竜王の番は大変です!

月桜姫

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本編

62.「んーっと……あ、見つけた!」

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「ほらフィル、ぼーっとしてたら置いてくよ?」

「よー?」

咲夜とゆあに呼ばれ、思考の海から抜け出したフィル。本日の目的であるダンジョンの入口を前に、急かす3人の元へ駆け寄る。

「いくらこのダンジョンが1番安全で、1階層しかないからって油断はするなよ?」

「うん!」

「もちろんー」

「おう!」

南の森で1番浅く、安全なダンジョンに来ている4人。1番安全と言ってもS-ランクの魔物が中心であり、上は最悪S+ランクまで出没する。

さらに1階層しかないはずだが、本当は2階層があって∞ランク(討伐不可能)の魔物が主としている……なんていういわく付きのダンジョンだ。

それでも4人が全く恐れていないのは、そのチート能力ゆえだった。最近ギルド登録したばかりの咲夜は槍を主武器としており、ゆくゆくは魔法も使うようになるはずだ。

「よし。じゃあ、開けるぞ……」

4人全員そろい、準備もできているのを確認してから一がダンジョンの入口の大扉を押し上げる。階段をおりつつ油断なく武器を構え警戒する一行の目に飛び込んできたのは、鬱蒼とした熱帯雨林であった。

「依頼はサニービーのはちみつを巣1つ分。サニービーはその名の通り日向に素を作るから、探すぞ!」

「「おーっ!!」」

仮にも地下一階であるというのに、上を見れば青空と眩しい太陽が輝いている。外との違いは太陽が2つ、仲良く寄り添うようにあるというところだ。

……さて、今回咲夜達が受けた依頼は一の説明通り。サニービーのはちみつは普通のものより濃く甘く、大変人気。ただしサニービー自体がSランクの魔物なので、当然市場に出回る数はごく少なく、お値段は高いレアものだ。

「んーっと……あ、見つけた!」

「どこ?」

「1番近いのはあそこ!双子やしの、木の上に1つ、2つ……全部で4つ!」

「よし行こ!」

木が生い茂るジャングルの中、日当たりがいいのは木の上。大体の冒険者は高い木、巣のある木を探して半日~2日ほどさまよい歩く。もちろん途中で魔物とも会うので、大変なんてものじゃあない。

ただしそれを一瞬で終わらせてしまうのがゆあ。ひょいひょいと近くの木に登り、まずは1番高い木を探す。

そしてスズランから貰った性能の良すぎる詮索スキルで巣の有無と個数を確認。あとは木から降りれば終わり。

「双子やしー、双子やしー」

「っ、あれだ」

「よし。俺と丸がビー達の気を引くから、朔が巣を2つ切り取って、サクヤが受ける。いいな?」

「おう」

「了解」

「まかされたっ」

フィルの指示に3人が小声ながらいい返事をし、一が盾を構える。ゆあも咲夜に気配を隠すスキルを使う。それから4人はきらきらと太陽光を反射しながら飛ぶサニービーの群れに飛び込んだ。
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