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サマーパーティーと学園長推薦 side J
しおりを挟む新歓パーティーの効果で、僕と彼女は両想いだと周りに認知された。それでも彼女に興味を持つ男が後を絶たないから、気が抜けない。
本人に興味がないようだから、ある意味安心ではあるのだけど……。
それよりも3年生になったので、大学進学を希望する僕は、そろそろ本格的に試験対策を始めないといけない。
選考試験は、学力試験と希望する研究をテーマにした論文だ。論文を評価をするのは、研究テーマに関係する教授が主にするらしいので、教授の情報は不可欠だ。
僕の希望は経営学。なかでも他国の文化や技術を事業展開に生かすことについてだ。留学することも考えてるけど、まずは大学入学を目指したい。
王立学園は貴族しか通ってないけど、王立大学は平民や留学生も多い。研究機関でもある大学は優秀な人材を集まってくる場なので、人脈作りという意味でも魅力的だ。
そんなわけで、今年もサマーパーティーを企画することにした。
貴族だけなら茶会もいいのだけど、今回は大学に通う平民にも来てほしい。そのため堅苦しい形式から外れたものをと考えた。
場所は、彼女と以前行ったカフェにする。あの後予想通り『ケーキの木』は評判となり、ますます人気店になっているけど、僕のためならばと半日だけ貸切ることができた。
王立大学に通うのは男性が多いから、女性の同伴も歓迎すると、みんな喜んで来てくれた。
パーティー会場となったカフェは、さながら『ケーキの森』となった。飾り付けは、彼女が言っていた『子供の頃に憧れた宝石箱』をイメージしている。
ペールトーンの風船と硝子のビーズを、店中に高さや大きさを変えて、めいいっぱい飾りつけた。短時間でできたし、若い女性達にはやはり大好評だった。
パーティーは大成功で、恋人と仲良くなれた男性達からは喜んで試験のアドバイスをもらうことができた。
その後は勉強を僕なりに頑張った。得た情報はちゃんと使わないと意味ないしね。
秋が過ぎる頃のある日。
「はい!参ります!」
突然、クラスに彼女の声が響いた。周りの女子生徒達は笑って、「きっと素敵な知らせだわ」って言っている。どうやら学園長に呼ばれたようだ。
この時期の学園長からの用件と言ったら決まってる。僕は少し羨ましく思いながら、彼女と友人達のやりとりを眺めていた。
彼女は立ち上がり廊下に出ようとするが、ふと振りかえって僕を見た。
彼女と目があい、どきんと胸が鳴る。その瞳が、期待と緊張で混乱して見えたので、「大丈夫だよ」と言う気持ちを込めて、軽く手を振った。
しばらくして戻ってきた彼女は、待ち構えていた友人達にあっという間に囲まれた。隣にいたエイデンは、巻き込まれて困惑顔だ。一緒にいるということは、あいつもそうなのだろう。それでもエイデンはいつも通りのしかめっ面で、さっさと席についてしまった。
気がつけば、彼女を友人達が抱きしめてる。いいな……。
「貴女を心からの尊敬するわ。ずっと努力してるのを見てきたから、貴女の夢がかなって本当に嬉しい。おめでとう」
その言葉、僕が言いたかった……。
彼女の目から綺麗な涙が溢れだす。友人達はみな困った笑顔で、優しく涙を拭いたり、頭を撫でてあげたりしている。美しい光景だ。
僕がしたかったのに…………。
しばらくそうしてると彼女が落ち着き、友人達もホッとしたように離れていく。
僕は今さらながら彼女の側に行き、「おめでとう」と控えめに言ってみた。
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