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本編
50.「さぁ皆、思う存分……やっちゃえ!」
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視点:一
「キト、あれか!?」
「そうだ。イトの気配を感じる」
「よし。このまま入るか」
全速力で走って、走って。ようやくたどり着いたのは古びた港。そこに立ち並ぶ倉庫のひとつをしっかりと狙い定め、俺はドアを壊す勢いで体当たり。
バタン!とすごい音がして木製のドアが勢いよく開き、壁にあたって跳ね返ってきた。それを足で止め、とりあえずキトを下ろすと。
「誰だ!」
「来たなぁ、人攫いめ!」
キリキリキリ……と不吉な音。見れば倉庫の2階から竜人族の女性が弓を引いていて。射られちゃたまらんとばかりに、慌てて大声を出した。
「俺達は敵じゃない!というかゆあ、いるんだろ!」
「あーっ、丸君だぁ!」
「あーっ、じゃねぇよ!射られたらどうすんだ!」
「大丈夫だよー。あっ、そっちの子はキトかな?イトは奥にいるよ」
「あぁ、ありがとう」
ゆあと口論している間、周りの女性からなーんだ、とかつまんなーい、とか聞こえたのは気の所為だよな。ゆあと同じく連れ去られた女性達が立てこもっていて超好戦的とか気の所為……だよな?
「ゆあ、これは一体どういう事だよ」
「どういう事って、んー、人さらいの一団の、あっ鴉団って言うんだけどね、その女副長がゆあ達に味方してくれてるんだ」
「なんだい、アタイの事呼んだかい?」
「あっ、リサねぇ!」
奥から出てきた、ゆあがリサねぇと呼んだ人物。美人とか可愛いとかいう言葉は似合わない人だ。たくましい、という言葉がしっくりくる。
それより、俺は別のことが気になるんだよ。倉庫内にいる連れ去られた女性達。その八割が手に手に武器を持ち、人攫い達が突っ込んでくるのを今か今かと待ち構えていることについてだ。
「そんなに気になる?」
「そりゃ」
「ふむふむ」
***少し前***
「とりあえず、皆は逃げとくれ!」
合計50人の女性達が解放され、倉庫の中央でリサが状況説明をした。しかしその締めくくりの言葉を聞いた女性達が顔を顰める。リサに従おうとしたのは数人だけであった。
「何か、不満があるのかい?」
「えぇ。せっかく助けて頂いたのですが、実は私達はラフィリア国の女性のみで構成された騎士団のメンバーなのです」
「つまり、仕事ってこと?」
「はい、潜入捜査です」
「そっかそっか。じゃあリサねぇの指示に従った人は非戦闘員ってことだね?」
素直にリサに従った十数人が、咳き込んでいたりお腹が大きかったりするのを見て言うゆあ。その中にはもちろん、戦いを好まない人もいる。
「そういう事情なら構わない。武器ならその辺に転がってるから、自由に使ってくれ」
「途中でリュカが来るから、それまで耐えればミッションコンプリートだよ!」
にっこり笑って言うゆあにつられて、女性達も笑う。どことなく恐ろしい雰囲気のまま立てこもる準備は着々と進み、わずか数分で整った。
「目指すは敵戦力の殲滅!」
「アタイ達女の恐ろしさ、知らしめてやれ!」
「「おーっ!!」」
視点:一
「……怖いな」
「そう?まぁでも、元々仕事みたいだしいいんじゃない?」
日頃のストレス発散も入ってそうだけど、と付け加えられた言葉に内心恐れおののく。いつもゆあには強く出れないが、笑顔の裏に何気なくある威圧感に負けているからなんだよなぁ……。
「(平和に行くには下手に逆らったらダメだな……)」
「おっと、もう呑気なこと言ってられる場合じゃないよ」
その言葉に顔を上げれば、確かに外が騒がしい。俺が到着してから約5分、人攫いのプロにしては行動が遅い。
「ユア」
「んー?あぁ、了解ー」
ちょいちょい、とリサに手を招かれてゆあがてててっと走って行く。何をするのだろうと思いつつついて行けば、2人は二階の窓から外を覗いた。そして大きく息を吸い、
「この中にいる、あんた達が連れてきた人達は全員解放した!どうしてもゆあ達を捕まえたいんなら、かかってくるがいい!」
「武力には武力で対抗させてもらう!死傷者が出ることは覚悟しておけ!アタイはもうあんたらの味方じゃない、殺される覚悟でかかっておいで!」
男の俺から見ても惚れそうなぐらいカッコイイ演説。そしてその挑戦的な言葉通り、倉庫の扉を開け放つ。外には既に数百人の男達がいたが、気迫に押されている。
「さぁ皆、思う存分……やっちゃえ!」
「「おーっ!!」」
掛け声とともに走り出した40名弱の女性達。戸惑った男達のざわめきが情けない悲鳴に変わるまで、1分もかからなかった。
________________
タイトルが考えられなくなったので
1話ごとのセリフや、
一節を引用することにします
「キト、あれか!?」
「そうだ。イトの気配を感じる」
「よし。このまま入るか」
全速力で走って、走って。ようやくたどり着いたのは古びた港。そこに立ち並ぶ倉庫のひとつをしっかりと狙い定め、俺はドアを壊す勢いで体当たり。
バタン!とすごい音がして木製のドアが勢いよく開き、壁にあたって跳ね返ってきた。それを足で止め、とりあえずキトを下ろすと。
「誰だ!」
「来たなぁ、人攫いめ!」
キリキリキリ……と不吉な音。見れば倉庫の2階から竜人族の女性が弓を引いていて。射られちゃたまらんとばかりに、慌てて大声を出した。
「俺達は敵じゃない!というかゆあ、いるんだろ!」
「あーっ、丸君だぁ!」
「あーっ、じゃねぇよ!射られたらどうすんだ!」
「大丈夫だよー。あっ、そっちの子はキトかな?イトは奥にいるよ」
「あぁ、ありがとう」
ゆあと口論している間、周りの女性からなーんだ、とかつまんなーい、とか聞こえたのは気の所為だよな。ゆあと同じく連れ去られた女性達が立てこもっていて超好戦的とか気の所為……だよな?
「ゆあ、これは一体どういう事だよ」
「どういう事って、んー、人さらいの一団の、あっ鴉団って言うんだけどね、その女副長がゆあ達に味方してくれてるんだ」
「なんだい、アタイの事呼んだかい?」
「あっ、リサねぇ!」
奥から出てきた、ゆあがリサねぇと呼んだ人物。美人とか可愛いとかいう言葉は似合わない人だ。たくましい、という言葉がしっくりくる。
それより、俺は別のことが気になるんだよ。倉庫内にいる連れ去られた女性達。その八割が手に手に武器を持ち、人攫い達が突っ込んでくるのを今か今かと待ち構えていることについてだ。
「そんなに気になる?」
「そりゃ」
「ふむふむ」
***少し前***
「とりあえず、皆は逃げとくれ!」
合計50人の女性達が解放され、倉庫の中央でリサが状況説明をした。しかしその締めくくりの言葉を聞いた女性達が顔を顰める。リサに従おうとしたのは数人だけであった。
「何か、不満があるのかい?」
「えぇ。せっかく助けて頂いたのですが、実は私達はラフィリア国の女性のみで構成された騎士団のメンバーなのです」
「つまり、仕事ってこと?」
「はい、潜入捜査です」
「そっかそっか。じゃあリサねぇの指示に従った人は非戦闘員ってことだね?」
素直にリサに従った十数人が、咳き込んでいたりお腹が大きかったりするのを見て言うゆあ。その中にはもちろん、戦いを好まない人もいる。
「そういう事情なら構わない。武器ならその辺に転がってるから、自由に使ってくれ」
「途中でリュカが来るから、それまで耐えればミッションコンプリートだよ!」
にっこり笑って言うゆあにつられて、女性達も笑う。どことなく恐ろしい雰囲気のまま立てこもる準備は着々と進み、わずか数分で整った。
「目指すは敵戦力の殲滅!」
「アタイ達女の恐ろしさ、知らしめてやれ!」
「「おーっ!!」」
視点:一
「……怖いな」
「そう?まぁでも、元々仕事みたいだしいいんじゃない?」
日頃のストレス発散も入ってそうだけど、と付け加えられた言葉に内心恐れおののく。いつもゆあには強く出れないが、笑顔の裏に何気なくある威圧感に負けているからなんだよなぁ……。
「(平和に行くには下手に逆らったらダメだな……)」
「おっと、もう呑気なこと言ってられる場合じゃないよ」
その言葉に顔を上げれば、確かに外が騒がしい。俺が到着してから約5分、人攫いのプロにしては行動が遅い。
「ユア」
「んー?あぁ、了解ー」
ちょいちょい、とリサに手を招かれてゆあがてててっと走って行く。何をするのだろうと思いつつついて行けば、2人は二階の窓から外を覗いた。そして大きく息を吸い、
「この中にいる、あんた達が連れてきた人達は全員解放した!どうしてもゆあ達を捕まえたいんなら、かかってくるがいい!」
「武力には武力で対抗させてもらう!死傷者が出ることは覚悟しておけ!アタイはもうあんたらの味方じゃない、殺される覚悟でかかっておいで!」
男の俺から見ても惚れそうなぐらいカッコイイ演説。そしてその挑戦的な言葉通り、倉庫の扉を開け放つ。外には既に数百人の男達がいたが、気迫に押されている。
「さぁ皆、思う存分……やっちゃえ!」
「「おーっ!!」」
掛け声とともに走り出した40名弱の女性達。戸惑った男達のざわめきが情けない悲鳴に変わるまで、1分もかからなかった。
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タイトルが考えられなくなったので
1話ごとのセリフや、
一節を引用することにします
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