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本編
66.「今ゆあが泣いて喚いた所で何も変わらないだろ?」
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視点:ゆあ
暑くて、初めて死を間近に感じて怖くて、緊張して軽くパニックになってしまって。絶対に失敗してはいけないのに、石を、取り落としてしまった。
そこで、死ぬんだと思ったのに。なのに。それなのに、咲夜が、自分の分をくれて。ゆあの代わりに、あの炎に……。
「もどらなくちゃ……戻らなくちゃ!」
「お、おいゆあ?」
丸君が何か言ってるけど知らない。早く戻らなくちゃ、死ぬべきなのは、ゆあだから。咲夜を、死なせちゃダメだ。
あの部屋だって、ゆあがいなければ見つけられなかった。だから、咲夜がゆあの身代わりになんて、なっちゃいけない。
「戻らなくちゃ。戻らなくちゃ」
執務室を出て、廊下を走る。そして城を出て南の森に行って、あの部屋に行かないと。咲夜を、探さないと。
「戻らなくちゃ。戻らなくちゃ」
「おいゆあ、何があった?咲夜とリュカはどうした。おい、ゆあ!しっかりしろ!」
走って走って、王城を出たところで丸君に追いつかれて、頬を叩かれた。こんな所で説明している暇なんてないのに。早く行かなくちゃいけないのに。
……なんで叩かれたの?
なんで止めるの?
なんで咲夜なの?
なんで、どうして。
「さ……くや。さくやが、ゆあの、ゆあの、みがわりに……。さくやが、しんじゃ……」
「ゆあ?何があったんだ」
「丸く……。あ、ああ。さくっ、さくや、が!石を!ゆあ、おと……落としちゃって!」
1度立ち止まったらもう動けなくて。涙がぽろぽろ零れて、息が詰まって上手く喋れない。でも、丸君は理解してくれた。
「ゆあが石を落としてしまって、それで咲夜が代わりにくれたってことか?」
「そ、そう……。ゆあ、ゆあが、さくやを……!」
「……」
何を言われるか、怖かった。責められたらどうしよう、と。そう思ってしまった。
でも丸君は、ただ無言で頭を撫でてくれた。大丈夫だから、とでも言うように。優しく労わるように。
そして一瞬躊躇った後、涙や鼻水が服につくのもかわまずぎゅっと抱きしめてくれた。その腕がとても頼りになって、暖かくて。
「ま、まるくんっ、ゆあ、ゆあ……とうしたら、いい?ゆあ、さくやを……っ!」
「とりあえず落ち着け。それから、冷静に考えよう」
「でもっ、でも……!」
「今ゆあが泣いて喚いた所で何も変わらないだろ?」
「うっ、ん……」
それからしばらく泣いて、泣いて。涙は止まりそうになかったのに、丸君がずっと頭を撫で続けてくれて少しづつ落ち着くことが出来た。
「もう大丈夫か?」
「うん……ごめん、取り乱して。でもありがとう、丸君がいてくれてよかった」
「おう」
「これから、どうしよう……」
「とりあえず城の中に戻るぞ?」
そう言って、当たり前のように手を引いて歩き出す丸君。泣いたせいで顔が酷いことになっていそうで、俯いて歩いた。
だから、城に入った途端どうして丸君が立ち止まったのか分からなくて。顔を上げてそこにいる人物を見て、思わず駆け出して飛びついてしまった。
「……っ、おねぇちゃん!」
暑くて、初めて死を間近に感じて怖くて、緊張して軽くパニックになってしまって。絶対に失敗してはいけないのに、石を、取り落としてしまった。
そこで、死ぬんだと思ったのに。なのに。それなのに、咲夜が、自分の分をくれて。ゆあの代わりに、あの炎に……。
「もどらなくちゃ……戻らなくちゃ!」
「お、おいゆあ?」
丸君が何か言ってるけど知らない。早く戻らなくちゃ、死ぬべきなのは、ゆあだから。咲夜を、死なせちゃダメだ。
あの部屋だって、ゆあがいなければ見つけられなかった。だから、咲夜がゆあの身代わりになんて、なっちゃいけない。
「戻らなくちゃ。戻らなくちゃ」
執務室を出て、廊下を走る。そして城を出て南の森に行って、あの部屋に行かないと。咲夜を、探さないと。
「戻らなくちゃ。戻らなくちゃ」
「おいゆあ、何があった?咲夜とリュカはどうした。おい、ゆあ!しっかりしろ!」
走って走って、王城を出たところで丸君に追いつかれて、頬を叩かれた。こんな所で説明している暇なんてないのに。早く行かなくちゃいけないのに。
……なんで叩かれたの?
なんで止めるの?
なんで咲夜なの?
なんで、どうして。
「さ……くや。さくやが、ゆあの、ゆあの、みがわりに……。さくやが、しんじゃ……」
「ゆあ?何があったんだ」
「丸く……。あ、ああ。さくっ、さくや、が!石を!ゆあ、おと……落としちゃって!」
1度立ち止まったらもう動けなくて。涙がぽろぽろ零れて、息が詰まって上手く喋れない。でも、丸君は理解してくれた。
「ゆあが石を落としてしまって、それで咲夜が代わりにくれたってことか?」
「そ、そう……。ゆあ、ゆあが、さくやを……!」
「……」
何を言われるか、怖かった。責められたらどうしよう、と。そう思ってしまった。
でも丸君は、ただ無言で頭を撫でてくれた。大丈夫だから、とでも言うように。優しく労わるように。
そして一瞬躊躇った後、涙や鼻水が服につくのもかわまずぎゅっと抱きしめてくれた。その腕がとても頼りになって、暖かくて。
「ま、まるくんっ、ゆあ、ゆあ……とうしたら、いい?ゆあ、さくやを……っ!」
「とりあえず落ち着け。それから、冷静に考えよう」
「でもっ、でも……!」
「今ゆあが泣いて喚いた所で何も変わらないだろ?」
「うっ、ん……」
それからしばらく泣いて、泣いて。涙は止まりそうになかったのに、丸君がずっと頭を撫で続けてくれて少しづつ落ち着くことが出来た。
「もう大丈夫か?」
「うん……ごめん、取り乱して。でもありがとう、丸君がいてくれてよかった」
「おう」
「これから、どうしよう……」
「とりあえず城の中に戻るぞ?」
そう言って、当たり前のように手を引いて歩き出す丸君。泣いたせいで顔が酷いことになっていそうで、俯いて歩いた。
だから、城に入った途端どうして丸君が立ち止まったのか分からなくて。顔を上げてそこにいる人物を見て、思わず駆け出して飛びついてしまった。
「……っ、おねぇちゃん!」
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