。冒頓の鋭い視線は、その奇怪な光景を通り抜けた先に、他の男では見分けられないようなほんの小さな大きさでしたが、サバクオオカミの奇岩の群れと、人の姿に似た形をした砂岩の像があるのを見分けました。
盆地の外周部で、幾つも幾つも存在する大きな岩や大地の裂け目を避けながら、サバクオオカミの奇岩と走りあっている間に、母を待つ少女の奇岩がいる中心部からは遠く離れたところに、彼らは来ていたのでした。
「よし、ちょうどいいなっ。悪いな、相棒、もう少し頑張ってくれよっ」
冒頓は、勢いよく上下する愛馬の首筋を軽く叩くと、その鼻先を盆地の中心部に向けました。そして、持っている全ての力を絞り出すようにと、激しく波打っているその腹を蹴って伝えました。これまでもサバクオオカミの奇岩との追走劇で走り通しだった冒頓の愛馬は、口の端から泡を飛ばしながらも、主人の指示に応えようとさらに足に力を籠めるのでした。
「お前らっ、敵の親玉を叩くぞっ。後ろから来るオオカミには構うなっ。母を待つ少女を砕くんだっ」
「おうっ!」
「よおしっ。了解ですっ」
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全ての力を振り絞って馬を走らせれば、先ほど断ち割ったサバクオオカミの奇岩の群れが後ろから追いかけてきたとしても、自分たちの方が速いのです。もちろん、馬がその速度で走り続けることはできませんが、冒頓は馬が疲れ切って足を止めてしまう前に、母を待つ少女の奇岩とそれを守るサバクオオカミの奇岩の元に辿り着いて、一撃の元にそれを破壊するつもりでした。
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