竜王の番は大変です!

月桜姫

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本編

28.介入者

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「……っ、ぐ」

バチッと。突然、電流が咲夜とフィルの繋いだ手に流れる。ビクリと強ばった咲夜の手の筋肉。力が抜けて離れかけるのを、フィルが必死に支えた。

そしてそこにふっと現れたのは手に雷の魔力を宿しながらニヤニヤと笑う、居ては行けない5人目。

「ウィル!てめぇ、どうやって!」

「どうやってって……あれ、君に言わなかったかな?僕には、神がついて下さっていること」

「っ、おいやめ……っ!」

「る訳ないよ」

フィルの静止の言葉なんて届くはずもなく、ただ無慈悲にその手に宿らせた雷の1部を咲夜に向けるウィル。ショック死しない威力には抑えられているが、それでもすでに咲夜は舌が痺れてしまっている。

「サクヤッ!」

「咲夜!?」

「ごめ……」

フッと気を失った咲夜をフィルが腕に抱え込み、ゆあが必死に咲夜にしがみつく。そこで一が機転を利かしてフィルに手を伸ばすが、それを許すウィルではない。

「何してるの?そんな事……許さないよ」

バチッ!3度目の雷が光り、今度は一に襲いかかる。

「っぐぅ……」

「丸君、まるくんっ!」

「次は君だよ?そうしたら、君たちは永久にさ迷う事になるからね」

咲夜の時とは違い、一撃で意識を沈められた一。ウィルはゆあの恐怖に慄く表情を食い入るように眺め、楽しそうに目を細める。

「ウィル!そんな事をしてお前に何の利がある!」

「あるよ?リュカ、君が苦しんでくれるっていう利が、ね」

「リュカ!ゆあはいいから、丸君を!丸君を!」

「ダメだって。君たちは2人で落ちてもらわなくちゃ」

フィルの右手には石。これがないと全員が問答無用で空間に落ちてしまう。左腕では咲夜を抱えていて、気を失った人を片腕の力だけで支えるには無理がある。それも、3人。

絶望的な状況の中、ただ1人ウィルだけが楽しんでいて。もはや自分の負けなど有り得ないと思っている。そしてその自身のもと、ゆあに雷を差し向けた。

「やめろぉおおおお!」

「やだ」

バチィッ!

フィルの叫び声を聞き、その表情を見て。この状況を自分が作り出したということに酔い、優越に浸るウィル。その眼下でフィルの必死に伸ばした左手が宙を掻く。

「く……そ、がぁぁああああ!!」

「おー怖い。じゃあね、リュカ。その表情、最高だよ」

ウィルがそう言い残して去るのとすれ違いで、白い光が溢れた。虚無の白の中、異様な暖かな光。そよ光を、フィルは目を細めて見ていた。希望の、光を。

そしてそこからほっとした表情で顔を覗かせ、ゆあと一の手を取る人物を。

「よかった。間に合った……!」
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