竜王の番は大変です!

月桜姫

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本編

13.神社の住人

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「えっ、と……。とにかく、中で主がお待ちです!」

「ご案内します!あ、靴はここで脱いでください!」

「……あっ、う、うん」

ハッと我に返ったゆあが慌てて返事をし、少年2人は元気よく歩き出す。手を繋いだ仲睦まじい双子の男の子……なのだが、一人は目が中央に1つ、もう一人はおでこに3つ目の目がぱっちり開いている。

「あの、2人の名前は?」

「ヒトメと」

「ミツメです!」

「それじゃ、君らの主っていうのは誰なんだ?」

「主は、主です!」

「今はししょーと食事中です!」

やっぱり元気に答えた双子は唐突にと立ち止まると、どうぞと言って障子を開けた。思わず顔を見合わせた3人は、覚悟を決めて部屋に入る。

「おっ、来たようじゃの」

「やっほー!入って来ないかも、ってちょっとだけ不安になっちゃったよもー!」

「……あー、煩くてすまん。とりあえず座ってくれ」
「えっ、あ、御丁寧にどうも……」

部屋の中には少女が2人と男性が1人。人外がいるであろうと予想していた咲夜も、少女の一人を見て驚く。黒髪から覗く白い狐耳、床に広がる九本の尻尾はふわふわ。

「えっと、こんにちは。神川咲夜です」

「朔夏ゆあでーす!」

「丸山一です」

「我はティオ、見ての通り九尾じゃ。この屋敷の主じゃて」

「イオだよ!ティオの幼なじみ……みたいな?」

「で、俺は海。日本人で、コイツらと違って人間だ」

とりあえず挨拶はするべき、と咲夜達が挨拶をすると、じゃあ我らも、と挨拶が返ってきた。九尾のティオはともかくどうみても普通の少女であるイオがどうして人間じゃないのかと咲夜が聞こうとして、すぐに止めた。

「ちょっとカイ、私だって日本人だし!人間だし!」

「お前は戸籍ないだろ、イオ。それにお前何年生きてんだ」

「乙女に年聞くとか!非常識人!自分だって50超えたーって嘆いてたくせに!」

ぎゃんぎゃん言い争うイオとカイに、我関せずといった様子で酒を飲みだすティオ。その自由奔放かつ不思議な空気感に交じれずただ呆気にとられる2人。ゆあ?もちろん交じってますが。

「ええっ、海って50歳超えてるの!?見た目20代前半なのに?」

「あぁ、コイツらにしてやられたんだよ、ホント。でもな、俺なんてまだまだだぞ?イオなんかこの見た目で軽く2世紀は……」

「ちょっと黙ってよ、カイ。ねーゆあ、酷いと思わない?来る人来る人全員に私の年言うんだよ!?」

「え……それは。口、ガムテープとかで貼らないと」

「だよねー!」

「いやそこ結託するなて」

ゆあとイオが結託し、煩さが5割増しに。普段からイオとティオのお世話役であることは目に見えて分かるカイにとっては、いい迷惑だろう。

そんなカイのヘルプに向かったのはもちろん一で、あっという間に取り込まれ4人グループの出来上がり。

一もカイも、自分の立場を迷惑に思いながらも楽しんでいるところがすごい。そんな風に一人人間観察をしていた咲夜が、離れた所にいるティオに手招きされる。

「イオ殿もカイも、あぁ見えてすごく気が付く人達なのじゃ。まだ小童のお主には到底真似出来んじゃろ?」

ティオにそう言われて初めて、咲夜がティオと2人で話すためにイオ達がグループを作ったのだと気がついた。そして思わずぽかんとしてしまった咲夜だが、すぐに姿勢を正してティオに向き直る。

「本題に入るより先に、ここに辿り着いたことを歓迎せねばな」 

「いえ、お酒は」

「いいんじゃ、飲め飲め。ヒトのつくる酒とは違うからの」

「あ、ありがとうございます」

「うむ。……では改めて。よく来た、竜王の番よ」

「へっ……?」

ティオの、何気なく言われた言葉に驚いた咲夜。王、という言葉が気にかかりすぎて、一気に煽った美味しいはずの酒を全く味わえなかったのは仕方ないことだろう。
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