竜王の番は大変です!

月桜姫

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本編

46.リィカと咲夜

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「で、どーなんよ?」

「ど、どうって何が?」

「決まっとるやろ!リュカにぃとどこまでいったん?」

読んでいた本を放り出して迫ってくるリィカに、咲夜は困り顔。リィカの投げた本を拾って机に置きながら、ごくごく小さな声で呟いた。

「……手を繋ぐとこ」

「はぁ!?嘘やろ!」

リィカの叫び声に咲夜がビクリと身を強ばらせる。今現在、咲夜とリィカは会議室の1つでフィルやゆあ達の帰りを待っているところである。

「嘘じゃないよ、本当」

「あ……ありえへん。リュカにぃを前にしてまぁだ手ぇ出しとらんとか」

「だって、何となく怖くて」

「好きなんやったら、怖いも何もあらへんやろー」

というのがまぁ一般論に近いのは咲夜自身、分かってはいる。ただ、人に対して心許しにくい性格に軽い人間不信と、とある出来事のせいで男性恐怖症の咲夜。むしろこの1年で手を繋ぐことを"普通"にしたフィルは凄いのである。

「ならこのリィカ様があんたらの仲を深めたるわ」

「え、いや別に……」

「なら!結婚式までキスも出来んでええん!?」

「け、けっこん……!?」

「ま、まさかとは思うんやけど……プロポーズされとらんとか……?」

「されてないよ?」

逆にどうしてプロポーズなんか、とか思いながら答えた咲夜。その様子に呆れ返ると同時にフィルへの哀れみさえ感じてしまうリィカ。竜人族が番を見つけたなら、1年とたたず結婚するのが普通なのだ。

「っはぁー、あんたらほどほっとけやんペアは初めてやわ」

「そうなの?」

「そうや。番は絶対やからなぁ、裏切るなんて有り得へんし99%の確率で相性もええし。……それにあんたやったら魔力慣らさなあかんからキスぐらい……」

ドサリと椅子に座り脱力するリィカに、今度は咲夜が迫った。咲夜は既に竜心を取り込んでいる為、魔力に慣れれば魔法が使えるようになる、とリィカは伝えているつもりであるが本人がそれを知らないため気付かない。

「魔力に慣れるってなに?」

「(……リュカにぃ、説明せんかったんか)んとな、あんたらは魔力がない世界から来たやろ?やから魔力を一切持ってないし蓄えることも出来やん」

「それで何か問題あるの……?」

「せや。魔力ってな、魔法使うためのエネルギーになるだけとちゃうねん。多すぎたら体調不良起こすし、少なかったら倒れてまう。ユアとハジメに関してはスズランが小細工したらしいけど、あんたはちゃう」

「私は今魔力を全く持ってないから、危ないってこと?」

「んー、まぁそう、やな。で、こっからが肝心。竜人族のリュカにぃの番であるあんたは、リュカにぃの魔力を貰って自分のもんにできるんや」

「う、うん」

「で、魔力を貰っただけやったらあかん。それに慣れて制御する必要があるねん。手っ取り早いのはキスしたりすることや!」

咲夜の鼻に人差し指を突きつけつつ言ったリィカに、咲夜は若干仰け反りながら頷いた。よく分かってはいないが、フィルを拒み続けるのは良くないことだというのは理解している。

「慣れてなかったら魔力に体侵食されて、寿命縮んでまうんやで」

「寿命が……?じゃあ、このまま行ったら」

「ずるずると続いて終わるやろなぁ。人族の寿命は短いさかい、子供ぐらいリュカにぃも欲しいやろなぁ」

これはいけると踏んだリィカの言葉に咲夜がうっと言葉を詰まらせる。人間、寿命を偽って生きることはできない。そして竜人族は人族よりよっぽど長寿である。 

実際のところ、魔力に慣らさなければいけないのは事実。しかし寿命に関しては、リィカが少し嘘をついていた。フィルの竜心を半分取り込んだ時点で咲夜の寿命は伸びている。

「……リィカ。私、フィルと結婚……したい。生き急ぎたくはないけど後で後悔するのはもっと嫌だから」

「その意気や。できるだけ協力したる。一気に距離を詰めれやんのやったら、着実にやればええ」

「着実に、か。今まで通りじゃ……だめだよね」

「当たり前やろ。よし、やると決めたらさっさと動くで。まずは基本、アレをする事からや!」

威勢よく言ったリィカに手を引かれ、別のエリアに引っ張って行かれる咲夜。自分の知らないところでそんな話になっているなど思いもしないフィル。何はともあれ、万が一の事態が起きないことを願うばかりである。
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