12 / 19
12.
しおりを挟む
午前の授業の終わるチャイムと共に俺はダッシュした。
勿論、姫神の席へ。
「久しぶり姫神。」
「ど、どうしたの突然?昨日もあったよね?」
迂闊だった。俺にとってはかなり前の出来事だったし嬉しさで頭が回らなかった。
「そうだったな。ははははっ!」
不審に思われない程度に誤魔化した。
「それより、姫神。今日は一緒に昼飯食べないか?」
普段、俺はそれなりに付き合いのあった他の友達と食べていて、姫神も女子の友達と昼飯を食べていたので今日は思い切って誘ってみた。
「全然いいよー。」
とグッジョブのサインで答えてくれた。
彼女は普段一緒に食べている友達に、今日は如月と食べてくるね。と伝えてくれていた。
俺も自分の友達に謝りつつ、二人は校舎の外にある学生専用の小さなカフェのテーブルに移動した。
高校生になり、昔のように接する事を俺はもうできないだろう。そう勝手に思い込んでいたが、彼女はこうして俺の誘いに嫌そうな顔一つせずついて来てくれた。お互い距離を置いていると思い込んでいたのは本当は俺だけだったのかもしれない。
「疾が昼ご飯誘ってくれるのなんて珍しいね。」
ホットコーヒーのマドラーで一つ入れたコーヒーフレッシュをかき混ぜつつそう言った。
「さっき、急に誘って悪かった。」
確かに珍しいだろう。実際、あの事件が無いまま時が進んでいたら僕は恐らく彼女を皆のいる前で誘ったりはしないと思う。
だが、僕はもう迷いたくない。後悔はしたくない。姫神を助けたい。それらの強い思いが今の僕を支えてくれている。
そして…リリィだ。
人間は失ってから気づく。と母親はよく言っていたのを思い出し今では、その通りだなとただ頷くばかりである。
「疾、なんか変なものでも食べた?なんだかいつもとちょっと雰囲気違う感じがする。」
「あれ?駄目だったかな?なら直すよ。」
「いやいや!いい!むしろ今の方が私は好きだよ!昔みたいにちゃんと笑ってるもん。」
ああ。俺は今笑っている。前の僕では考えられないだろう。
僕の過去はもう変える事は出来ないが、寄り添ってくれたリリィのおかげで少し克服できたのもあるかもしれない。
ただ、一番の理由は彼女がこうして生きている事だ。昔とは別人のように変わってしまった僕を見ても幼馴染としてちゃんと接してくれた姫神が生きているから俺は心の底から笑える。それは僕にとって充分過ぎる褒美だ。
だが、忘れては行けない。
僕は姫神が死を防ぐ為にここにいる。
リリィから聞いた手順を頭の中でリピートした。
勿論、姫神の席へ。
「久しぶり姫神。」
「ど、どうしたの突然?昨日もあったよね?」
迂闊だった。俺にとってはかなり前の出来事だったし嬉しさで頭が回らなかった。
「そうだったな。ははははっ!」
不審に思われない程度に誤魔化した。
「それより、姫神。今日は一緒に昼飯食べないか?」
普段、俺はそれなりに付き合いのあった他の友達と食べていて、姫神も女子の友達と昼飯を食べていたので今日は思い切って誘ってみた。
「全然いいよー。」
とグッジョブのサインで答えてくれた。
彼女は普段一緒に食べている友達に、今日は如月と食べてくるね。と伝えてくれていた。
俺も自分の友達に謝りつつ、二人は校舎の外にある学生専用の小さなカフェのテーブルに移動した。
高校生になり、昔のように接する事を俺はもうできないだろう。そう勝手に思い込んでいたが、彼女はこうして俺の誘いに嫌そうな顔一つせずついて来てくれた。お互い距離を置いていると思い込んでいたのは本当は俺だけだったのかもしれない。
「疾が昼ご飯誘ってくれるのなんて珍しいね。」
ホットコーヒーのマドラーで一つ入れたコーヒーフレッシュをかき混ぜつつそう言った。
「さっき、急に誘って悪かった。」
確かに珍しいだろう。実際、あの事件が無いまま時が進んでいたら僕は恐らく彼女を皆のいる前で誘ったりはしないと思う。
だが、僕はもう迷いたくない。後悔はしたくない。姫神を助けたい。それらの強い思いが今の僕を支えてくれている。
そして…リリィだ。
人間は失ってから気づく。と母親はよく言っていたのを思い出し今では、その通りだなとただ頷くばかりである。
「疾、なんか変なものでも食べた?なんだかいつもとちょっと雰囲気違う感じがする。」
「あれ?駄目だったかな?なら直すよ。」
「いやいや!いい!むしろ今の方が私は好きだよ!昔みたいにちゃんと笑ってるもん。」
ああ。俺は今笑っている。前の僕では考えられないだろう。
僕の過去はもう変える事は出来ないが、寄り添ってくれたリリィのおかげで少し克服できたのもあるかもしれない。
ただ、一番の理由は彼女がこうして生きている事だ。昔とは別人のように変わってしまった僕を見ても幼馴染としてちゃんと接してくれた姫神が生きているから俺は心の底から笑える。それは僕にとって充分過ぎる褒美だ。
だが、忘れては行けない。
僕は姫神が死を防ぐ為にここにいる。
リリィから聞いた手順を頭の中でリピートした。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追い出された万能職に新しい人生が始まりました
東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」
その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。
『万能職』は冒険者の最底辺職だ。
冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。
『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。
口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。
要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。
その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
魔法少女マヂカ
武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
マヂカは先の大戦で死力を尽くして戦ったが、破れて七十数年の休眠に入った。
やっと蘇って都立日暮里高校の二年B組に潜り込むマヂカ。今度は普通の人生を願ってやまない。
本人たちは普通と思っている、ちょっと変わった人々に関わっては事件に巻き込まれ、やがてマヂカは抜き差しならない戦いに巻き込まれていく。
マヂカの戦いは人類の未来をも変える……かもしれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる