71 / 79
本編
68.「えっとね、私たちを助けてくれた人だよ」
しおりを挟む
「……っ、おねぇちゃん!」
そう叫んだゆあは走る勢いそのままに咲夜に抱きついた。
「「……っ、おねぇちゃん、だと!?」」
死んだかと思われた咲夜と、ゆあの感動の再会。それに水をさしたのがフィルと一だ。
よしよし、と手馴れた様子でゆあを宥める咲夜が苦笑しているのは、2人の反応に対してだ。言う必要を感じなかったので黙っていたことが、こうも2人を驚かすと思っていなかったのだ。
「え、ゆあは朔夏で、咲夜は神川だよな?」
と、一。
「性格も、外見も全く違って、別々の家に住んでたのに?」
と、フィル。
それぞれの質問に答えたのは昨夜にしなだれかかり、満足そうな表情のゆあと変わらず苦笑している咲夜。
「ゆあとさくねぇはホントの姉妹じゃないもん」
「元々従姉妹なんだけど、両親を亡くした後私があの家を出たくなくてね」
「それなら別々に暮らそって話になったんだよ。もっとも、ゆあはほとんどさくねぇの家にいたけどね」
「ほら、呼び方戻ってる」
コツンと頭を小突かれ、誤魔化すように笑うゆあ。そのやり取りはいままでと同じように見えて、距離感が微妙に異なっていた。
「でも2人は同い年だろ?」
「そーだよ、丸くん。でもゆあは12月1日生まれで、咲夜は9月7日生まれだもん」
「それにゆあって妹キャラじゃない?」
「「……確かに」」
なんでそこでハモるかな、とちょっと不服そうなゆあ。とあることをきっかけに呼び方がさくねぇから咲夜に変わっいたのだが、やはりこういう緊急事態には小さい頃からの呼び方が出てしまうのだろう。
とのんびり雑談を始めた咲夜の頭上で、ピィという鳴き声が聞こえた。そしてひょっこりと顔を出したのは、もう目が開いた不死鳥の雛。
「……あ、この子に名前つけてあげないと」
「その子は?」
「あそこにいた不死鳥だよ。フィルが倒して、雛になったから連れてきたの」
「へー、それなら名前はフォークスだね」
不死鳥を指でつついて遊びながらサラリと名付けたゆあ。不死鳥……フォークスのほうも不満はないらしく、一声鳴いて翼をぱたぱたさせて喜びを表現している。
「ちなみにずっと放置されているオレはどうすればいい?」
和気あいあいとした様子の4人と1匹に、自分から言い出さないと一生忘れられたままだと気づいたシェルが声を挟む。
「んん?咲夜、この人は?」
「シェル ラミランデだ」
「えっとね、私たちを助けてくれた人だよ」
「俺らと同じくスズランに巻き込まれたらしい」
「ふむふむ、お互い大変だね。でも咲夜とリュカを助けてくれてありがとう。……スズランにも感謝しないと、なのかなぁ」
シェルに対しては素直に礼を言ったのに、スズランに対してはどこか言いにくいらしい。もちろん、あの強引さが原因である。
「オレもまぁ裏で手伝うからな、この騒ぎもさっさと終わらせようぜ」
「おー!」
初めてのダンジョン探索では死にかけはしたものの無事生還。とても心強い味方が1人と1匹加わったのだった。
そう叫んだゆあは走る勢いそのままに咲夜に抱きついた。
「「……っ、おねぇちゃん、だと!?」」
死んだかと思われた咲夜と、ゆあの感動の再会。それに水をさしたのがフィルと一だ。
よしよし、と手馴れた様子でゆあを宥める咲夜が苦笑しているのは、2人の反応に対してだ。言う必要を感じなかったので黙っていたことが、こうも2人を驚かすと思っていなかったのだ。
「え、ゆあは朔夏で、咲夜は神川だよな?」
と、一。
「性格も、外見も全く違って、別々の家に住んでたのに?」
と、フィル。
それぞれの質問に答えたのは昨夜にしなだれかかり、満足そうな表情のゆあと変わらず苦笑している咲夜。
「ゆあとさくねぇはホントの姉妹じゃないもん」
「元々従姉妹なんだけど、両親を亡くした後私があの家を出たくなくてね」
「それなら別々に暮らそって話になったんだよ。もっとも、ゆあはほとんどさくねぇの家にいたけどね」
「ほら、呼び方戻ってる」
コツンと頭を小突かれ、誤魔化すように笑うゆあ。そのやり取りはいままでと同じように見えて、距離感が微妙に異なっていた。
「でも2人は同い年だろ?」
「そーだよ、丸くん。でもゆあは12月1日生まれで、咲夜は9月7日生まれだもん」
「それにゆあって妹キャラじゃない?」
「「……確かに」」
なんでそこでハモるかな、とちょっと不服そうなゆあ。とあることをきっかけに呼び方がさくねぇから咲夜に変わっいたのだが、やはりこういう緊急事態には小さい頃からの呼び方が出てしまうのだろう。
とのんびり雑談を始めた咲夜の頭上で、ピィという鳴き声が聞こえた。そしてひょっこりと顔を出したのは、もう目が開いた不死鳥の雛。
「……あ、この子に名前つけてあげないと」
「その子は?」
「あそこにいた不死鳥だよ。フィルが倒して、雛になったから連れてきたの」
「へー、それなら名前はフォークスだね」
不死鳥を指でつついて遊びながらサラリと名付けたゆあ。不死鳥……フォークスのほうも不満はないらしく、一声鳴いて翼をぱたぱたさせて喜びを表現している。
「ちなみにずっと放置されているオレはどうすればいい?」
和気あいあいとした様子の4人と1匹に、自分から言い出さないと一生忘れられたままだと気づいたシェルが声を挟む。
「んん?咲夜、この人は?」
「シェル ラミランデだ」
「えっとね、私たちを助けてくれた人だよ」
「俺らと同じくスズランに巻き込まれたらしい」
「ふむふむ、お互い大変だね。でも咲夜とリュカを助けてくれてありがとう。……スズランにも感謝しないと、なのかなぁ」
シェルに対しては素直に礼を言ったのに、スズランに対してはどこか言いにくいらしい。もちろん、あの強引さが原因である。
「オレもまぁ裏で手伝うからな、この騒ぎもさっさと終わらせようぜ」
「おー!」
初めてのダンジョン探索では死にかけはしたものの無事生還。とても心強い味方が1人と1匹加わったのだった。
0
お気に入りに追加
210
あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
素材採取家の異世界旅行記
木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。
可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。
個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。
このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。
この度アルファポリスより書籍化致しました。
書籍化部分はレンタルしております。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる