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本編
6.フィルの心配事
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「(サクヤは、大丈夫だろうか)」
先程咲夜と別れてから、フィルはそれしか考えていなかった。チャンスとばかりに話しかけてくる女達の声など、一切耳に入っていない。
「そういえば、ラフィリア様のこと、神川さんはフィル、と呼んでいますよね?」
「それがどうした」
「どうしてフィル、なんですか?」
咲夜の名前が出てきて思わず耳を傾けてしまったフィル。しかしすぐに食いついてきた女達に嫌気が差し、イライラと足を早まる。
「神川さんが呼ぶなら、私たちもフィルと呼んでいいですよね?」
いくら竜人族を知らないとは言え、フィルはリュカ・ラフィリアとしか名乗っていない。それはつまり呼ばせる気がないという事なのだが、そんなのおかまいなしの取り巻き達。
その態度に、流石のフィルもキレた。今まで咲夜の迷惑になるから、咲夜が困るからと抑えていた竜人特有の威圧感の制御が切れる。
「番名を何度も呼ぶな。……あんまり調子にのってんじゃねぇぞ、人の子風情が」
普段より数段低い声と、野生の獣に会ったような威圧感。人族なら確定で、下手な竜人族でも泣きが入るレベルだ。
これで少しは静かになるだろうとふんだフィルだが、実際に怯えているのは取り巻きの端にいる人のみ。
「何怖い顔してるのー?」
「お前ら……何者だ」
経験上有り得ない事態に困惑したフィルは、ふと女の目を見て、咲夜と同じことに気がついた。そして、その原因も。
「(……魔力の残り香。この世界に魔力を使う者は俺だけのはず。という事は他の誰かが、"向こう"から付いてきた……?)」
「フィル様ー?」
「とりあえず黙ってろ」
女達の理性やら本当の感情やらを封じ込めている魔術を打ち消し、ついでに全員眠らせる。そしてバタバタとその場に倒れてゆく女達を無感情に見つめ、フィルは咲夜の元へと来た道を戻る。
「(サクヤの身が、危ない)」
魔力の元となる魔素がないこの世界では、1度も使った魔力は元に戻らない。そしてフィルは人型になっているにも微量の魔力を使っており、無くなっては危険だ。
しかし、そんな事より咲夜の方がもちろん大切で。魔力が無くなれば昏睡状態に陥ることなど頭にない。そして咲夜に残っている自分の魔力を探し出す。
「あ、ラフィリア様……っ!」
咲夜と別れたすぐ近くで、咲夜の持っていた資料をかき集める女が数人。とりあえず先程と同じ処理をし、もはや周囲には目もくれず走り出したフィル。
「っ、やばいな」
ガリガリとなくなってゆく自分の魔力と、肌にうっすらと出始めた鱗を見て忌々し気に呟いた。本能的に、必要な魔力量が少なくて済む竜体に戻ろうとしているのだ。
「(気休めにしかなんねぇが、回復薬飲んどくか)」
どこからともなく取り出した紫の瓶の中身を一気にあおった。しかしフィルの魔力の絶対量が多いせいで、本当に気休めにしかならない。それでも、うっすらと見えていた鱗が消えた。
「頼むから、サクヤを助けるまでは持ってくれよ……!」
先程咲夜と別れてから、フィルはそれしか考えていなかった。チャンスとばかりに話しかけてくる女達の声など、一切耳に入っていない。
「そういえば、ラフィリア様のこと、神川さんはフィル、と呼んでいますよね?」
「それがどうした」
「どうしてフィル、なんですか?」
咲夜の名前が出てきて思わず耳を傾けてしまったフィル。しかしすぐに食いついてきた女達に嫌気が差し、イライラと足を早まる。
「神川さんが呼ぶなら、私たちもフィルと呼んでいいですよね?」
いくら竜人族を知らないとは言え、フィルはリュカ・ラフィリアとしか名乗っていない。それはつまり呼ばせる気がないという事なのだが、そんなのおかまいなしの取り巻き達。
その態度に、流石のフィルもキレた。今まで咲夜の迷惑になるから、咲夜が困るからと抑えていた竜人特有の威圧感の制御が切れる。
「番名を何度も呼ぶな。……あんまり調子にのってんじゃねぇぞ、人の子風情が」
普段より数段低い声と、野生の獣に会ったような威圧感。人族なら確定で、下手な竜人族でも泣きが入るレベルだ。
これで少しは静かになるだろうとふんだフィルだが、実際に怯えているのは取り巻きの端にいる人のみ。
「何怖い顔してるのー?」
「お前ら……何者だ」
経験上有り得ない事態に困惑したフィルは、ふと女の目を見て、咲夜と同じことに気がついた。そして、その原因も。
「(……魔力の残り香。この世界に魔力を使う者は俺だけのはず。という事は他の誰かが、"向こう"から付いてきた……?)」
「フィル様ー?」
「とりあえず黙ってろ」
女達の理性やら本当の感情やらを封じ込めている魔術を打ち消し、ついでに全員眠らせる。そしてバタバタとその場に倒れてゆく女達を無感情に見つめ、フィルは咲夜の元へと来た道を戻る。
「(サクヤの身が、危ない)」
魔力の元となる魔素がないこの世界では、1度も使った魔力は元に戻らない。そしてフィルは人型になっているにも微量の魔力を使っており、無くなっては危険だ。
しかし、そんな事より咲夜の方がもちろん大切で。魔力が無くなれば昏睡状態に陥ることなど頭にない。そして咲夜に残っている自分の魔力を探し出す。
「あ、ラフィリア様……っ!」
咲夜と別れたすぐ近くで、咲夜の持っていた資料をかき集める女が数人。とりあえず先程と同じ処理をし、もはや周囲には目もくれず走り出したフィル。
「っ、やばいな」
ガリガリとなくなってゆく自分の魔力と、肌にうっすらと出始めた鱗を見て忌々し気に呟いた。本能的に、必要な魔力量が少なくて済む竜体に戻ろうとしているのだ。
「(気休めにしかなんねぇが、回復薬飲んどくか)」
どこからともなく取り出した紫の瓶の中身を一気にあおった。しかしフィルの魔力の絶対量が多いせいで、本当に気休めにしかならない。それでも、うっすらと見えていた鱗が消えた。
「頼むから、サクヤを助けるまでは持ってくれよ……!」
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