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本編
67.「レ ゼロ アプソリュ」
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迫り来る炎の熱を感じながら、フィルが咲夜を庇うように抱え込む。咲夜もまた、フィルにしがみつく。
しかしすぐに少し体を離し、背伸びをして自らフィルにそっとキスをした。それからもう一度フィルにしがみつく。
そんな2人を、炎が包み込むその瞬間。
「レ ゼロ アプソリュ」
そんな女性の声が不意に響いた。そして熱が冷気へと変わり、2人に迫っていた炎がその姿を保ったままで凍りつく。
「な、に……?」
「たすかっ、たのか」
ずっと詰めていた息を吐き、緊張の糸がプツリと途切れて思わずへたり込む2人。そんな2人のもとへ、自身が凍らせた炎の上を歩いて近づく女性が1人。
「……はぁ、お前らが竜王とその番だな?」
「あ、あぁ」
「あなたは……?」
「オレはシェル、シェル ラミランデ。全く、間に合ってよかった」
ほら立て、と2人に手を差し伸べるシェル。
ショートにばっさりと切られた黒髪から覗く猫耳と、ゆらりと揺れるしっぽ。瞳の青はフィルよりも濃いコバルトブルー。さらに目につくのが女性として完璧なスタイルと、一本の大剣。
「いきなり大魔法使わせやがって。今から炎は消してやる、本体をさっさと攻撃しろよ?」
「わ、わかった」
「いくぞ?3、2、1……」
カシャン……と儚い音がして、一際強く輝いていた部分を残して炎が氷と共に消え去る。その瞬間に飛び出したフィルと、炎から鳥へ戻りふらりとよろめいた不死鳥。
「お、らぁっ!」
不死鳥の前で跳び、刀を抜きざまに切りつける。もちろん気づいていた不死鳥の方も避けるべく横に飛ぶが、間に合わなかった。
大技を強制キャンセルされた反動と、眷属である炎の小鳥に頼りすぎていたのだ。そうして判断を一瞬ミスしてしまった。
「お、のれぇ!」
根元からフィルの鬼のように切れ味がいい刀に切られ、ボトリと地に落ちた右翼。バランスを失いグラリと傾いた不死鳥の体を、フィルが容赦なく切り伏せた。
「あ……あぁ……」
胸に深手を負い、右翼を失った不死鳥はそのまま地に落ちる。そして3人が見守る中、体の端から真紅の炎に包まれていく。時折散る火花は黄金に輝いていた。
やがてその身に宿す色と同じ色の炎に包まれ、燃え尽きた不死鳥。その後に残ったのはひと握りの灰のみであった。
「不死鳥って言う割には死ぬんだな」
「お前、竜王なのに知らないのか?」
「不死鳥は、燃えた灰中からまた生まれるんだよ」
そう言いつつ灰をちょいちょいとつついた咲夜。それによって灰が崩れ、そこにいたまだ目も開いていない雛鳥が姿を現した。
「この子、連れて行ってもいいかな?」
「俺らを殺そうとしたし、こいつ仮にもダンジョンのボスだぞ?」
「幻の、でしょ。それにこんな暗い所に一生居るなんて可哀想だよ」
もう雛を手に乗せて指先で愛でている咲夜に、フィルがそれ以上異論を唱えることなどできない。何があっても知らねぇぞ、とだけ言って転移魔法陣を描き始める。
「シェルさん、助けていただいてありがとうございました」
「シェルでいい。オレもお前らもスズランに振り回されてるっていう所で同胞だからな」
「そう、ですね。あ、咲夜でいいですよ」
「あぁ」
思わず苦笑してしまった2人がしばらく雑談をしていると、フィルから魔法陣が完成したと声がかかる。早く行かないとゆあと一が心配するから、と急いで魔法陣に飛び込んだ咲夜達であった。
しかしすぐに少し体を離し、背伸びをして自らフィルにそっとキスをした。それからもう一度フィルにしがみつく。
そんな2人を、炎が包み込むその瞬間。
「レ ゼロ アプソリュ」
そんな女性の声が不意に響いた。そして熱が冷気へと変わり、2人に迫っていた炎がその姿を保ったままで凍りつく。
「な、に……?」
「たすかっ、たのか」
ずっと詰めていた息を吐き、緊張の糸がプツリと途切れて思わずへたり込む2人。そんな2人のもとへ、自身が凍らせた炎の上を歩いて近づく女性が1人。
「……はぁ、お前らが竜王とその番だな?」
「あ、あぁ」
「あなたは……?」
「オレはシェル、シェル ラミランデ。全く、間に合ってよかった」
ほら立て、と2人に手を差し伸べるシェル。
ショートにばっさりと切られた黒髪から覗く猫耳と、ゆらりと揺れるしっぽ。瞳の青はフィルよりも濃いコバルトブルー。さらに目につくのが女性として完璧なスタイルと、一本の大剣。
「いきなり大魔法使わせやがって。今から炎は消してやる、本体をさっさと攻撃しろよ?」
「わ、わかった」
「いくぞ?3、2、1……」
カシャン……と儚い音がして、一際強く輝いていた部分を残して炎が氷と共に消え去る。その瞬間に飛び出したフィルと、炎から鳥へ戻りふらりとよろめいた不死鳥。
「お、らぁっ!」
不死鳥の前で跳び、刀を抜きざまに切りつける。もちろん気づいていた不死鳥の方も避けるべく横に飛ぶが、間に合わなかった。
大技を強制キャンセルされた反動と、眷属である炎の小鳥に頼りすぎていたのだ。そうして判断を一瞬ミスしてしまった。
「お、のれぇ!」
根元からフィルの鬼のように切れ味がいい刀に切られ、ボトリと地に落ちた右翼。バランスを失いグラリと傾いた不死鳥の体を、フィルが容赦なく切り伏せた。
「あ……あぁ……」
胸に深手を負い、右翼を失った不死鳥はそのまま地に落ちる。そして3人が見守る中、体の端から真紅の炎に包まれていく。時折散る火花は黄金に輝いていた。
やがてその身に宿す色と同じ色の炎に包まれ、燃え尽きた不死鳥。その後に残ったのはひと握りの灰のみであった。
「不死鳥って言う割には死ぬんだな」
「お前、竜王なのに知らないのか?」
「不死鳥は、燃えた灰中からまた生まれるんだよ」
そう言いつつ灰をちょいちょいとつついた咲夜。それによって灰が崩れ、そこにいたまだ目も開いていない雛鳥が姿を現した。
「この子、連れて行ってもいいかな?」
「俺らを殺そうとしたし、こいつ仮にもダンジョンのボスだぞ?」
「幻の、でしょ。それにこんな暗い所に一生居るなんて可哀想だよ」
もう雛を手に乗せて指先で愛でている咲夜に、フィルがそれ以上異論を唱えることなどできない。何があっても知らねぇぞ、とだけ言って転移魔法陣を描き始める。
「シェルさん、助けていただいてありがとうございました」
「シェルでいい。オレもお前らもスズランに振り回されてるっていう所で同胞だからな」
「そう、ですね。あ、咲夜でいいですよ」
「あぁ」
思わず苦笑してしまった2人がしばらく雑談をしていると、フィルから魔法陣が完成したと声がかかる。早く行かないとゆあと一が心配するから、と急いで魔法陣に飛び込んだ咲夜達であった。
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