その男、繊細につき

1-21 前夜祭

季節は秋口、ゴルフには最高の気候の中、第５回メモリーズ杯ゴルフコンペは次の土曜日に決まった。



参加者は皆このメモリーズのコミュニティで出会い親睦を深めてきた仲間だ。

ゴルフの腕前も回数を重ねる度に上達し、参加者全体のレベルは相当にいい感じなってきていた。



中でも悠一と同じで真面目気質のパンパンは練習のムシで短期間で相当なレベルに駆け上った一人だ。



そのパインのライバルともいえる存在が通称シーちゃんと呼ばれる実業家のイケメンおやじだ。二人はともに意識し合いながらレベルを上げていくといった理想的な関係を築いていた。



一方、もう一人の真面目気質で練習熱心な男、悠一は、一定のレベルには到達しているもののライバル視する相手が悪く頭打ちの状態が続いていた。ライバル関係のお相手は達治だ。



勝彦は実は、、、自分とゴルフ道具が大好きな陽気なおじさんなのだ。



陽気という共通点で悠一と強い絆が形成されているような？？？いないような？？？二人はウンチクを始めると永遠に終わることなく朝を迎えることがしばしばあった。



ヒデちゃんは残念、トラウマのせいでゴルフは大嫌い。

啓太は秀雄のゴルフ嫌いを、優良企業の役員なのにゴルフが嫌いで通るのだから相当仕事ができるはず、といつも羨ましいとこぼしていた。


その啓太はゴルフは大好きなのだが腕前が腕後のようで何ともならないのであった。啓太はたまに酔っ払うと

「知ってる？そう、大志さんが大遅刻したにも拘らずチャンピオンになった第一回のコンペの時、ゆうちゃんとシーちゃんと同じ組だったの」


誰も聞いてないけど、、、



「ゆうちゃんもシーちゃんも俺より下手でさぁ、俺あの時、二人に、、、直ぐに上手くなるから心配しなくていいからね、って、、、」


「俺が上手くなれよ、、、」


誰もツッコミ入れてくれないし、、、



そんな楽しい面々？？？に今回は矢部が加わるのだ。



前夜祭はいつものことで、次の日のコンペを肴に飲むのが楽しみの一つだった。

この日は先の有力メンバーが勢揃いし、そこに矢部も違和感を纏いながら参加していた。



「矢部さん、明日楽しみですよ。マイクロバスですよね！」

「そんな、申し訳ないから主催者である私は皆さんに配車お願いしたのよ」

啓太のKYな言葉を雫ママは綺麗に救ってみせた。


ばつが悪く矢部はここでトイレへエスケープ。


「でも楽しみですね。だって矢部さん８０台なんですよ？」

隣のテーブルでそれを聞いていた大志、達治、悠一は飲んでいた液体をこぼしながら

大笑いし

「ケイちゃん、やっぱりおかしいわ」

「え、、、なんで？？？」



悠一が

「明日になれば分かるよ」



悠一も見抜いていたようだ。矢部のハッタリを。

雫ママは啓太に

「明日、矢部さんのこと宜しく頼むわよ」

啓太は？？？の状態のまま、よく分からない空気になっていた。



大志はイヤな予感しかしない。

明日かぁ、、、行きたくねーなぁ。