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本編
10.一
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「……丸君、行くよ」
「あ、あぁ」
同じ学部の奴らが騒いでいた噂を聞くなりガラリとキャラが変わったゆあ。今までも何度か咲夜心配モードのゆあに付き合ったことがあるが、今回は何かが違った。
「ゆあ、あんなのただの噂だぞ?第1、あのリュカが女を返り討ちなんて」
「あのリュカだからこそ、だよ。旧倉庫急ぐよ」
確信を持ったゆあの言葉に疑問を感じるが、そんな事を聞き返せる雰囲気じゃない。だから俺は黙ってゆあについて行くことを選んだ。
*** ***
「なんだ、これ」
旧倉庫に着いた俺は、まず目に飛び込んできたものに愕然とした。鉄製の重い扉が、ぐにゃりと歪に歪んだ状態で捨てられていたのだ。あたかも扉を開けるのが億劫で、つかんで引き剥がしましたと言うように。
「これ誰が……」
「十中八九、リュカだね。とりあえず入ろ、リュカが来たんなら咲夜は多分もう家にいるけど」
「はぁ……?」
いやありえないだろ、と心の中で否定した俺だが、ゆあの言う通り咲夜の姿はそこに無く。ただ引きちぎられたと見えるロープと空のバケツ、床に倒れた華里とぶちまけられた氷水が何があったかを物語っている。
「よし、咲夜の家に行く……よ」
呆ける俺を無視して旧倉庫を後にし、キビキビと行動を開始しようとするゆあ。しかし、その肩をガッチリと掴んだ者がいた。
「おい朔夏。お前、次の授業抜けたら単位はないと……言っただろう?」
「でも咲夜が」
「神川は放っておけ。あいつはお前と違って真面目な生徒だからな。丸山、お前はこのじゃじゃ馬を何とかしろ」
「「はい……」」
聞く耳持たずとはこのことだよな、ホント。よりにもよって、熱血中学教師みたいなこいつに捕まるとは。……でも流石に講師の言うことを無視できない。
「行くのは夕方になりそうだな」
「だね……」
さすがのゆあも講師にはかなわず、結局咲夜の家へ行けたのは予想通り夕方になってからだった。
*** ***
「ったく、いくら信用してるからって男のいる時に風呂に入るとか、私室に入って布団片付けろとか、リゾットを作れだとか……」
信用されすぎるのも悩みものだなぁとため息をつき、咲夜の部屋にはいる。何となくお邪魔しますと言ってしまうのは仕方ないだろう。因みに、リゾットは手早く作っておいた。
「うわ、キレー」
部屋を見て思わずそんな感想がもれる。それくらい、咲夜の部屋は整理整頓されていた。カジュアルに飾りつけてあって、いかにも咲夜らしい。
「じゃなくてだ、そう、布団とシーツだったよな。……うわまじで濡れてる。何であの状態で寝てたんだ?」
ぐしょっとした布団を丸めて、湿ったシーツをはがす。少し重い気もしたが、まぁ水を含んでいるからだと納得して洗濯機にシーツを放り込む。
「いやでもやっぱり布団の中に何かあるな。咲夜のやつ、ぬいぐるみでもだいて寝て……」
バサバサと布団をふったら転がり落ちたものは、ぬいぐるみなんかじゃなくて。触ったら暖かく、かすかに息もしているちゃんとした生き物で。思わず、大絶叫してしまった。
「さくやぁぁぁあ!!これは!!なんだよっ!?」
その時風呂場から笑い声が二人分、聞こえたのは気の所為ではあるまい……。
「あ、あぁ」
同じ学部の奴らが騒いでいた噂を聞くなりガラリとキャラが変わったゆあ。今までも何度か咲夜心配モードのゆあに付き合ったことがあるが、今回は何かが違った。
「ゆあ、あんなのただの噂だぞ?第1、あのリュカが女を返り討ちなんて」
「あのリュカだからこそ、だよ。旧倉庫急ぐよ」
確信を持ったゆあの言葉に疑問を感じるが、そんな事を聞き返せる雰囲気じゃない。だから俺は黙ってゆあについて行くことを選んだ。
*** ***
「なんだ、これ」
旧倉庫に着いた俺は、まず目に飛び込んできたものに愕然とした。鉄製の重い扉が、ぐにゃりと歪に歪んだ状態で捨てられていたのだ。あたかも扉を開けるのが億劫で、つかんで引き剥がしましたと言うように。
「これ誰が……」
「十中八九、リュカだね。とりあえず入ろ、リュカが来たんなら咲夜は多分もう家にいるけど」
「はぁ……?」
いやありえないだろ、と心の中で否定した俺だが、ゆあの言う通り咲夜の姿はそこに無く。ただ引きちぎられたと見えるロープと空のバケツ、床に倒れた華里とぶちまけられた氷水が何があったかを物語っている。
「よし、咲夜の家に行く……よ」
呆ける俺を無視して旧倉庫を後にし、キビキビと行動を開始しようとするゆあ。しかし、その肩をガッチリと掴んだ者がいた。
「おい朔夏。お前、次の授業抜けたら単位はないと……言っただろう?」
「でも咲夜が」
「神川は放っておけ。あいつはお前と違って真面目な生徒だからな。丸山、お前はこのじゃじゃ馬を何とかしろ」
「「はい……」」
聞く耳持たずとはこのことだよな、ホント。よりにもよって、熱血中学教師みたいなこいつに捕まるとは。……でも流石に講師の言うことを無視できない。
「行くのは夕方になりそうだな」
「だね……」
さすがのゆあも講師にはかなわず、結局咲夜の家へ行けたのは予想通り夕方になってからだった。
*** ***
「ったく、いくら信用してるからって男のいる時に風呂に入るとか、私室に入って布団片付けろとか、リゾットを作れだとか……」
信用されすぎるのも悩みものだなぁとため息をつき、咲夜の部屋にはいる。何となくお邪魔しますと言ってしまうのは仕方ないだろう。因みに、リゾットは手早く作っておいた。
「うわ、キレー」
部屋を見て思わずそんな感想がもれる。それくらい、咲夜の部屋は整理整頓されていた。カジュアルに飾りつけてあって、いかにも咲夜らしい。
「じゃなくてだ、そう、布団とシーツだったよな。……うわまじで濡れてる。何であの状態で寝てたんだ?」
ぐしょっとした布団を丸めて、湿ったシーツをはがす。少し重い気もしたが、まぁ水を含んでいるからだと納得して洗濯機にシーツを放り込む。
「いやでもやっぱり布団の中に何かあるな。咲夜のやつ、ぬいぐるみでもだいて寝て……」
バサバサと布団をふったら転がり落ちたものは、ぬいぐるみなんかじゃなくて。触ったら暖かく、かすかに息もしているちゃんとした生き物で。思わず、大絶叫してしまった。
「さくやぁぁぁあ!!これは!!なんだよっ!?」
その時風呂場から笑い声が二人分、聞こえたのは気の所為ではあるまい……。
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