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雑談
ひな祭り
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「ひなあられも、菱餅も、ちらし寿司も!食べたいーー!!」
3月3日、早朝5時。ラフィリア城内に響いたのは、ゆあの叫び声。
「わかったから叫ぶな!」
「だって、だってー!……ふぐふぐ」
「どうしたの?」
叫び、暴れるゆあを押さえつける一。その騒ぎに気づいた咲夜が寝ぼけ眼をこすりながらフィルと共に部屋から顔を出した。
「ひゃふや!ひゅは!ふぁるふん、はにゃひへよ(咲夜!リュカ!丸君、離してよ)」
「叫ぶなよ?……よし」
ゆあを後ろからホールドしつつ口を押さえる一。問いかけにコクコク頷くゆあに、もう一度念押ししてから解放した。その途端、咲夜に押し倒す勢いで突進するゆあ。
「あのねっ、あのねっ、丸君がね!今日ひな祭りだって言ったのに、それがどうしたって!ひな祭りだよ、ひな祭り!!」
「そういえばそうだね。それで、どうしたの?」
「咲夜もなのっ!?よく考えてみてよ!クリスマスから1回もイベントしてないんだよ!?お正月も、バレンタインデーも、このままいったらひな祭りもホワイトデーだってスルーになるじゃん!そんなの日本人としてどうなのかってゆあは聞きたいのっ!」
「うんうん、ちょっと落ち着こうか」
ガクガク揺さぶりながら熱弁するゆあをやんわりなだめ、少し考えてみる咲夜。季節感のない異世界に来たことで気付かずイベントをスルーしていたのだ。
「ゆあはそのイベントごとの食べ物が食べたいだけだろ……」
「え、うんそうだけどよくわかったね?」
「そんなんで日本人として、とか言うな?……はぁ、というか節分が入って居ないのはなんでだ」
「そういえば恵方巻きも食べてないっ!!」
「だから叫ぶなって」
愕然としつつ叫ぶゆあにもう脱力している一。とりあえず興奮状態のゆあをなんとかすべく咲夜が2人を部屋に入れる。
「それで、ゆあはどうしたいの?」
「どうしたいって、ひな祭りをしたい!」
「流石に雛人形なんて作れないぞ」
「うん、だからせめてちらし寿司とかだけでも!」
「ちらし寿司、なぁ。材料を用意しないといけないぞ?菱餅作るにももち米なさそうだし、あられはまずそもそも作り方知らないし」
「フィル、米あるかな?」
ラフィリア城に初めて来た時に米について話したのを思い出しつつ聞く咲夜に、フィルがうなづく。米があるほぼ鎖国状態のジャーン国から、どうにかこうにか入手しておいたものがあるのだ。
「あとそのちらしずし?には何がいるんだ」
「酢は確実にいるな。酢飯を作らないとまず寿司にならないし」
「ほかの具は人によって違うよね」
「うんうん、ゆあはしいたけ入れたいなぁ」
「しいたけって何だ」
「キノコだよ!ほかにもね……」
ひな祭りが何かをまずそもそも知らないがなんとか話に混じっているフィル。それからちらし寿司を作るための材料集めが始まったのであった。
******
「炊けたぞー。ゆあ、酢を混ぜてからまぜながら冷ましてくれ」
「りょーかい!うちわある?」
「あるよ、はい」
「咲夜、卵焼き千切りにしてくれ」
「はーい」
「リュカはこのえのきもどきとしいたけもどき、洗ってくれ」
「おう」
朝の市場をまわって各種材料をあつめ始めて3時間。ラフィリア城内の食堂キッチンでは一が忙しく指示を出しながら働いていた。
実はフィルが輸入した米は文字通り大量。それこそ城にやってくる人達全員に振舞っても足りるほど、大量であった。
それならせっかくだし皆にちらし寿司を出してあげようよ、という話になり尋常ではない量のちらし寿司を作ることになった。それゆえキッチンには咲夜達だけでなくコック達も皆忙しく動いている。
「酢飯できたー!具どんどん入れてまぜよー?」
「おう、やってくれ。あー、悪いがもう一回り大きな鍋用意してくれ!」
「これでええか、ハジメ?」
「あぁ、いい。というかリィカ、いたのか」
「いるに決まっとるやん。こんな楽しそうなん、見逃すはずないやろ」
ちらし寿司の量に合わせて一がお澄ましを作る。大鍋は既に6つ使っているが、それでも足りるか怪しい。ちらし寿司が朝食として振る舞われるのは8時からであるが、城の前には人々がもう待っている。
「もういい、出来た分から持って行ってくれ!……おいゆあ、どさくさに紛れてつまみ食いするな!」
「とりあえず今作ってる分が終わったら私達も食べれるから、ね?」
「あぁ。配膳は自分でしてもらうからな」
「うー、わかったよ」
こっそり出来上がったちらし寿司に手を伸ばすゆあを見ていないのに注意する一。そろそろつまみ食いをするだろうという直感が当たったのだ。
「……っ、よし終わり!あとは運んだら終わりだ」
「おう」
「はよ食べたいから急ご」
「だねっ」
最後のお澄ましを作り終え、せかせかと運びにかかるゆあとリィカ。咲夜とフィルは追加の食器類を運ぶ。
そして全て運び終え、一足先に食べて目を輝かせている国民をみてフィルが嬉しそうに見る。そんなことおかまいなしにちらし寿司に飛びつき、自分の取り皿を山盛りにするのはゆあ。
減る勢いが尋常ではなので、食べ損ねては大変とばかりに咲夜も自分の皿に盛った。つまみ食いはする癖に、ゆあは律儀に席で5人揃うのを待っている。
「「「「「いただきますっ!」」」」」
咲夜、フィル、ゆあ、一、リィカの5人が手を合わせてからちらし寿司を口に入れる。次の瞬間、5人とも笑顔になったのは言うまでもないだろう。
3月3日、早朝5時。ラフィリア城内に響いたのは、ゆあの叫び声。
「わかったから叫ぶな!」
「だって、だってー!……ふぐふぐ」
「どうしたの?」
叫び、暴れるゆあを押さえつける一。その騒ぎに気づいた咲夜が寝ぼけ眼をこすりながらフィルと共に部屋から顔を出した。
「ひゃふや!ひゅは!ふぁるふん、はにゃひへよ(咲夜!リュカ!丸君、離してよ)」
「叫ぶなよ?……よし」
ゆあを後ろからホールドしつつ口を押さえる一。問いかけにコクコク頷くゆあに、もう一度念押ししてから解放した。その途端、咲夜に押し倒す勢いで突進するゆあ。
「あのねっ、あのねっ、丸君がね!今日ひな祭りだって言ったのに、それがどうしたって!ひな祭りだよ、ひな祭り!!」
「そういえばそうだね。それで、どうしたの?」
「咲夜もなのっ!?よく考えてみてよ!クリスマスから1回もイベントしてないんだよ!?お正月も、バレンタインデーも、このままいったらひな祭りもホワイトデーだってスルーになるじゃん!そんなの日本人としてどうなのかってゆあは聞きたいのっ!」
「うんうん、ちょっと落ち着こうか」
ガクガク揺さぶりながら熱弁するゆあをやんわりなだめ、少し考えてみる咲夜。季節感のない異世界に来たことで気付かずイベントをスルーしていたのだ。
「ゆあはそのイベントごとの食べ物が食べたいだけだろ……」
「え、うんそうだけどよくわかったね?」
「そんなんで日本人として、とか言うな?……はぁ、というか節分が入って居ないのはなんでだ」
「そういえば恵方巻きも食べてないっ!!」
「だから叫ぶなって」
愕然としつつ叫ぶゆあにもう脱力している一。とりあえず興奮状態のゆあをなんとかすべく咲夜が2人を部屋に入れる。
「それで、ゆあはどうしたいの?」
「どうしたいって、ひな祭りをしたい!」
「流石に雛人形なんて作れないぞ」
「うん、だからせめてちらし寿司とかだけでも!」
「ちらし寿司、なぁ。材料を用意しないといけないぞ?菱餅作るにももち米なさそうだし、あられはまずそもそも作り方知らないし」
「フィル、米あるかな?」
ラフィリア城に初めて来た時に米について話したのを思い出しつつ聞く咲夜に、フィルがうなづく。米があるほぼ鎖国状態のジャーン国から、どうにかこうにか入手しておいたものがあるのだ。
「あとそのちらしずし?には何がいるんだ」
「酢は確実にいるな。酢飯を作らないとまず寿司にならないし」
「ほかの具は人によって違うよね」
「うんうん、ゆあはしいたけ入れたいなぁ」
「しいたけって何だ」
「キノコだよ!ほかにもね……」
ひな祭りが何かをまずそもそも知らないがなんとか話に混じっているフィル。それからちらし寿司を作るための材料集めが始まったのであった。
******
「炊けたぞー。ゆあ、酢を混ぜてからまぜながら冷ましてくれ」
「りょーかい!うちわある?」
「あるよ、はい」
「咲夜、卵焼き千切りにしてくれ」
「はーい」
「リュカはこのえのきもどきとしいたけもどき、洗ってくれ」
「おう」
朝の市場をまわって各種材料をあつめ始めて3時間。ラフィリア城内の食堂キッチンでは一が忙しく指示を出しながら働いていた。
実はフィルが輸入した米は文字通り大量。それこそ城にやってくる人達全員に振舞っても足りるほど、大量であった。
それならせっかくだし皆にちらし寿司を出してあげようよ、という話になり尋常ではない量のちらし寿司を作ることになった。それゆえキッチンには咲夜達だけでなくコック達も皆忙しく動いている。
「酢飯できたー!具どんどん入れてまぜよー?」
「おう、やってくれ。あー、悪いがもう一回り大きな鍋用意してくれ!」
「これでええか、ハジメ?」
「あぁ、いい。というかリィカ、いたのか」
「いるに決まっとるやん。こんな楽しそうなん、見逃すはずないやろ」
ちらし寿司の量に合わせて一がお澄ましを作る。大鍋は既に6つ使っているが、それでも足りるか怪しい。ちらし寿司が朝食として振る舞われるのは8時からであるが、城の前には人々がもう待っている。
「もういい、出来た分から持って行ってくれ!……おいゆあ、どさくさに紛れてつまみ食いするな!」
「とりあえず今作ってる分が終わったら私達も食べれるから、ね?」
「あぁ。配膳は自分でしてもらうからな」
「うー、わかったよ」
こっそり出来上がったちらし寿司に手を伸ばすゆあを見ていないのに注意する一。そろそろつまみ食いをするだろうという直感が当たったのだ。
「……っ、よし終わり!あとは運んだら終わりだ」
「おう」
「はよ食べたいから急ご」
「だねっ」
最後のお澄ましを作り終え、せかせかと運びにかかるゆあとリィカ。咲夜とフィルは追加の食器類を運ぶ。
そして全て運び終え、一足先に食べて目を輝かせている国民をみてフィルが嬉しそうに見る。そんなことおかまいなしにちらし寿司に飛びつき、自分の取り皿を山盛りにするのはゆあ。
減る勢いが尋常ではなので、食べ損ねては大変とばかりに咲夜も自分の皿に盛った。つまみ食いはする癖に、ゆあは律儀に席で5人揃うのを待っている。
「「「「「いただきますっ!」」」」」
咲夜、フィル、ゆあ、一、リィカの5人が手を合わせてからちらし寿司を口に入れる。次の瞬間、5人とも笑顔になったのは言うまでもないだろう。
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