竜王の番は大変です!

月桜姫

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本編

11.ご紹介

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「んーっ!やっぱり丸君最っ高!」

「おう、ありがとな」

風呂に入り、体はぽかぽか気分も上々。そんなゆあと咲夜は、一の作ったトマトリゾットに、舌づつみをうっていた。

フィルは洗濯カゴにつめた毛布の上に移動させられ、そこで目を覚ます気配もなく丸まっている。

「で、咲夜。あれはなんだ」

「あれって?」 

「あのどう見てもファンタジーな生き物だよ!」

「丸君、あの子リュカだよ」

自分の分はとうに食べ終えたゆあが、咲夜のリゾットを横からパクリと食べて言った。その言葉に一は固まり、次いで目を瞬かせる。

「いやでもリュカは人じゃ……?」

「そうだよ。だってフィル竜人族だもん。竜体の時の方が魔力循環がしやすくて無駄が省けるからって、寝る時は丸まってるよ。意味はわかんないけどね」

「丸君、ゆあのリゾットおかわり!」

「……え、あ、あぁ」

ゆあのおかわりの分を運びかけた所で停止していた一が再び起動し、ゆあとの前に皿を置く。もう1つを空いた席において、自分も腰掛けるなり口を開いた。

「それじゃ、あの異様なまでの咲夜への執着は……」
「私がフィルの番だから」

「そうか……。生態とか、物語とほぼおなじだったり?」

「うんうん」

そこからはそれぞれリゾットを黙々と食べ、食べ終わる頃には一もショックから立ち直っていた。今は興味津々にフィルをつついている。つやつやすべすべで切れ味抜群な鱗が面白いらしい。

「にしても起きないな。……ッハ、まさか精巧に作ったおもちゃで俺を騙そうと?」 

「いやそれはないよ。でも、おかしいな。さすがに寝すぎだし」

「何か言われてないの?」

「うーん……」

「よくあるのだったら、魔力切れとか」

怪我とも病気とも疲れとも無縁なフィルが、ほぼ昏睡状態。ゆあの何気ない例えに理由を考える咲夜の記憶が揺さぶられる。そういえばいつだったか、魔力に関してフィルと話した事があったな……と。

「えっとね、言ってたよ、魔力切れのこと。この世界には魔素がないから魔力が切れたらそこで終わり。私達は魔力が無いのが当たり前だけど、フィルは慣れてないからもし切れかけたら本能的に眠ってしまう……って」

「魔素ってあれか、魔力の源の」

「よく知ってるね、丸君。……それで、今のリュカがその状態だったら?」

「……」

ゆあの言葉が意味すること。それは、フィルがこの先眠ったままになり、餓死してしまう可能性が高い……ということ。

「おい咲夜、さすがに対処法聞いてるよな?」

「うん。ある場所に行って、人に会えって」

「場所?人?」

「そう。えっと確か……」


記憶の糸を懸命に手繰り寄せながら、咲夜は携帯の地図アプリを立ち上げてある一点を指し示した。

「ここ。ここに行って女の人を探せって」

「それはまた抽象的だな」

「うーん、わりと近いし、もし明日までリュカが起きなかったら行ってみる?」

「明日は大学も休みだしな」

「うん……ありがとう、ゆあ、一」

話がまとまり、結局その日は2人とも咲夜の家に泊まることになった。一が問答無用でソファにされた事を講義しようとするも、しょんぼりした咲夜を前に何か言うことは出来なかった。
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