ちょい悪オヤジの生態

今もモテてる

三枝勇人は３年後には定年を迎えるおじさんだ。しかし、肉食系ちょい悪オヤジを自認するほど女子が大好きだ。物凄く元気で、勇人自身毎日が楽しくて仕方ないのだ。

勇人は満員電車で通勤しているのだが、その通勤についても苦痛を一度も感じたことがない。

理由は明確だ。

至極の時間を迎えるのにそのくらいの代償は必要不可欠なものだと身も心も納得しているのだ。

傍）至極の時間？

勇人にとって会社は楽園みたいな素敵なお花畑なのだ。

勇人の勤めている会社は聞けば誰もが知っている大きな会社で社員数も多く女子の比率は50%を少しオーバーしている。

傍）女子社員が多いからか

勇人は得意技を幾つか持っている。

一つ目は、女子のデータに関しては全て瞬時に記憶できてしまう特殊能力を持っていること。

二つ目が、お肌ツルピカ作戦と勝手に命名した、女子をおとす時の必勝パターンをもっていること。

そして、最後が一番強力なのだが、他の人達が間違ってやってしまうと普通は大変なことになる、、、

、、、

、、、

そう、勘違い、だ。

、、、


勇人のデスクは窓際にあるのだが、彼自身は多忙を極めていた。処理しなければならない情報量が膨大で毎日残業が必要になるほどだった。


混み混みの電車を降り会社にインすると、真剣勝負は既にその時からはじまっているのだ。

女子とすれ違う度に
○○部所属、身長○○、体重○○くらい、彼氏多分いないetc

勇人基準で一定以上の女子にたいしては毎日それをやっている。

毎日やることが大事なのだ。

そう、子供の頃言われた反復学習だ。

傍）何それ笑笑

そして、時々回れ右をしてまるで競歩の選手？と思うような速さで女子を追い抜きにかかることがある。

そうだ、データ未入力対象だ。

回れ右の後、かなり余分に追い抜き、もう一度回れ右。

ここからがまた真剣勝負中の真剣勝負なのだ。

未入力対象の社員証、そう、ぶら下がっている社員証のID or 名前をすれ違う一瞬で読み取るのだ。

実際のところ、名前はかなり小さい字であるため、多くの場合はIDを記憶することになる。

そして、デスクに着くとそのIDから必要な情報を確認し、記憶する。

朝、昼、晩と長時間席を離れ自席に戻ると未確認のIDが記憶の箱から次々に出てくるのだ。

その処理に追われ、勇人は毎日忙しくて仕方ないのだ。

すれ違う瞬間に女子が笑顔を見せてしまうと、間違いなく勘違いが発動され

「やれやれ、まただよ」

傍）何が

「俺に会えて嬉しくて笑顔が隠せない女子がまた増えてしまってるな」

今のは、えーと、総務部庶務課の静香ちゃん、彼氏いない歴2年半。

うーん、今度食事にでも誘ってあげようかな。。。

傍）キモ、ってか仕事は？

今日もいそがしそうだな～

傍）どこが？