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本編
40.竜王は人気者
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ルルカとリィカ、リュイ(フィルの父)と別れ、表に戻ってきた咲夜達。次はいよいよ冒険者ギルドだ、とわくわくする一行の前にスっと割り込み通せんぼをするように並ぶ人達が。
「リュカ様、机の上に積まれた書類には目を通されましたか?」
「リュカ様、シンカワ様のドレスを……」
「リュカ様、」
「リュカ様?」
「リュカ様!」
フィルは人気者である。そして人だけでなく仕事にも好かれていたりする。おかげでフィルはギルドに行く、という予定を木っ端微塵に叩き潰された。もちろん、咲夜もである。
「ゆあと一だけでいってきて?」
「い、いいの?」
「うん。あ、でもお土産忘れないでよ?」
「もちろん!」
咲夜が残る理由はドレスの採寸のため。そしてそのドレスがウェディングドレスであることに気づいているのはゆあだけであったりする。
採寸が終わるまで待ってください、と言われ執務室へ強制連行されたフィル。咲夜の周りにも数人スタンバっているので逃げるという選択は存在しない。
かと言ってゆあと一を巻き込むのも気が引けて(まず一は採寸場に入れない)、咲夜は2人で行ってもらうことにしたのだ。一は待っていたそうな様子だったが、ゆあの一睨みで消える。
「サクカ様、マルマル様、こちらをお持ち下さい!」
「マルヤマです……!」
「し、失礼しました、マルママ様!」
「ヤマ!」
「ヤマヤマ様ですか?」
「マ!ル!ヤ!マ!」
「承知致しました!」
必死に笑いを堪えながら無表情を装っているメイドさん達に向けて小さく親指を立ててみせるゆあ。そのやり取りを見た一が大きなため息をついたのは言うまでもないだろう。
「(ったく、いつ仲良くなったんだよ……)」
「コホン、それではお遊びはここまでにして。リュカ様から我が国の硬貨については……」
「知らないー」
「それでは説明させていただきますね。まず、こちらが金貨、Gです。同じく銀貨、Sと銅貨、Cです。100Cが1S、100Sが1Gです」
「1Gは10万円、1Sが千円、1Cが10円ってところかな?」
「へぇ……」
それでは最低限の、と言われて小さな麻袋を受け取ったゆあ。中には金貨から銅貨までたくさん入っていて、少し揺らせば楽しげに鳴る。
「それじゃあいってらっしゃい、ゆあ、一!」
「いってきまーす!」
「行ってきます」
咲夜ににこやかに見送られ、部屋を出るゆあと一。入口まで案内をしたメイドが、ぺこりと一礼しつつ言う。
「いってらっしゃいませ、サクカ様、マヤルマ様!」
「……誰だよ」
出発早々、げんなりしてしまった一であった。
「リュカ様、机の上に積まれた書類には目を通されましたか?」
「リュカ様、シンカワ様のドレスを……」
「リュカ様、」
「リュカ様?」
「リュカ様!」
フィルは人気者である。そして人だけでなく仕事にも好かれていたりする。おかげでフィルはギルドに行く、という予定を木っ端微塵に叩き潰された。もちろん、咲夜もである。
「ゆあと一だけでいってきて?」
「い、いいの?」
「うん。あ、でもお土産忘れないでよ?」
「もちろん!」
咲夜が残る理由はドレスの採寸のため。そしてそのドレスがウェディングドレスであることに気づいているのはゆあだけであったりする。
採寸が終わるまで待ってください、と言われ執務室へ強制連行されたフィル。咲夜の周りにも数人スタンバっているので逃げるという選択は存在しない。
かと言ってゆあと一を巻き込むのも気が引けて(まず一は採寸場に入れない)、咲夜は2人で行ってもらうことにしたのだ。一は待っていたそうな様子だったが、ゆあの一睨みで消える。
「サクカ様、マルマル様、こちらをお持ち下さい!」
「マルヤマです……!」
「し、失礼しました、マルママ様!」
「ヤマ!」
「ヤマヤマ様ですか?」
「マ!ル!ヤ!マ!」
「承知致しました!」
必死に笑いを堪えながら無表情を装っているメイドさん達に向けて小さく親指を立ててみせるゆあ。そのやり取りを見た一が大きなため息をついたのは言うまでもないだろう。
「(ったく、いつ仲良くなったんだよ……)」
「コホン、それではお遊びはここまでにして。リュカ様から我が国の硬貨については……」
「知らないー」
「それでは説明させていただきますね。まず、こちらが金貨、Gです。同じく銀貨、Sと銅貨、Cです。100Cが1S、100Sが1Gです」
「1Gは10万円、1Sが千円、1Cが10円ってところかな?」
「へぇ……」
それでは最低限の、と言われて小さな麻袋を受け取ったゆあ。中には金貨から銅貨までたくさん入っていて、少し揺らせば楽しげに鳴る。
「それじゃあいってらっしゃい、ゆあ、一!」
「いってきまーす!」
「行ってきます」
咲夜ににこやかに見送られ、部屋を出るゆあと一。入口まで案内をしたメイドが、ぺこりと一礼しつつ言う。
「いってらっしゃいませ、サクカ様、マヤルマ様!」
「……誰だよ」
出発早々、げんなりしてしまった一であった。
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