26 / 26
1-26 お話になってない
しおりを挟む
見事な空振りと言いたいところだが、へなちょこな空振りで、もう期待のしようがなかった。
80台後半?
寧ろ、なぜ?直ぐにウソと分かってしまうことを堂々と言えてしまうのか、そっちの方がみんな不思議だった。
まだコンペに参加せず言ってるだけならいいのだが、参加が決まった時は確か上機嫌だったはず。
精神が病んでるとしか言いようがない状態が目の前にあった。
勿論打ち直しだ。だが力む為に余計に当たらない。
矢部はある意味助かっていた。なぜなら、パンパンもシーちゃんも無茶苦茶優しい人柄だったからだ。
シーちゃんが文字通り優しく指導した。
「矢部さん、焦らずゆっくり振ってみましょう」
3回目にしてやっと当たった。いや、かすった。
毎ホール同じ状態で当然全く進歩しなかった。恐らく数年は練習してないに違いなかった。
どこに飛んでいくか分からない状態で、しかも、本人は悪びれるわけでもなく堂々とカートで移動し、転がったボールを確認に行く時は手ぶらで行き、またカートに戻り1本だけクラブを手にし、再びボールのところに向かう。
一番イライラしていたのは啓太だった。お世話係を依頼されたことで責任を感じていたのと、矢部の大嘘を信じきっていた自分への歯がゆさが同居し気持ちの居所が宙に浮いてる状態だった。
矢部が一度ボールのところに行き、イメージと違ったのかまたカートに戻り、またまた1本だけクラブを手に歩き出した姿を見た啓太はとうとうプッツンしてしまった。
「矢部さん、ゴルフ無理ですよ。プレイするのやめてください」
矢部の周囲にいた者にとっては散々な一日になってしまった。
そんなコンペの翌日、隣のビルで飲んでいた矢部が路上で大騒ぎをしていた。
そして、どうやら矢部自身が警察を呼んだようだ。
「この店で金を盗まれた、なんとかしろ」
パトカーで駆け付けた警官が降りてくるやいなや大声で怒鳴っていた。
いつものようにメモリーズでしっぽり飲んでいた大志と勝彦のところに若い衆が
「大志さん、なんとかしてください」
若い衆は矢部に言いがかりをつけられた店の店長だが、自分の手には負えないと分かり大志がいるメモリーズに助けを求めに来たのだった。
この時大志は心の中で、一番良いシチュエーションだ、と歓迎した。
大志と勝彦は警官と矢部の間に入り、
「矢部さん、何言ってるの?」
すると矢部は
「3日前には10万くらい財布に入ってたんだよ。こいつの店出たら数千円しか残ってない。盗まれたんだ」
大志と勝彦は顔を見合わせ少し笑ったあと大志が
「何いってるんだ、3日の間に飲んだりゴルフ行ったりしたんだろ。10万くらいなくなるだろ」
「うるせーよ、お前関係ねーだろ」
大志はやっと解き放たれた。警官の前で矢部の胸ぐらを掴み
「てめーいい加減にしろ、やってやろうか」
「タイちゃん、警察の目の前でそれは不味いよ」
勝彦が焦って止めに入った。もしも勝彦が止めなかったら確実に傷害の現行になっていたところだった。
「お前、今度この辺り歩いてるの見掛けたら直ぐに排除しに行くからな」
それ以来、この界隈で矢部の姿を見かけることは一度もなかった。
やられたことのある奴にしか分からない大志に対する強烈な恐怖心が矢部の中に植え付けられたに違いなかった。
80台後半?
寧ろ、なぜ?直ぐにウソと分かってしまうことを堂々と言えてしまうのか、そっちの方がみんな不思議だった。
まだコンペに参加せず言ってるだけならいいのだが、参加が決まった時は確か上機嫌だったはず。
精神が病んでるとしか言いようがない状態が目の前にあった。
勿論打ち直しだ。だが力む為に余計に当たらない。
矢部はある意味助かっていた。なぜなら、パンパンもシーちゃんも無茶苦茶優しい人柄だったからだ。
シーちゃんが文字通り優しく指導した。
「矢部さん、焦らずゆっくり振ってみましょう」
3回目にしてやっと当たった。いや、かすった。
毎ホール同じ状態で当然全く進歩しなかった。恐らく数年は練習してないに違いなかった。
どこに飛んでいくか分からない状態で、しかも、本人は悪びれるわけでもなく堂々とカートで移動し、転がったボールを確認に行く時は手ぶらで行き、またカートに戻り1本だけクラブを手にし、再びボールのところに向かう。
一番イライラしていたのは啓太だった。お世話係を依頼されたことで責任を感じていたのと、矢部の大嘘を信じきっていた自分への歯がゆさが同居し気持ちの居所が宙に浮いてる状態だった。
矢部が一度ボールのところに行き、イメージと違ったのかまたカートに戻り、またまた1本だけクラブを手に歩き出した姿を見た啓太はとうとうプッツンしてしまった。
「矢部さん、ゴルフ無理ですよ。プレイするのやめてください」
矢部の周囲にいた者にとっては散々な一日になってしまった。
そんなコンペの翌日、隣のビルで飲んでいた矢部が路上で大騒ぎをしていた。
そして、どうやら矢部自身が警察を呼んだようだ。
「この店で金を盗まれた、なんとかしろ」
パトカーで駆け付けた警官が降りてくるやいなや大声で怒鳴っていた。
いつものようにメモリーズでしっぽり飲んでいた大志と勝彦のところに若い衆が
「大志さん、なんとかしてください」
若い衆は矢部に言いがかりをつけられた店の店長だが、自分の手には負えないと分かり大志がいるメモリーズに助けを求めに来たのだった。
この時大志は心の中で、一番良いシチュエーションだ、と歓迎した。
大志と勝彦は警官と矢部の間に入り、
「矢部さん、何言ってるの?」
すると矢部は
「3日前には10万くらい財布に入ってたんだよ。こいつの店出たら数千円しか残ってない。盗まれたんだ」
大志と勝彦は顔を見合わせ少し笑ったあと大志が
「何いってるんだ、3日の間に飲んだりゴルフ行ったりしたんだろ。10万くらいなくなるだろ」
「うるせーよ、お前関係ねーだろ」
大志はやっと解き放たれた。警官の前で矢部の胸ぐらを掴み
「てめーいい加減にしろ、やってやろうか」
「タイちゃん、警察の目の前でそれは不味いよ」
勝彦が焦って止めに入った。もしも勝彦が止めなかったら確実に傷害の現行になっていたところだった。
「お前、今度この辺り歩いてるの見掛けたら直ぐに排除しに行くからな」
それ以来、この界隈で矢部の姿を見かけることは一度もなかった。
やられたことのある奴にしか分からない大志に対する強烈な恐怖心が矢部の中に植え付けられたに違いなかった。
10
お気に入りに追加
6
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
続きが待ちきれない^ ^
頑張れー
応援してます