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プロローグ
しおりを挟む「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
私が望んだ通り、ね……。確かに半年前に婚約の解消を申し出ていたわ。それを頑なに拒み続けていたのは貴方でしょう?
男が俯くと金色の髪がさらりと揺れ、長い睫毛に縁取られた瞳は切なげに伏せられてもなお、青空のようにキラキラ輝いている。子供の頃はさぞかし天使のようだと持て囃されたことだろう。知らないけど。
汚れの無い存在を象徴するような見た目のこの男の中身が醜悪である事を確信して、そっと溜息をつく。
……ほんとに屑だわ。
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