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本編
73.「セバ、どうだっタ?」
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「にしても女王様、リザリス様だっけ?要注意だよね」
「うん。どう見てもフィルを狙ってたよ」
「可愛い人だったけど、咲夜には負けるのにねー」
「え、いやいや。可愛さは彼女の方が上だよ」
「サクヤの方が美人だもんな」
誂えたようにリザリスの私室の隣に案内された4人。それぞれに個室が与えられたが、今はリビングのようなところに集まっている。
今咲夜とゆあが話しているリザリスは、2人の言う通り可愛いタイプだ。ミルク色のふわふわの髪とピュアピンクの瞳、同色のドレス。もちろんその頭には三毛猫の耳が。
「フィル、絶対なびいちゃダメだよ?」
「分かってる」
そう答えつつ咲夜に甘えるフィル。不死鳥の一件以来咲夜はどうも常識のタガが外れたらしく、いつでもどこでもフィルとイチャつくようになった。
それがたまらないのがゆあと一。初めの方こそいちいち弄っていたゆあも、途中から一に習って傍観を決め込んだほど。
と、なんとも言えない空気感の室内にノックの音が響いた。
「失礼します。第一王女リザリス様より紅茶をお出しするよう申し使っております。いかがでしょうか?」
「……あ、じゃあ貰います」
少し迷った末に咲夜がそう答えると、すぐに使用人が入ってくる。5分ほどでお茶の準備を整えると、使用人は一礼して去っていった。
「なんのお茶だろ?不思議な……甘い香り」
「んー、ゆあ紅茶好きじゃないからいらないや」
「じゃあスコーンも無しだぞ」
「えっそれは困る!」
机に置いた自分のカップを慌てて手元に戻し、恐る恐るカップの縁に口をつけるゆあ。紅茶が嫌いだろうと何だろうと、スコーンは食べたいらしい。
しかし、ゆあが紅茶を口に含む直前。
「それ、飲んじゃだメ!」
という叫び声とともに窓ガラスがガシャン!と盛大な音を立てて割れた。それと同時に部屋に侵入してくる人の影が2つ。
「……え?」
侵入者は、突然のことに驚く3人とフィルの手から瞬く間に紅茶のカップを奪い取る。入ってきた2人から敵意を感じなかったフィルはその様子を眺めるだけ。
「え、あの、それ私たちの……」
「だから、飲んじゃだめなノ!セバ、早くしちゃっテ」
「畏まりました」
咲夜にキツく言ったのは侵入者のうち、小柄で中性的な顔立ちの人。その人の言葉に応じ、どこからともなく謎の液体を取り出して紅茶に垂らすのは、執事のような人。
「あのぅ……?」
「ちょっと待っテ」
何が起きているか理解できない咲夜が再び声をかけるも、かえってくるのは素っ気ない返事。その人が食い入るように見ているカップの中を覗けば、紅茶の色が毒々しいものへと変化する所だった。
「セバ、どうだっタ?」
「ゆあさんと一さんは一時的な麻痺、神川さんは致死量の毒薬、リュカさんは惚れ薬……と言った所でしょうか」
「それじゃあ、やっぱりジョーカ……ルークの言った通りってことカ」
「そうですね」
そんなやり取りを聞いてさらに混乱する咲夜達。セバと呼ばれた執事姿の男が、指でなぞるようにして割れた窓ガラスを修復するのをぼうっと眺めている。
「あーっと、悪いが説明してくれるか?」
「ン?説明っていう説明する程じゃないんだけどネ」
「ただ神川さんが毒で亡くなり、リュカさんを骨抜きなり、お二人は……そうですね、奴隷としてこき使われる未来が待っていたかもしれないというだけです」
たんたんと告げられたが、その内容は決して軽んじていいものではない。咲夜達がそのことに気づき、理解するまで約60秒かかってしまったのだった。
「うん。どう見てもフィルを狙ってたよ」
「可愛い人だったけど、咲夜には負けるのにねー」
「え、いやいや。可愛さは彼女の方が上だよ」
「サクヤの方が美人だもんな」
誂えたようにリザリスの私室の隣に案内された4人。それぞれに個室が与えられたが、今はリビングのようなところに集まっている。
今咲夜とゆあが話しているリザリスは、2人の言う通り可愛いタイプだ。ミルク色のふわふわの髪とピュアピンクの瞳、同色のドレス。もちろんその頭には三毛猫の耳が。
「フィル、絶対なびいちゃダメだよ?」
「分かってる」
そう答えつつ咲夜に甘えるフィル。不死鳥の一件以来咲夜はどうも常識のタガが外れたらしく、いつでもどこでもフィルとイチャつくようになった。
それがたまらないのがゆあと一。初めの方こそいちいち弄っていたゆあも、途中から一に習って傍観を決め込んだほど。
と、なんとも言えない空気感の室内にノックの音が響いた。
「失礼します。第一王女リザリス様より紅茶をお出しするよう申し使っております。いかがでしょうか?」
「……あ、じゃあ貰います」
少し迷った末に咲夜がそう答えると、すぐに使用人が入ってくる。5分ほどでお茶の準備を整えると、使用人は一礼して去っていった。
「なんのお茶だろ?不思議な……甘い香り」
「んー、ゆあ紅茶好きじゃないからいらないや」
「じゃあスコーンも無しだぞ」
「えっそれは困る!」
机に置いた自分のカップを慌てて手元に戻し、恐る恐るカップの縁に口をつけるゆあ。紅茶が嫌いだろうと何だろうと、スコーンは食べたいらしい。
しかし、ゆあが紅茶を口に含む直前。
「それ、飲んじゃだメ!」
という叫び声とともに窓ガラスがガシャン!と盛大な音を立てて割れた。それと同時に部屋に侵入してくる人の影が2つ。
「……え?」
侵入者は、突然のことに驚く3人とフィルの手から瞬く間に紅茶のカップを奪い取る。入ってきた2人から敵意を感じなかったフィルはその様子を眺めるだけ。
「え、あの、それ私たちの……」
「だから、飲んじゃだめなノ!セバ、早くしちゃっテ」
「畏まりました」
咲夜にキツく言ったのは侵入者のうち、小柄で中性的な顔立ちの人。その人の言葉に応じ、どこからともなく謎の液体を取り出して紅茶に垂らすのは、執事のような人。
「あのぅ……?」
「ちょっと待っテ」
何が起きているか理解できない咲夜が再び声をかけるも、かえってくるのは素っ気ない返事。その人が食い入るように見ているカップの中を覗けば、紅茶の色が毒々しいものへと変化する所だった。
「セバ、どうだっタ?」
「ゆあさんと一さんは一時的な麻痺、神川さんは致死量の毒薬、リュカさんは惚れ薬……と言った所でしょうか」
「それじゃあ、やっぱりジョーカ……ルークの言った通りってことカ」
「そうですね」
そんなやり取りを聞いてさらに混乱する咲夜達。セバと呼ばれた執事姿の男が、指でなぞるようにして割れた窓ガラスを修復するのをぼうっと眺めている。
「あーっと、悪いが説明してくれるか?」
「ン?説明っていう説明する程じゃないんだけどネ」
「ただ神川さんが毒で亡くなり、リュカさんを骨抜きなり、お二人は……そうですね、奴隷としてこき使われる未来が待っていたかもしれないというだけです」
たんたんと告げられたが、その内容は決して軽んじていいものではない。咲夜達がそのことに気づき、理解するまで約60秒かかってしまったのだった。
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