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本編
19.灯台もと暗し?
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「まずは華里とやらの所へ行くか。アイツが1番魔力に当てられてたしな、多分ウィルと頻繁に会ってるんだろう」
そういうなり直ぐに飛び出して行こうとするフィルを必死に宥めつつ、咲夜はイオ達にお礼を言う。
お礼なんていいよー、というイオだったが、そのきらきらした瞳が一の持つコンビニ袋を見つめていた。
「これ、よければどうぞ。弁当が3人分と、菓子とかも入ってるんで」
「えー、悪いなぁー。でも、ありがとっ!」
たかがコンビニ弁当と菓子なのに、それを貰って極上の笑みを見せたイオ。実は1人を決めている一でも思わず赤くなるくらいには殺傷能力があった。
「気をつけて行くのじゃ。もし向こうに行くことになればまたここに来るがよい」
「おう、俺達はいつでもここにいるからな」
「うんうん。あ、そうだ。リュカ、出来るだけ早く慣れさせてあげなよー?」
「……あぁ、分かっている」
イオのアドバイスに頷いたフィルがチラリと咲夜を見やる。その様子をみたイオが何かを察してイタズラっぽく笑うとフィルの背中を軽く叩いた。
そのやりとりを見て咲夜が首をかしげていたのは、言うまでもないだろう。
*** ***
さて、イオ達と咲夜が別れてから1時間後。咲夜は華里の自宅前にいて、インターホンを鳴らしていた。
「……はい」
「あ、すみません。神川と申します。華里さんと同じ大学で、少し話があって伺いました」
「あぁ、玲香のご友人の方ですね?少しお待ち下さい、今呼んできますので」
「おねがいします」
ピッと音を立ててインターホンが切れ、少ししてから華里がおずおずと玄関から出てきた。そして咲夜、ゆあ、一、フィルと順番に視線を動かしてからその綺麗な顔が歪む。
「っ、神川、さんにラフィリアさん……」
蚊の鳴くような声で呟いた華里は、フラフラっと咲夜に近寄りその足元にくず折れた。そしてさめざめと泣き出すものだから、咲夜も慌てる。
「え、ちょっと、華里さん?」
「あぁっ、ごめんなさい、神川さん……本当にごめんなさい!……謝ってすむ話ではないのは知っています。でも、私、どうしてあんな愚かなことを……!」
咲夜にすがり、懺悔する華里。しかし謝られても咲夜が彼女を本当の意味で許す訳にはいかない。いくら華里が魔力に当てられていたとしても、だ。
「とにかく、泣き止んでください。落ち着いてからちゃんと話しましょう?」
「……はい、す、すみません」
華里らしくなく、服の袖で涙を拭ってゆあに貰ったティッシュで鼻をかむ。そうして華里が落ち着いてから、場所を近くのカフェに移動する。
「……それで、私はどうなるのでしょうか?もちろん、刑罰を受けても仕方の無い……いえ、そうされるべきだと思っています」
「まぁ、普通だったらそうなるよね」
「でも事情が事情だからなぁ、警察が関わるのは避けたい」
「……だから、ゆあ達が貴方に望むのはたった2つね。まず、リュカに今後近づかないこと。あとは、情報提供」
咲夜達から聞かされた内容に、華里がぽかんと呆ける。それだけで、本当にいいのかと言いたげな表情である。しかし咲夜達はそれを無視して、
「異論はないね?」
「はい、もちろんです。というより本当にそれだけで……?」
「それは、いいの。それより情報提供を。……ウィリアムっていう人の存在と、居場所。知ってる?」
「あ、はい。最近とても仲良くさせてもらっていますが……」
「住所、知ってる?」
ビンゴ。興奮が見て取れる咲夜達の様子に首をかしげながら、華里が口にした住所。それは、咲夜の家の目の前であった。
そういうなり直ぐに飛び出して行こうとするフィルを必死に宥めつつ、咲夜はイオ達にお礼を言う。
お礼なんていいよー、というイオだったが、そのきらきらした瞳が一の持つコンビニ袋を見つめていた。
「これ、よければどうぞ。弁当が3人分と、菓子とかも入ってるんで」
「えー、悪いなぁー。でも、ありがとっ!」
たかがコンビニ弁当と菓子なのに、それを貰って極上の笑みを見せたイオ。実は1人を決めている一でも思わず赤くなるくらいには殺傷能力があった。
「気をつけて行くのじゃ。もし向こうに行くことになればまたここに来るがよい」
「おう、俺達はいつでもここにいるからな」
「うんうん。あ、そうだ。リュカ、出来るだけ早く慣れさせてあげなよー?」
「……あぁ、分かっている」
イオのアドバイスに頷いたフィルがチラリと咲夜を見やる。その様子をみたイオが何かを察してイタズラっぽく笑うとフィルの背中を軽く叩いた。
そのやりとりを見て咲夜が首をかしげていたのは、言うまでもないだろう。
*** ***
さて、イオ達と咲夜が別れてから1時間後。咲夜は華里の自宅前にいて、インターホンを鳴らしていた。
「……はい」
「あ、すみません。神川と申します。華里さんと同じ大学で、少し話があって伺いました」
「あぁ、玲香のご友人の方ですね?少しお待ち下さい、今呼んできますので」
「おねがいします」
ピッと音を立ててインターホンが切れ、少ししてから華里がおずおずと玄関から出てきた。そして咲夜、ゆあ、一、フィルと順番に視線を動かしてからその綺麗な顔が歪む。
「っ、神川、さんにラフィリアさん……」
蚊の鳴くような声で呟いた華里は、フラフラっと咲夜に近寄りその足元にくず折れた。そしてさめざめと泣き出すものだから、咲夜も慌てる。
「え、ちょっと、華里さん?」
「あぁっ、ごめんなさい、神川さん……本当にごめんなさい!……謝ってすむ話ではないのは知っています。でも、私、どうしてあんな愚かなことを……!」
咲夜にすがり、懺悔する華里。しかし謝られても咲夜が彼女を本当の意味で許す訳にはいかない。いくら華里が魔力に当てられていたとしても、だ。
「とにかく、泣き止んでください。落ち着いてからちゃんと話しましょう?」
「……はい、す、すみません」
華里らしくなく、服の袖で涙を拭ってゆあに貰ったティッシュで鼻をかむ。そうして華里が落ち着いてから、場所を近くのカフェに移動する。
「……それで、私はどうなるのでしょうか?もちろん、刑罰を受けても仕方の無い……いえ、そうされるべきだと思っています」
「まぁ、普通だったらそうなるよね」
「でも事情が事情だからなぁ、警察が関わるのは避けたい」
「……だから、ゆあ達が貴方に望むのはたった2つね。まず、リュカに今後近づかないこと。あとは、情報提供」
咲夜達から聞かされた内容に、華里がぽかんと呆ける。それだけで、本当にいいのかと言いたげな表情である。しかし咲夜達はそれを無視して、
「異論はないね?」
「はい、もちろんです。というより本当にそれだけで……?」
「それは、いいの。それより情報提供を。……ウィリアムっていう人の存在と、居場所。知ってる?」
「あ、はい。最近とても仲良くさせてもらっていますが……」
「住所、知ってる?」
ビンゴ。興奮が見て取れる咲夜達の様子に首をかしげながら、華里が口にした住所。それは、咲夜の家の目の前であった。
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