【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒

文字の大きさ
上 下
1 / 11

1話 全てを奪われた日

しおりを挟む
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」


リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。
その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。
当然、注目は私達に向く。
ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた--


「私はシファナと共にありたい。」

「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」


泣きたい気持ちをぐっと堪え、私はパーティー会場を後にした。
憐れみの目や、くすくすと笑う声に構わず、足早に去る。


(私からどれだけ奪えば、気が済むの……?)


妹から奪われる事に、私は慣れてしまっていた。
もう、5年間も続いているのだから…。


私が2歳の時、妹シファナは生まれた。
私は薄紫の髪に水色の目で、顔立ちも整っていたので美少女と昔は言われていた。
しかし、シファナはもっと美しかった。
金髪碧眼。
誰もが見惚れるような美少女だったのだ。

私が10歳でシファナが8歳の時、街を歩く金髪碧眼の少女がいると噂になった。
私など空気で、シファナに注目が集まった。
それだけならば、私も気にしなかった。
しかし、問題は家内で起きた。


「シファナ、欲しいものがあったら言ってくれ。何でも買ってやるからな。」

「ええ。遠慮せずに言うのよ、シファナ。」

「うん!私ね、可愛いくてきれいなおよう服がほしい!」

「まぁ!分かったわ。貴女に似合う、とびきり可愛い服を買ってあげる!」

「そうだな。髪留めもシファナに合うものを買ってやろう!」

「さぁ、行きましょう!」

「うん!」


シファナは私をちらりと見ると、知らないふりをして出かけて行った。
シファナが3歳の時から、両親の態度は違うものになっていった。
「金髪に碧眼。絶対に美女に育つわ!」と言い、私の存在は薄れていった。
そしてこの噂をきっかけに、両親のシファナへの甘やかしはエスカレートする。

家でも、私は空気だった。
周りから注目されているからと、シファナを着飾る。
私は放置され、買い物へ行く時もシファナだけを連れて行く。
そんな事が1年続いた時、シファナが私の部屋へと入って来た。


「お姉様、久しぶりですわね。」

「……。」


ずっと同じ場所で暮らしていたにも関わらず、シファナはそう言った。
まるで私など忘れていたと言わんばかりに。
憐れみのような目で、私を見てくる。
しかし、そこに同情というものはなかった。


「お姉様、そこの首飾りきれい!ほしいですわ!」

「だめよ。これは大切な物なの。お友達からいただいたのよ?」

「ほしい!!」

「だめなものはだめ。でもこれはどう?貴女に似合うと思うのだけれど…。」


私は友人からの貰い物を、絶対に渡したくはなかった。
だからこそ、違う物を提案した。
しかし、


「うえぇぇえん!」

「あ、ちょっと、泣かないで。お願いだから!」

「何事だ!?」

「サリーエ!貴女、シファナに何をしたの!?」

「私は何もしていませんわ。」

「なら何故シファナが泣いている!」

「シファナ、どうしたの?」

「お姉様が…っぐ……首飾り、くれないって…っ。お父様と……お母様…はっ…くれる……のに…ぐすっ……っ…。」


最悪な事態になってしまった。
こうなると当然……


「サリーエ、シファナにその首飾りをあげなさい。」

「ですが…これは友人からいただいた、大切な首飾りで……。」

「そんな事はどうでもいい!さっさと首飾りをシファナに渡せ!」


怒鳴られた私は、これ以上の抵抗は無意味だと思い、渋々シファナに首飾りを手渡した。
するとすぐに機嫌がなおり、笑顔になる。


「ありがとう、お姉様!」

「サリーエ、貴女がすぐにあげていれば良いのよ。シファナ、お礼が言えて偉いわねぇ!」

「えへへ!」


私は絶望満ちた顔をしていた。
部屋から出て行くシファナは、私を見て笑っていた。
それ以降、5日に1回は私の部屋へ来てアクセサリーを奪っていった。
奪うアクセサリーが無くなると、今度は服を。
その次は学園で使う筆記用具を……。
ありとあらゆるものを奪われた。



そして今日、婚約者も奪われてしまった。
8歳の頃にお茶会で出会い、婚約をした人。
私が16歳になってひと月。
ガイディアス様との婚約は破棄された。
ガイディアス様だけは、奪われたくなかった。
大公爵家のご子息であり、私の初恋の人……。
そんなお方の隣で、嬉しそうに笑うシファナ。
初めて、シファナに対して怒りが込み上げきたが、どうせ何を言おうが意味が無いと思い、心を落ち着かせた…。
仕返しをする気は無い。
シファナをあんな風に育てたのは両親なのだから。
彼女も悪いと言えば悪いが、責めるつもりも無かった。


「きっといつか、3人に不幸な事が起こるのでしょうね…。」


悪い事をすれば、必ず自分にも返ってくる--
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

強欲な妹が姉の全てを奪おうと思ったら全てを失った話

桃瀬さら
恋愛
幼い頃、母が言った。 「よく見ていなさい。将来、全て貴方の物になるのよ」 母の言葉は本当だった。姉の周りから人はいなくなり、みんな私に優しくしてくれる。 何不自由ない生活、宝石、ドレスを手に入れた。惨めな姉に残ったのは婚約者だけ。 私は姉の全てを奪いたかった。 それなのに、どうして私はこんな目にあっているの? 姉の全てを奪うつもりが全てを失った妹の話。

「お姉様ばかりずるいわ!」と言って私の物を奪っていく妹と「お姉さんなんだから我慢しなさい!」が口癖の両親がお祖父様の逆鱗に触れ破滅しました

まほりろ
恋愛
【完結済み】 妹はいつも「お姉様ばかりずるいわ!」と言って私の物を奪っていく。 誕生日プレゼントも、生誕祭のプレゼントも、お祖父様が外国に行ったときのお土産も、学園で首席合格しときに貰った万年筆も……全て妹に奪われた。 両親は妹ばかり可愛がり「お姉さんなんだから我慢しなさい!」「お前には妹への思いやりがないのか!」と言って私を叱る。 「もうすぐお姉様の十六歳の誕生日ね。成人のお祝いだから、みんな今までよりも高価な物をプレゼントして下さるはずよね? 私、新しい髪飾りとブローチとイヤリングとネックレスが欲しかったの!」 誕生日の一カ月前からこれでは、当日が思いやられます。 「ビアンカはお姉さんなんだから当然妹ののミアにプレゼントを譲るよな?」 「お姉さんなんだから、可愛い妹のミアのお願いを聞いてあげるわよね?」 両親は妹が私の物を奪っていくことを黙認している、いえ黙認どころか肯定していました。 私は妹に絶対に奪われないプレゼントを思いついた、贈った人も贈られた人も幸せになれる物。その上、妹と両親に一泡吹かせられる物、こんな素敵な贈り物他にはないわ! そうして迎えた誕生日当日、妹は私が頂いたプレゼントを見て地団駄を踏んで悔しがるのでした。 全8話、約14500文字、完結済み。 ※妹と両親はヒロインの敵です、祖父と幼馴染はヒロインの味方です。 ※妹ざまぁ・両親ざまぁ要素有り、ハッピーエンド。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 他サイトにも投稿してます。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 2021/07/17、18時、HOTランキング1位、総合ランキング1位、恋愛ランキング1位に入りました。応援して下さった皆様ありがとうございます!

婚約破棄したので、元の自分に戻ります

しあ
恋愛
この国の王子の誕生日パーティで、私の婚約者であるショーン=ブリガルドは見知らぬ女の子をパートナーにしていた。 そして、ショーンはこう言った。 「可愛げのないお前が悪いんだから!お前みたいな地味で不細工なやつと結婚なんて悪夢だ!今すぐ婚約を破棄してくれ!」 王子の誕生日パーティで何してるんだ…。と呆れるけど、こんな大勢の前で婚約破棄を要求してくれてありがとうございます。 今すぐ婚約破棄して本来の自分の姿に戻ります!

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール
恋愛
両親に虐げられ 姉に虐げられ 妹に虐げられ そして婚約者にも虐げられ 公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。 虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。 それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。 けれど彼らは知らない、誰も知らない。 彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を── そして今日も、彼女はひっそりと。 ざまあするのです。 そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか? ===== シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。 細かいことはあまり気にせずお読み下さい。 多分ハッピーエンド。 多分主人公だけはハッピーエンド。 あとは……

あなたの破滅のはじまり

nanahi
恋愛
家同士の契約で結婚した私。夫は男爵令嬢を愛人にし、私の事は放ったらかし。でも我慢も今日まで。あなたとの婚姻契約は今日で終わるのですから。 え?離縁をやめる?今更何を慌てているのです?契約条件に目を通していなかったんですか? あなたを待っているのは破滅ですよ。

〖完結〗残念ですが、お義姉様はこの侯爵家を継ぐことは出来ません。

藍川みいな
恋愛
五年間婚約していたジョゼフ様に、学園の中庭に呼び出され婚約破棄を告げられた。その隣でなぜか私に怯える義姉のバーバラの姿があった。 バーバラは私にいじめられたと嘘をつき、婚約者を奪った。 五年も婚約していたのに、私ではなく、バーバラの嘘を信じた婚約者。学園の生徒達も彼女の嘘を信じ、親友だと思っていた人にまで裏切られた。 バーバラの目的は、ワイヤット侯爵家を継ぐことのようだ。 だが、彼女には絶対に継ぐことは出来ない。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 感想の返信が出来ず、申し訳ありません。

妹の事が好きだと冗談を言った王太子殿下。妹は王太子殿下が欲しいと言っていたし、本当に冗談なの?

田太 優
恋愛
婚約者である王太子殿下から妹のことが好きだったと言われ、婚約破棄を告げられた。 受け入れた私に焦ったのか、王太子殿下は冗談だと言った。 妹は昔から王太子殿下の婚約者になりたいと望んでいた。 今でもまだその気持ちがあるようだし、王太子殿下の言葉を信じていいのだろうか。 …そもそも冗談でも言って良いことと悪いことがある。 だから私は婚約破棄を受け入れた。 それなのに必死になる王太子殿下。

私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました

新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。

処理中です...