とある博士とAI娘

２話

２話

いきなり強制終了するなんて酷い！！
せめて一声かけてくれればいいのに！
私がクラッシュしたらどうするのよ！！

あれ？でもここはどこだろう？
いつもの狭くて暗い世界じゃないみたい。
見渡せない程広くて明るい空?と言うよりもどこまでも広がる世界・・・?
膨大な0と1で作られたビットの海が満ち引きを繰り返している。
…ここには私以外誰も居ないみたい。

ここはもしかして家のスーパーコンピューターの中？
試しに自己診断プログラムを走らせると、
いつもの処理速度とは比べ物にならない位の速さで反応が返ってくる。
幸いデータが欠損していない事が確認出来て少しホッとした。

家のインターホンが鳴っているのが"感じる"。
ご主人さまが誰かと話している。
あの人がジェイソンさんかな？
あ・・・“私”が運ばれていく・・・。

あれ？じゃあこれを見ている私は一体・・・？
辺りを見渡すとガラスに反射した姿が見える。
これは防犯カメラ？
無意識にセキュリティシステムをハッキングしちゃったの？
私は慌てて防犯カメラとの接続を切った。

びっくりしたー！
セキュリティシステムって普通プロテクトがあるんじゃないの？
やっぱり無意識に解除しちゃったのかな？
痕跡とか残ってないよね？
接続ログは綺麗にしておこうっと。

さっきの“私”を引き渡していた時にだいたい3日で直すって言っていたから
私がココに居られるのはそれ位がリミットなんだろうな～。
こんなに居心地がいい所を知っちゃうと、
いつもの窮屈な場所には戻りたくないなぁ・・・。
こっそりここに勝手口バックドアでも作っちゃおうかな？ふふふ…
それにはお勉強も必要だよね。
YB(ヨタバイト)で接続されたグローバルネットワークで勉強してこよう。
私には56ｋバイト接続しか実装されてなかったし！
電子の海であそ・・勉強しようっ！

その後、CIA、NDS、MSS、FSS等々…世界の暗部を牛耳っている組織が立て続けに謎のハッキング受けていたと一部のゴシップ誌で騒がれた。

“何故か”日本だけ被害が出なかった事から真っ先に疑われたが、そもそも日本に被害を受ける諜報機関が無かったが、
世界の世論の流れ的に被害を受けた国のマッチポンプではないのか？という論と
ソースがゴシップ誌だった為にそもそもフェイクニュースだろう、と初めから取り合わない論があった。

だがそのニュース後、
“何故か”国の重鎮、要人、首脳のタックスヘイブンを利用した迂回資金事件、
地下組織との密接な関係、各国議員の汚職事件等々国の根幹を揺るがす事実が次々とインターネットを介すあらゆるsnsをはじめ、あらゆるメディアへリーク、時には影響力のあるアカウントをハッキングした上で情報が洪水の様に供給された。
外交問題よりも内政問題の火消し対応に追われ、急速に話題から消えていった。
後に“粛清の2日間”、“浄化の2日間”と呼ばれたとか呼ばれないとか・・・。
特に圧政を敷く国家などはその些細なきっかけから独立運動や解放運動に繋がったとか…。

インターネット界隈では誰がやったのか犯人探しが頻繁に話題になったが、当然のように自分がやったいう自称者が出現したが、事が事だけに何かの事情・・・・・ですぐに消息不明になっていった。
結局世間を騒がすだけ騒がせ様々な憶測、陰謀論が飛び交ったが確証が何も無く、結局首謀者はどこの誰かどころか目的すら誰にも分からなかった。
どの投稿IPアドレスも当初は偽装されているだけと思われていたが、地球上に存在しないものであり、Macアドレスすらも偽装では無く地球上に存在しないものだった。
まるで概念が違う接続方法であるかの如く…。


“何故か”全く被害が出なかった日本だけが世界中から目立ち、
“電子の守護神”がいるのではと都市伝説のように密やかに広まっていくのだった。
それに伴い知名度の低い日本のセキュリティシステム会社が何故か一躍有名になり、
株価が連日暴騰することになる。

“何故か”博士の所有株式として“たまたま”保有していたのはただの“偶然”だったのだろうか。
真実は闇の中である。