永久の独奏曲

不知火黒刃

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午前の授業の終わるチャイムと共に俺はダッシュした。
勿論、姫神の席へ。
「久しぶり姫神。」
「ど、どうしたの突然?昨日もあったよね?」
迂闊だった。俺にとってはかなり前の出来事だったし嬉しさで頭が回らなかった。
「そうだったな。ははははっ!」
不審に思われない程度に誤魔化した。
「それより、姫神。今日は一緒に昼飯食べないか?」
普段、俺はそれなりに付き合いのあった他の友達と食べていて、姫神も女子の友達と昼飯を食べていたので今日は思い切って誘ってみた。
「全然いいよー。」
とグッジョブのサインで答えてくれた。
彼女は普段一緒に食べている友達に、今日は如月と食べてくるね。と伝えてくれていた。
俺も自分の友達に謝りつつ、二人は校舎の外にある学生専用の小さなカフェのテーブルに移動した。
高校生になり、昔のように接する事を俺はもうできないだろう。そう勝手に思い込んでいたが、彼女はこうして俺の誘いに嫌そうな顔一つせずついて来てくれた。お互い距離を置いていると思い込んでいたのは本当は俺だけだったのかもしれない。
「疾が昼ご飯誘ってくれるのなんて珍しいね。」
ホットコーヒーのマドラーで一つ入れたコーヒーフレッシュをかき混ぜつつそう言った。
「さっき、急に誘って悪かった。」
確かに珍しいだろう。実際、あの事件が無いまま時が進んでいたら僕は恐らく彼女を皆のいる前で誘ったりはしないと思う。
だが、僕はもう迷いたくない。後悔はしたくない。姫神を助けたい。それらの強い思いが今の僕を支えてくれている。
そして…リリィだ。
人間は失ってから気づく。と母親はよく言っていたのを思い出し今では、その通りだなとただ頷くばかりである。
「疾、なんか変なものでも食べた?なんだかいつもとちょっと雰囲気違う感じがする。」
「あれ?駄目だったかな?なら直すよ。」
「いやいや!いい!むしろ今の方が私は好きだよ!昔みたいにちゃんと笑ってるもん。」
ああ。俺は今笑っている。前の僕では考えられないだろう。
僕の過去はもう変える事は出来ないが、寄り添ってくれたリリィのおかげで少し克服できたのもあるかもしれない。
ただ、一番の理由は彼女がこうして生きている事だ。昔とは別人のように変わってしまった僕を見ても幼馴染としてちゃんと接してくれた姫神が生きているから俺は心の底から笑える。それは僕にとって充分過ぎる褒美だ。
だが、忘れては行けない。
僕は姫神が死を防ぐ為にここにいる。
リリィから聞いた手順を頭の中でリピートした。
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