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本編
64.「……我の眠りを妨げる愚か者は誰だ?」
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「どうする?行く?」
たっぷり30秒も螺旋階段を眺めたあと、咲夜がそう切り出した。それを聞いたフィルが先程通ってきた通路を振り返って、ため息混じりに言う。
「戻るのは許さねぇってさ」
「あ、ほんと。通路閉じちゃってる」
「降りるしか……ないのか」
「みたいだね」
噂では∞ランクの魔物が主となっていることを思い出し、緊張を孕んだ声音になる一。その横で早く行こう、行こう、と楽しげなゆあにツッコミを入れる者などいない。
「いざとなったら転移石で逃げてくれ。行先は俺の執務室に設定してある」
「使い方は?」
「握って、”使用”と言えばいい」
「わかった」
フィルから受け取った丸い石を各々取り出しやすい場所にしまい、装備のチェックを手早く済ます。1番がいいと言うゆあの希望通り、ゆあが先頭で咲夜がしんがり。
「じゃ、行くよ?」
「うん」
一応確認をとってから、軽やかに螺旋階段を降りるゆあ。螺旋階段の入口も、咲夜が入った途端に閉じてしまった。
それから2階分の階段を降りたところで突然、壁が見えないほど大きな部屋に出た。3番目に降り終えたフィルがさらに4つの光球を作り出して八方に散らしてやっと壁がぼんやりと見える。
「広いな」
「1階層と同じ広さかな?」
「そう考えるのが自然だな」
「それで、主っていうのはどこにるの?というか討伐不可能ってなに……?」
そんな問いかけをしながら広間に降りた咲夜。そこで螺旋階段も消え、広い空間に4人がぽつんと立っている状況になる。
「ダメだよー、咲夜。フラグ立てちゃ」
「……即回収ご苦労」
フィルが作り出した光球以外の光源がない中、突然炎の塊が現れた。直感と知識を照らし合わせてその炎が何であるかを悟ったフィルの表情が、苦々しいものになる。
「……我の眠りを妨げる愚か者は誰だ?」
「ま、迷い込んでしまったのです」
地の底から響いてくるような声に気圧され、何も言えない咲夜。それでもフィルは代償を払わずこの状況を脱せれば、と気丈にも言葉を返す。
「迷い子か。……よかろう、我の炎でその身を焼いてやろうではないか」
「っ、くそ」
思わず毒づいてしまったフィルの前で、炎が一気に膨張してみるみる形が変化する。そして現れた金色と紅の美しい鳥……不死鳥を見つめる4人の周囲に、火の粉が舞った。
***シェル***
咲夜が階段を降り終えた頃。通路に女性が一人、唐突に現れた。
「ったく、スズランの奴適当に送りやがって」
荒々しい言葉遣いで舌打ちをひとつ打つと、女性は明かりも付けずに歩き出す。その足取りは手に持つ大剣の重さなど全く感じさせないほど軽やかである。
「この下にいるのがどんなレベルかは知らねぇが、スズランが危ぶむんだったらそこそこだろ。……少しは、楽しめるか」
そう呟いた女性の、長い尻尾が機嫌良さげに少しだけ揺れた。
たっぷり30秒も螺旋階段を眺めたあと、咲夜がそう切り出した。それを聞いたフィルが先程通ってきた通路を振り返って、ため息混じりに言う。
「戻るのは許さねぇってさ」
「あ、ほんと。通路閉じちゃってる」
「降りるしか……ないのか」
「みたいだね」
噂では∞ランクの魔物が主となっていることを思い出し、緊張を孕んだ声音になる一。その横で早く行こう、行こう、と楽しげなゆあにツッコミを入れる者などいない。
「いざとなったら転移石で逃げてくれ。行先は俺の執務室に設定してある」
「使い方は?」
「握って、”使用”と言えばいい」
「わかった」
フィルから受け取った丸い石を各々取り出しやすい場所にしまい、装備のチェックを手早く済ます。1番がいいと言うゆあの希望通り、ゆあが先頭で咲夜がしんがり。
「じゃ、行くよ?」
「うん」
一応確認をとってから、軽やかに螺旋階段を降りるゆあ。螺旋階段の入口も、咲夜が入った途端に閉じてしまった。
それから2階分の階段を降りたところで突然、壁が見えないほど大きな部屋に出た。3番目に降り終えたフィルがさらに4つの光球を作り出して八方に散らしてやっと壁がぼんやりと見える。
「広いな」
「1階層と同じ広さかな?」
「そう考えるのが自然だな」
「それで、主っていうのはどこにるの?というか討伐不可能ってなに……?」
そんな問いかけをしながら広間に降りた咲夜。そこで螺旋階段も消え、広い空間に4人がぽつんと立っている状況になる。
「ダメだよー、咲夜。フラグ立てちゃ」
「……即回収ご苦労」
フィルが作り出した光球以外の光源がない中、突然炎の塊が現れた。直感と知識を照らし合わせてその炎が何であるかを悟ったフィルの表情が、苦々しいものになる。
「……我の眠りを妨げる愚か者は誰だ?」
「ま、迷い込んでしまったのです」
地の底から響いてくるような声に気圧され、何も言えない咲夜。それでもフィルは代償を払わずこの状況を脱せれば、と気丈にも言葉を返す。
「迷い子か。……よかろう、我の炎でその身を焼いてやろうではないか」
「っ、くそ」
思わず毒づいてしまったフィルの前で、炎が一気に膨張してみるみる形が変化する。そして現れた金色と紅の美しい鳥……不死鳥を見つめる4人の周囲に、火の粉が舞った。
***シェル***
咲夜が階段を降り終えた頃。通路に女性が一人、唐突に現れた。
「ったく、スズランの奴適当に送りやがって」
荒々しい言葉遣いで舌打ちをひとつ打つと、女性は明かりも付けずに歩き出す。その足取りは手に持つ大剣の重さなど全く感じさせないほど軽やかである。
「この下にいるのがどんなレベルかは知らねぇが、スズランが危ぶむんだったらそこそこだろ。……少しは、楽しめるか」
そう呟いた女性の、長い尻尾が機嫌良さげに少しだけ揺れた。
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