溢れる愛は、どうやって?

甘栗

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参 愛の形は人それぞれ

ツーリングと感じる体温

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♢(世羅視点)
二日目の朝。方見と笠井は旅館の部屋で過ごすと言ったので、二人の雰囲気を潰さないためにも、俺と愛音は、二人でツーリングをすることにした。
ただ、バイクが1台しか借りられなかったので、俺が前で、愛音が後ろに乗ることになった。

「ブーン!ブーン!」

バイクから、けたたましい音が聞こえる。
なんだか、暴走族になったみたいだ。
……というか!愛音が後ろからギュッとしてきているのが、可愛い過ぎる!
愛音から伝わってくる体温とか、甘い吐息とか、キャラメルのような香りとかで、もう……なんていうか……幸せ……。

俺は、ついとろけたような顔になるのを必死に堪えて、バイクを走らせた。



♡(愛音視点)
「うぅ……世羅っち……まだ、山頂に着かないのです?」

「あともうちょっとだ!だから、ここで吐くのはやめてくれ!……というか、なんで吐きそうになるまで、朝から牛乳飲んでいるんだよ!……全く……」

そう、僕は身長を伸ばしたいと思って、朝から牛乳をがぶがぶと飲んだのが原因で、バイクによる乗り物酔いをしてしまったのだ。

「ごめんなさい……なの……です……」

「あぁ……もう……喋るな!……その……吐かれると困るから」

世羅っちのデレが垣間見えた気がするのですが、
僕はとりあえず、軽く頷いたのです。

「……」

「……」

「ブーン!ブーン!」

バイクの音が、ただ、ただ、僕達の気まずい空気の中、響いたのです。



♢(世羅視点)
山頂に着いた瞬間、愛音はすぐに木の影に走っていて、モザイクをかけたくなるようなものをビニール袋に出した。

「愛音、大丈夫か……?」

俺は愛音に優しく声をかけた。
すると愛音は、少し疲れたような顔をして、

「大丈夫……なのです……」

と応えながら、足をフラフラさせていた。

「本当に大丈夫か……?」

俺は、心配なので愛音を支えにいった。
……その時だった。
まるで風により散る桜の花びらのように、愛音が俺の方に倒れてきた。
咄嗟のことで反応が少し遅れ、俺は少し転けそうになった。

「って、おいっ!愛音!愛音!」

……愛音は、返事をしなかった。

「くそ……乗り物酔いで倒れるなんて、多分、前代未聞だぞ……まぁ、仕方ない……バイクはとりあえず電話で取りに来てもらって、愛音をおんぶして下山するか……」

俺は愛音の手を肩にかけて、愛音を背中に乗せた。

「おいしょっと……うぅ……ちょっと重い……でも、愛音のためだしな……頑張るか……」

俺はのそのそと歩きながら、愛音をおんぶして、下山したのだった。
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