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本編
59.「うんうん、やってくれるんだねありがとう!」
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「で、竜王。お前、スズランから何も聞いてねぇのか?」
「あ、はい。そうで……」
「ううん言ってたよ。カスミソウっていうのに会ったら封印してねって」
「思えばウィルの奴、自分には神がついてるとかいってたな」
「そうだっけ?」
「言ってたよー」
ベルゼブブの言う"道"で襲われ、スズランに助けられた時のことを思い出しながら話すゆあと一。対してあまり記憶にない咲夜とフィル。
「どっちにしろ、それしか言ってねぇってのはおかしいだろ」
「それは言えてるのです。というかいくら竜王がいても神クラスを封印するのは無理なのです」
「1回怒ってやらねぇとなぁ」
「ど、どうするんですか?」
「あ? 呼ぶんだよ」
イライラとそう告げたベルゼブブ。口角が上がって凶悪な笑みを浮かべているので、ルルでも口を挟めない。ナゼルのことも相まってかなりお怒りな初代魔王はすぅっ、と息を吸い、大声で叫んだ。
「……は、はいぃ!」
その直後、パチンという音と共になんとも情けない声で応じるスズランの姿が現れた。威厳のある神とは悲しいほどかけ離れている。
「で、スズラン。説明してもらおうか?」
「教える前に自力で答えにたどり着いちゃうなんて凄いね?」
「んたこたどうでもいい!さっさと、現状を、説明しろ!この……」
と、この先の暴言の嵐は割愛。
さて、5分後。初代魔王のお叱りをたっぷり受けたスズランは、そのポジティブな性格でもって何も無かったかのように振舞った。
「事の発端はカスミソウっていう神が堕ちたこと。理由はよく分からないけど、ある日突然この世界を消そうとしたんだ。で、何度止めても繰り返そうとするから神界のルールに反するってことで力を封じた上で追放された」
「どうしてこの世界なんだ?」
「それはカスミソウがこの世界の創造者だからだよ」
あくまで軽い口調で話してはいるが、スズランの表情は硬い。スズランはあまたいる神の中でも古くからいた一人で、カスミソウと長年仲良くしていたそう。
「で、力を封印されたカスミソウってのはどうなったんだ」
「記憶を消去して、世界の輪廻システムに組み込むんだ。何百、何千と輪廻を繰り返すうち、封じた力も失われてやがてその世界の住人になるんだよ」
「じゃあなんでカスミソウはウィルに憑いて、ゆあ達を襲ってくるの?」
「それは……本当に分からないんだ、ごめんね。なんぜか力も全部封じられてる訳じゃないし……」
ゆあの質問に、俯いて弱気な感じで答えたスズラン。しかしすぐに顔を上げ、1番近くにいた咲夜の手を取った。
そこで大半の者が嫌な予感がして1歩あとずさる。咲夜もその一人だったが、スズランは容赦なく距離を詰める。
「ボクの力ってね、天界でしか発揮できないんだよね。つまり、降りたら力が50分の1になっちゃうんだ」
「う、うん」
「だから、ね?カスミソウを封印するの、よろしくね!」
「え、あ」
「うんうん、やってくれるんだねありがとう!それじゃあボクは忙しいから帰るね、後で増援送るから仲良くしてね、じゃあ!」
後半の方はよほど焦っていたのだろう、通常の二倍ぐらいの速度で話したスズラン。我に返ったベルゼブブの伸ばした手を間一髪で躱して逃げ帰ってしまった。
十数秒かけてやっと我に返って状況を把握した咲夜達。みな一様に、あぁ面倒事を押し付けられた……とげんなりしてしまったのであった。
「あ、はい。そうで……」
「ううん言ってたよ。カスミソウっていうのに会ったら封印してねって」
「思えばウィルの奴、自分には神がついてるとかいってたな」
「そうだっけ?」
「言ってたよー」
ベルゼブブの言う"道"で襲われ、スズランに助けられた時のことを思い出しながら話すゆあと一。対してあまり記憶にない咲夜とフィル。
「どっちにしろ、それしか言ってねぇってのはおかしいだろ」
「それは言えてるのです。というかいくら竜王がいても神クラスを封印するのは無理なのです」
「1回怒ってやらねぇとなぁ」
「ど、どうするんですか?」
「あ? 呼ぶんだよ」
イライラとそう告げたベルゼブブ。口角が上がって凶悪な笑みを浮かべているので、ルルでも口を挟めない。ナゼルのことも相まってかなりお怒りな初代魔王はすぅっ、と息を吸い、大声で叫んだ。
「……は、はいぃ!」
その直後、パチンという音と共になんとも情けない声で応じるスズランの姿が現れた。威厳のある神とは悲しいほどかけ離れている。
「で、スズラン。説明してもらおうか?」
「教える前に自力で答えにたどり着いちゃうなんて凄いね?」
「んたこたどうでもいい!さっさと、現状を、説明しろ!この……」
と、この先の暴言の嵐は割愛。
さて、5分後。初代魔王のお叱りをたっぷり受けたスズランは、そのポジティブな性格でもって何も無かったかのように振舞った。
「事の発端はカスミソウっていう神が堕ちたこと。理由はよく分からないけど、ある日突然この世界を消そうとしたんだ。で、何度止めても繰り返そうとするから神界のルールに反するってことで力を封じた上で追放された」
「どうしてこの世界なんだ?」
「それはカスミソウがこの世界の創造者だからだよ」
あくまで軽い口調で話してはいるが、スズランの表情は硬い。スズランはあまたいる神の中でも古くからいた一人で、カスミソウと長年仲良くしていたそう。
「で、力を封印されたカスミソウってのはどうなったんだ」
「記憶を消去して、世界の輪廻システムに組み込むんだ。何百、何千と輪廻を繰り返すうち、封じた力も失われてやがてその世界の住人になるんだよ」
「じゃあなんでカスミソウはウィルに憑いて、ゆあ達を襲ってくるの?」
「それは……本当に分からないんだ、ごめんね。なんぜか力も全部封じられてる訳じゃないし……」
ゆあの質問に、俯いて弱気な感じで答えたスズラン。しかしすぐに顔を上げ、1番近くにいた咲夜の手を取った。
そこで大半の者が嫌な予感がして1歩あとずさる。咲夜もその一人だったが、スズランは容赦なく距離を詰める。
「ボクの力ってね、天界でしか発揮できないんだよね。つまり、降りたら力が50分の1になっちゃうんだ」
「う、うん」
「だから、ね?カスミソウを封印するの、よろしくね!」
「え、あ」
「うんうん、やってくれるんだねありがとう!それじゃあボクは忙しいから帰るね、後で増援送るから仲良くしてね、じゃあ!」
後半の方はよほど焦っていたのだろう、通常の二倍ぐらいの速度で話したスズラン。我に返ったベルゼブブの伸ばした手を間一髪で躱して逃げ帰ってしまった。
十数秒かけてやっと我に返って状況を把握した咲夜達。みな一様に、あぁ面倒事を押し付けられた……とげんなりしてしまったのであった。
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