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11話

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11話

俺の元に来たクレアは一切俺と視線を合わせること無く気まずそうに服を渡して来た。

「・・・ごめんなさい。私は村に残ります。」
と彼女は言いながら、やけに重い布袋を隠しながら押し付けるように渡してきた。

チラリと見えた布袋には相応の硬貨が入っているようだった。

なるほど・・・。
コレは手切れ金ってことか?
クレアは気が付いていないだろうが、
俺は俺とクレアを観察している気配を感知能力で察知していた。

帰宅したクレアに何があったのかは分からないが
状況が変わったのは間違い無い。
やり切れない気持ちは確実にあるが、
彼女の人生だし、一時の快楽に身を任せる程愚かではなかっただけだな!
と思い込むと、貰える物は貰い最低限の言葉を交わし立ち去った。

だが、俺の感知能力が届く距離まで
彼女は俺に視線を送っていたようだった。
クレアを観察している奴等に変な想いを抱かせないといいんだがなぁ・・・。

暫く森を進み、森が深くなって来たところで
貰った服に着替え、持ち物を確認した。
幸いサイズは問題無かった。
これで村民その1と言っても問題ないだろう。

ポケットに手を突っ込んで歩き始めようとしたが、
何か入っている。

慌てて確認すると、クレアからの手紙だった。

・・・なるほどな。
内容を要約すると、
帰宅早々クレアは村長の息子に見初められ、
婚約を強制され、断る事が出来なかった様だ。
そこで、俺との事情セックス事情の結末孕んでいる可能性については、
絶対に秘密にして欲しいとのこと。
もし出来ていたら、自分達の子供として育てる事が書いてあった。

女って奴はどこの世界でも狡いもんだなーと思いながら、憂さ晴らしも兼ねて
恐らく俺達の様子を観察していた奴に送り込まれたであろう刺客を一瞬で処理した。
勿論貰った服に返り血一滴たりとも付いていない。
肉塊になったモノから
たまたま破壊されていなかった装備を
むしり取り、冒険者っぽい装備に身を固めることに成功した。
ちょっと力を入れて殴り過ぎた様だ。
次からは気を付けないとな。

残念ながら?雌は居なかったので安心して処理出来た。
放置しておけば、森に住まうモノ達が処理してくれるだろう。
人間の肉は嗜好品の様だしな。
仮にアンデッド化したとしても、
俺の知った事じゃない。

クレアからの手紙には、ここから一番近い街への行き方と熱烈な愛の言葉とクレアの名前が書いてあった。

後半になればなる程文字が震えており、最後の名前の所が滲んでいたのは彼女の涙だったのだろうか?
それとも・・・?

考えだしてしまうときりがないので、
俺は取りあえずクレアの手紙に書かれていた街へ行くことにした。



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