上 下
20 / 58

2度目の新歓パーティー準備 side A

しおりを挟む

 新歓パーティーの後、この忙しさがずっと続くのではと内心恐々としていたけど、あんがい穏やかなものとなった。生徒会が関わるイベントがないときは、週に1、2回お茶会感覚で集まり、その他は適当な時間に雑務をこなせば良かった。
 お陰で友人達と変わらず一緒に過ごせた。


 そしてあっという間に、あの卒業パーティー準備の時期になった。

 次の生徒会役員は第三王子と、宰相を務める侯爵家嫡男、騎士団長の次男の方々が予定している。まだ入学していないので、卒業する先輩方もパーティー準備に携わってくれた。

 問題は新歓パーティーだ。どうするのよ……と思ってたら、春休み前に、第三王子殿下御一行様が生徒会室にやって来た。
 慌てて立ち上がりカーテシーをする。まだ入学前なので。

 第三王子は、癖のあるクルンとした銀髪に紫の瞳のまだあどけなさの残る美少年だ。婚約者である公爵令嬢に優雅に挨拶したあと、私たちに向き直る。

「入学前だが生徒会の皆に挨拶に来た。王族ゆえ会長となるが、経験不足ため皆の手助けが必要になるだろう。私もその役に相応しくなるよう励むため、よろしく頼む」

 美少年のキリリとした顔。眼福。公爵令嬢はお隣で満足そうに微笑んでいる。

「それから私達のために、生徒会主催の新歓パーティーの手が足りていないと聞いた。今日は補佐となる者を王宮から連れてきた」

 補佐!私は歓喜しそうになるのを堪えて、第三王子の後に立つ方に目を向ける。癖のある金髪の二十代の男性。

「今は王宮事務官をしてますが、学園に通う頃は生徒会にいたので、力になれると思います。よろしく」

 にっこりと微笑んだ。天の助けとはこの人のことだ!と心の中で叫んだ。

 天の助け様、改めセス様のお陰で、新歓パーティーの準備はさくさくっと進んだ。一年前あんなに大変だったのは、自分たちの能力不足であったことを思い知った。けど右往左往しながらも努力したのは無駄ではないはずだ…………たぶん。

 お陰で私にとって初めての春休みを迎えることができた。


 今日は彼とお出掛けだ。2年生になってから気軽に誘ってくれるようになったと思う。嬉しい。
 迎えに来てくれた彼と並んで歩いていると、突然愁い顔になった。

「何かあったの?」

「……1年生の子爵令嬢に新歓パーティーのエスコートを頼まれたんだ」

 胸がチクリと痛む。けど私が何かを言える立場ではないのよね……。

「勿論断ったんだけど、泣かれてしまって申し訳ない気分になったよ」

 彼が悲しげに微笑む。そんな顔でもキラキラしている。

「勇気を出したのに断られるのは、悲しいですね……。けど、断る方もツライですよね」

 想いを拒絶されることを想像すると怖くなって、鳩尾の辺りで両手をギュッと握る。

「そうだね……。だけど、気持ちに応えるつもりが無いのに申し出を受けるわけにはいかないよ。……僕にはずっとエスコートしたい女性がいるんだし」

 さらりと放たれた言葉に思わず表情が抜け落ちた。エスコートしたい女性……。急に胸が苦しくなる。一瞬で頭の中が不安と期待が交じってごちゃごちゃになった。
 それでも気持ちを覆い隠すように笑顔を作る。

 彼の綺麗な青い瞳がこちらを見ている。

「ずっと、君をエスコートをしたいと思ってたんだ。けど君には生徒会の役目があるよね。……だからせめて、君にドレスを贈らせて」

 頭の中で鐘が鳴った。咄嗟に声が出ない。

「……受け取ってくれる?」

 彼が小首を傾げて言う。その瞳は不安そうに揺れている。私は何とか声を振り絞った。

「喜んで」

 私の言葉に、彼は今までで一番の笑顔を見せてくれた。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈 
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。

久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」  煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。  その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。  だったら良いでしょう。  私が綺麗に断罪して魅せますわ!  令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア 姉の婚約者は第三王子 お茶会をすると一緒に来てと言われる アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる ある日姉が父に言った。 アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね? バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

処理中です...