その男、繊細につき

慶之助

文字の大きさ
上 下
10 / 26

1-10 初老のヤベー奴

しおりを挟む
チリリーン



「いらっしゃいませ」

「ママー、また来ちゃった」

初老の男性がホロ酔いで入ってきた。



大志、勝彦、悠一は皆顔を見合わせて、同時に首を横に振った。



知らない客だった。



「そっか、初めてか、、、。最近ちょくちょく来てくださるお客様です」



そう言いながら、雫ママが席を立ち

「挨拶してきますね」 



と、初老の男性が陣取ったカウンター席の方へ向かった。カウンター越しにおしぼりを広げながら



「ご来店、ありがとうございます。何にしますか?」



「イヤだなぁー、ママ、何にしますか?って

ママに決まってるじゃない」と、おしぼりを広げる雫ママの手を握った。



勝彦と悠一はカウンターに背を向けていた為に視界に入らなかったが、大志の目にはハッキリ見えていた。



「ブチっ」



キレた音が雫ママには聞こえた。



「またぁー、矢部さん、酔っ払ってますね」



やべ?



大志は反応した。

何か引っ掛かったが、ムカつき過ぎてその興奮の方が先だった。



幸い、雫ママが直ぐにかわした為、大志も大人しくすることにしたが、



「タイちゃん、どうしたの?」

「あーはっはっは、雫ママがいなくなっちゃったから寂しんだ、あーはっは」

「そんなことないよぉ。まぁ、歌いますか」



「遥ちゃん、デュエット出来る?」

大志は雫ママが気を遣わないようにとメッセージを込めて少し大きめの声で誘った。



雫ママは、大人だなぁ、とその配慮を感じながらカウンターの中にいたのだった。



大志と遥は楽しく歌っていた、、、

が大志の視線は5秒毎にカウンターの

2人に向かっていた。



「ママぁー、俺たちもデュエットしよーかー、ねぇ!」



「いいですよ!何にしましょう?」



「いつものアレ」



大志、勝彦は顔を見合わせて同時に

「いつものアレぇーーだとぉーー」



雫ママは聞こえてはいたが特に反応せず

「あぁー、今夜は離さない、かな?」

「そぅ、本当に今夜は離さない」



「なーにぃー」

大志と勝彦は同時にハモりながらカウンターを睨んだ。



カウンターで背中を向けて座っている矢部の向こう側で雫ママは笑顔で2人に

「頑張って歌うわぁ」



と、手を振ってみせた。



「なぁーにぃー、、、ハァー」

「カッちゃん、飲もう」

「タイちゃん、そうしよう、飲もう」

「あーはっはっはぁー」



メモリーズの夜は更けていく。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...