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本編
9.ゆあの看病
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「う、ん……」
その日の夕方、咲夜はドアをガンガン叩き自分の名を叫ぶゆあと一に起こされた。ぼんやりと寝ぼけ眼を擦りながら起きた咲夜は、布団の上にぐしょぐしょに濡れたまま眠っていたことに愕然とする。
「咲夜、咲夜!いるんでしょ?開けて!」
「おい開けろよ咲夜!」
「(ゆあ、一……私、なんで家に?)」
自分が家に帰ってきた経緯を必死に思い出そうとするが、何分気を失っていたので思い出せるはずもなく。諦めて玄関へ向かった。
ガチャリ、とドアを開けた瞬間咲夜に飛びつきそのまま押し倒したゆあと、あからさまに安堵した表情の一。予想していなかった事態に咲夜が目を白黒させる間もなく、ゆあが再び叫んだ。
「咲夜!びしょ濡れじゃない!」
「え、あ、うん」
「え、あ、うん、じゃないよ!咲夜は寒がりで体弱いんだから、体暖めないとでしょ!今の今まで何してたの!?」
「寝てたよ?」
「びしょ濡れで?……あーもう!」
まだ事態についていけず、ぼんやりしている咲夜をゆあがキッと鋭い目つきで見る。昔から、咲夜に何かあればガラリとキャラが変わって頼りになるのがゆあだ。
「丸君はあったかリゾット、作っておいて。あと咲夜の部屋に行って布団とシーツの回収!ゆあは咲夜とお風呂に入ってくるから」
「わかった」
咲夜の手を取り、立たせながらテキパキと指示を飛ばすゆあに、一も素直に従う。それからゆあは乾いた服をタンスから取り出して風呂場へ向かい、咲夜の濡れた服を洗濯機にぽいぽい放り込む。
「とりあえずお風呂わくまでシャワーしよっか。あーもう、冷え切っているじゃん……」
「うん。心配かけてごめんね?……ゆあはどうして来てくれたの?」
「そりゃあ噂になってたもの。それに、咲夜が音信不通だったし」
「噂って?」
お互いに背中を流しながら、咲夜はゆあに質問を重ねる。ショックで記憶が少々混濁してしまっているのだ。
「嫉妬に狂った女達がとうとう咲夜を襲って、怒ったリュカに返り討ちにあったっていう噂」
どこから漏れたのか、なんとも正確な噂である。
「フィルが、返り討ちにした?」
「そう。竜人族に人がかなう訳ないのにね。っと、咲夜の髪は綺麗だから痛めちゃダメだよ」
そこでゆあが咲夜の髪を手ですいて、シャンプーを手に取る。そして冷水をかぶってそのままで、少しキシキシいう髪を丁寧に洗ってゆく。
「それで、ゆあは……?」
「噂を丸呑みにした訳じゃないけどとりあえず旧体育倉庫に行ったの。そしたら本当に華里が倒れてて、咲夜の荷物が転がってるんだもん。
リュカもいないし、病院に連れて行くなんてリュカが考えるはずないもの、家にいると思ったの」
「なんで病院行かないって?」
「そりゃあ竜人族だもん。咲夜はファンタジーあんまり読まないから知らないだろうけど、それでもあの人に常識が通じないのは分かるでしょ?」
「うん」
頭をマッサージするように心地いいシャンプーをしてくれて、リンスまでしてくれたゆあ。彼女の口からたんたんと紡がれる言葉に、咲夜はすごいとしか言えない。
「そういえばリュカ、どこにいるの?」
「竜体で布団の中に丸まってた……は、ず」
「待って、丸君知ってるっけ?」
「知らないと思う……」
そう言って顔を見合わせた2人の耳に、驚愕の悲鳴が届く。なんてタイムリーな、と思うと同時にもうどうしようもないからと笑う咲夜とゆあだった。
その日の夕方、咲夜はドアをガンガン叩き自分の名を叫ぶゆあと一に起こされた。ぼんやりと寝ぼけ眼を擦りながら起きた咲夜は、布団の上にぐしょぐしょに濡れたまま眠っていたことに愕然とする。
「咲夜、咲夜!いるんでしょ?開けて!」
「おい開けろよ咲夜!」
「(ゆあ、一……私、なんで家に?)」
自分が家に帰ってきた経緯を必死に思い出そうとするが、何分気を失っていたので思い出せるはずもなく。諦めて玄関へ向かった。
ガチャリ、とドアを開けた瞬間咲夜に飛びつきそのまま押し倒したゆあと、あからさまに安堵した表情の一。予想していなかった事態に咲夜が目を白黒させる間もなく、ゆあが再び叫んだ。
「咲夜!びしょ濡れじゃない!」
「え、あ、うん」
「え、あ、うん、じゃないよ!咲夜は寒がりで体弱いんだから、体暖めないとでしょ!今の今まで何してたの!?」
「寝てたよ?」
「びしょ濡れで?……あーもう!」
まだ事態についていけず、ぼんやりしている咲夜をゆあがキッと鋭い目つきで見る。昔から、咲夜に何かあればガラリとキャラが変わって頼りになるのがゆあだ。
「丸君はあったかリゾット、作っておいて。あと咲夜の部屋に行って布団とシーツの回収!ゆあは咲夜とお風呂に入ってくるから」
「わかった」
咲夜の手を取り、立たせながらテキパキと指示を飛ばすゆあに、一も素直に従う。それからゆあは乾いた服をタンスから取り出して風呂場へ向かい、咲夜の濡れた服を洗濯機にぽいぽい放り込む。
「とりあえずお風呂わくまでシャワーしよっか。あーもう、冷え切っているじゃん……」
「うん。心配かけてごめんね?……ゆあはどうして来てくれたの?」
「そりゃあ噂になってたもの。それに、咲夜が音信不通だったし」
「噂って?」
お互いに背中を流しながら、咲夜はゆあに質問を重ねる。ショックで記憶が少々混濁してしまっているのだ。
「嫉妬に狂った女達がとうとう咲夜を襲って、怒ったリュカに返り討ちにあったっていう噂」
どこから漏れたのか、なんとも正確な噂である。
「フィルが、返り討ちにした?」
「そう。竜人族に人がかなう訳ないのにね。っと、咲夜の髪は綺麗だから痛めちゃダメだよ」
そこでゆあが咲夜の髪を手ですいて、シャンプーを手に取る。そして冷水をかぶってそのままで、少しキシキシいう髪を丁寧に洗ってゆく。
「それで、ゆあは……?」
「噂を丸呑みにした訳じゃないけどとりあえず旧体育倉庫に行ったの。そしたら本当に華里が倒れてて、咲夜の荷物が転がってるんだもん。
リュカもいないし、病院に連れて行くなんてリュカが考えるはずないもの、家にいると思ったの」
「なんで病院行かないって?」
「そりゃあ竜人族だもん。咲夜はファンタジーあんまり読まないから知らないだろうけど、それでもあの人に常識が通じないのは分かるでしょ?」
「うん」
頭をマッサージするように心地いいシャンプーをしてくれて、リンスまでしてくれたゆあ。彼女の口からたんたんと紡がれる言葉に、咲夜はすごいとしか言えない。
「そういえばリュカ、どこにいるの?」
「竜体で布団の中に丸まってた……は、ず」
「待って、丸君知ってるっけ?」
「知らないと思う……」
そう言って顔を見合わせた2人の耳に、驚愕の悲鳴が届く。なんてタイムリーな、と思うと同時にもうどうしようもないからと笑う咲夜とゆあだった。
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