竜王の番は大変です!

月桜姫

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本編

15.本題

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「それじゃ、本題にうつろっか」

いつの間にやってきたのか、咲夜の後ろに立っていたイオがひょいとトートバッグを持ち上げる。それから無造作に手を突っ込み、鷲掴みにしてフィルを取り出した。

「え、ちょ……」

「ったくもう、どういう使い方したらこの短期間で魔力切れなんておこせるの?」

「本当にのう、情けない奴じゃ。これだけ使っておきながら番1人守れぬとは」

竜王も堕ちたものだね、とか話しながらイオとティオは何かの準備をはじめる。正確にいうと金色に輝く光のつぶを集め、凝縮して、集め、を繰り返している。

「これぐらいでいいかな?」

「少し多いぐらいがちょうどいいじゃろう」

最終的に大きめの飴玉サイズになったものを、ティオが咲夜に渡す。それから、それを食べさせるのは番の役目じゃ、と言ってイオと2人してニヤニヤして咲夜を見守る。

「あの、」

「ん?……あぁ、竜体のままではやりにくいと」

「そうだね、今人にしてあげるよ!」

「え、いや」

本当に私がするの?という咲夜が言いたかったことは言葉にならず、イオによってフィルが人になる。その上でキラキラした期待の目で見られては断るものも断れない。

「あんまりジロジロ見ないでくださいよ……」

かっこよすぎるフィルの口を開けて飴玉を入れる。それだけの作業に緊張してガチガチになる咲夜。それでもなんとか任務を遂行すると、生暖かい視線が送られた。

「……う。あれ、俺……?」

「フィル!」

咲夜が視線に耐えること数十秒、フィルが唐突に目を覚まして起き上がる。対して一気に脱力した咲夜が座り込み、上半身を起こしたフィルと目線が合う。その後ろでイオがゆあにとある提案をしているのには気づかない。

「……あっ」

そしてノリのいいゆあのこと、イオの提案を快く受け入れて咲夜を後ろから少し押す。それから自分の役目は終わった、と再び咲夜とフィルをニヤニヤと見守る。

「おっと」

「え、」

ゆあに押されて体制を崩した咲夜はフィルを向かって倒れ込み、そしてしっかりと抱きとめられる。途端に真っ赤になった咲夜が慌ててフィルの抱擁から逃れようとするも、離してもらえるはずもなく。

「もうちょい……もうちょっとだけ、このままで居させてくれ……」

「う、ん」

フィルに一生のお願いを告げられるように、甘えるように言われ、拒絶できない咲夜。おずおずとフィルの背中に腕を回しかけたところで、ゆあ達の存在を思い出したのか素早く引っ込められる。

「わあっ、らぶらぶだ!」

「ゆあ、ナイス!」

「たまにはこういうものを酒の摘みにするのもいいものじゃ」

「(よ、よくないよくない!ちょっともう3人ともイタズラがすぎるって!というかとにかくそんな目で見ないでー!!)」

そんな咲夜の心の叫びはゆあ達にサラリと無視され。フィルがようやく満足して咲夜を解放する頃には、それこそゆでダコのようになっていたのだった。
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