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本編
61.「これスズランの仕業だろー」
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スズランが頼み事をしてきたあの日から約1ヶ月。その間に色々あったが、とりあえずウィルからの干渉もなく平穏な日々が続いていた。
色々、というのを1つ言っておくと、ルルとナゼルが遺族に会ってきた。もちろんフィルも同伴し、話し合いは比較的温厚に済んだ。
比較的、というのはルルとナゼルの頬にもみじ型があるからである。遺族の人が憎しみのあまり叩いた訳ではなく、ルルが自らの戒めのために頼んだ結果だ。
……まぁそんな話し合いがあり、ルル達は裏の面でリィカと共に協力してくれることに話がまとまった。そして表で動くのことになった咲夜達は訓練のために連日森へと赴くようになったのだが。
「やっぱりこれって……」
「チート、だよねぇ」
どぅ、と地を響かせて倒れた熊と狼。それぞれ約3メートルもの体格を持つ魔物である。Aランクど真ん中の、いわゆる手練でないと倒せないレベル。
「ランクだけで言ったらまだEとかFの私達がどうしてAランクを倒せるんだろ」
「無傷、ワンパンは当たり前。俺とゆあが1度ゴブリンと戦った時はこんなのじゃなかったんだが」
「うんうん。戦い方なんて知らなかったのに、今は分かるし動けるから怖いんだよねぇ」
解体用のナイフを操りサクサク解体しながらボヤく3人。ちょうど3週間前に森に来て、チートの存在に気が付いた。
ただ、その時はまだ力があって、それの使い方が分かるという、"才能がある"だけだったのだ。つまり、普通の潜在能力と同じで訓練をつんで"使える"ようにならなければ、普通のままだったのだ。
フィルとリィカ達が、揃いも揃って面白がってその訓練を始めさえしなければ。
「これスズランの仕業だろー」
「うんうん」
「スズランのことだから絶対にチートってるってゆあ、ちゃんと言ったのに」
「いやでもせっかく逸材が揃ってんなら、やっぱ育てないと、な?」
「別に強くなって困ることは今のところないからいいけどさぁ」
「チートはないって思ってたからちょっとびっくりしたかな」
「「それな」」
頷き合う咲夜達3人に、実は自分がスズランに頼み込んだなんて言えないフィル。咲夜達が弱くて、自分の守りが万が一届かなくても生きて欲しかったから頼んだのである。
あくまでこの世界の一般人レベルで、と条件をつけてはいたのだが。人族の冒険者の、平均ぐらいでいい、と名言した。
「(しっかし、これどう考えても竜人の、しかも上位騎士クラスの平均だろ……)」
「でもどうせなら魔法もつけてほしかったや」
「だな」
「なんで私だけなんだろうね」
「ナンデダロウナー」
未だフィルの竜心を半分貰っていると知らない咲夜。イオにも急かされた通り、フィルが咲夜にもっと触れていて、魔力を慣らしていればもうすぐにでも魔法が使えるだろう。
「魔法、早く使いたいなぁ」
「まだ、ダメだ」
「そっかぁ」
フィルに聞くも、返ってきたのは禁止の言葉。少し残念そうだが咲夜は素直に聞き入れた。前も少し説明したが、手を繋ぐだけでは気の遠い時間が必要になる。
「(手っ取り早い方法はあるが、なぁ……)」
早く魔法を使わせてあげたい、しかしそれを盾に関係を迫るようなことはしたくない。そんな思いの狭間でフィルもフィルなりの事情があって悩んでいるのだった。
色々、というのを1つ言っておくと、ルルとナゼルが遺族に会ってきた。もちろんフィルも同伴し、話し合いは比較的温厚に済んだ。
比較的、というのはルルとナゼルの頬にもみじ型があるからである。遺族の人が憎しみのあまり叩いた訳ではなく、ルルが自らの戒めのために頼んだ結果だ。
……まぁそんな話し合いがあり、ルル達は裏の面でリィカと共に協力してくれることに話がまとまった。そして表で動くのことになった咲夜達は訓練のために連日森へと赴くようになったのだが。
「やっぱりこれって……」
「チート、だよねぇ」
どぅ、と地を響かせて倒れた熊と狼。それぞれ約3メートルもの体格を持つ魔物である。Aランクど真ん中の、いわゆる手練でないと倒せないレベル。
「ランクだけで言ったらまだEとかFの私達がどうしてAランクを倒せるんだろ」
「無傷、ワンパンは当たり前。俺とゆあが1度ゴブリンと戦った時はこんなのじゃなかったんだが」
「うんうん。戦い方なんて知らなかったのに、今は分かるし動けるから怖いんだよねぇ」
解体用のナイフを操りサクサク解体しながらボヤく3人。ちょうど3週間前に森に来て、チートの存在に気が付いた。
ただ、その時はまだ力があって、それの使い方が分かるという、"才能がある"だけだったのだ。つまり、普通の潜在能力と同じで訓練をつんで"使える"ようにならなければ、普通のままだったのだ。
フィルとリィカ達が、揃いも揃って面白がってその訓練を始めさえしなければ。
「これスズランの仕業だろー」
「うんうん」
「スズランのことだから絶対にチートってるってゆあ、ちゃんと言ったのに」
「いやでもせっかく逸材が揃ってんなら、やっぱ育てないと、な?」
「別に強くなって困ることは今のところないからいいけどさぁ」
「チートはないって思ってたからちょっとびっくりしたかな」
「「それな」」
頷き合う咲夜達3人に、実は自分がスズランに頼み込んだなんて言えないフィル。咲夜達が弱くて、自分の守りが万が一届かなくても生きて欲しかったから頼んだのである。
あくまでこの世界の一般人レベルで、と条件をつけてはいたのだが。人族の冒険者の、平均ぐらいでいい、と名言した。
「(しっかし、これどう考えても竜人の、しかも上位騎士クラスの平均だろ……)」
「でもどうせなら魔法もつけてほしかったや」
「だな」
「なんで私だけなんだろうね」
「ナンデダロウナー」
未だフィルの竜心を半分貰っていると知らない咲夜。イオにも急かされた通り、フィルが咲夜にもっと触れていて、魔力を慣らしていればもうすぐにでも魔法が使えるだろう。
「魔法、早く使いたいなぁ」
「まだ、ダメだ」
「そっかぁ」
フィルに聞くも、返ってきたのは禁止の言葉。少し残念そうだが咲夜は素直に聞き入れた。前も少し説明したが、手を繋ぐだけでは気の遠い時間が必要になる。
「(手っ取り早い方法はあるが、なぁ……)」
早く魔法を使わせてあげたい、しかしそれを盾に関係を迫るようなことはしたくない。そんな思いの狭間でフィルもフィルなりの事情があって悩んでいるのだった。
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