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「なっ……!?」
「「「えっ……。」」」
周囲がざわつく。
殿下も驚きのあまり目を見開いて、口が半開きになっていた。
「今夜はご招待くださり、ありがとうございます。夏季休暇中は殿下に会える機会があまりありませんから、本当に嬉しいですわぁ!」
周囲の反応を気にも止めずに、ルーシアは話を続けた。
ルーシアの両親であるトゥリーゼ伯爵夫妻は、顔を覆って今にも倒れそうになっていた。
それでも娘の事だからと、行く末を見守っている。
早く連れ帰った方が良い気がするのだけれど……。
「はぁ……もういいわ…。」
ここまで礼儀知らずな姿を見れば、私が怒ったところで、彼女に味方をする人はいない。
たとえいたとしても、この感情を抑えるということはできなかった。
「殿下とお会いできて、私…私っ……本当に……」
「いい加減にして頂戴!」
「っ!?」
私がルーシアの後ろから大声でそう言うと、彼女はビクッと少し飛び跳ねてこちらを振り返る。
相手が私だと気付くと、途端に表情が薄ら笑いに変わる。
まだ自分が優位な立場にあるとでも思っているのかしら。
頭がお花畑の様子。
「ルーシア。貴方は自分が何をしたのか、理解しているのかしら?」
「…?殿下に挨拶をしただけですわ。それの何がいけないと言うの?」
「ジェヌア殿下の婚約者である私が挨拶をしていないというのに、何故貴方が先にしているの?貴族として今の自分の行為が何を意味するのか、知らないとは言わせないわよ。」
「はぁ?何を強気になっているの?悪役令嬢風情が、ヒロインである私に説教するんじゃないわ!」
「……はぁ…。」
あまりの愚かさに、言葉が出なくなる。
伯爵令嬢であるルーシアが、侯爵令嬢である私にこのような物言いをしたのだ。
貴族が大勢招待されている公の場で、醜態を晒し続けている。
強気なのはどちらかしら。
「「確か伯爵令嬢のルーシアだったか。未来の王妃様に向かって!」」
「「「悪役令嬢?の意味は分からないけれど、セスア様は悪人ではないわ。」」」
「「そもそもセスア様を差し置いて、先に挨拶をするなど不敬極まりない!」」
そんな周囲の声を、相変わらず聞こえていない様子のルーシア。
さらには、ため息をついた私に殴りかかろうとしてきた。
驚いて、頭を守るように両手を添えた瞬間……
「ルーシア!」
振り上げられた拳の手首を握り、止めていたのはルーシアの父だった。
威厳に満ち溢れた声で、ルーシアを制す。
「そこまでだ。今日はもう帰るぞ。」
「嫌ですわ!殿下とお話できる機会ですのよ!?」
「いいから言うことを聞け!」
「……分かりました…。」
父に叱られたからか、さすがのルーシアも言うことを聞いた。
鬼の形相の父に、気圧されたのでしょうけれど。
どうやら、甘やかされて育ったわけではない様子。
両親はしっかりとしている感じがした。
きつく説教をしてくれるとありがたい……。
「皆様、娘がご迷惑をおかけしました…。全ては私の責任です。罰は私が受けましょう。……娘にはきつく叱っておきます。では失礼致します……。」
去り際、トゥリーゼ伯爵が頭を下げた。
最悪の場合、伯爵は罰を受けることになるでしょう。
爵位の降格が最大だが、今回は娘の行いに対し謝罪をするという適切な態度を取っている。
そこまで大きな罰となることはないはず。
「「「……。」」」
静まり返るパーティー会場。
私の顔色を伺っているみたいね。
そこで手をパンッと一度叩く。
「皆さん、パーティーの続きを楽しみましょう。」
「「「……。」」」
私が言った言葉に、集まっていた貴族達は驚きつつも、気まずそうに俯いた。
もう一声かけなければならないと感じ、私は言葉を続けた。
「確かに彼女は許されざる行いをしました。ですがそれは、パーティーを中断する理由にはならない……私はそう思います。」
「「「……。」」」
私の言葉に貴族達は顔を見合わせ、頷き合う。
そしてもう一度乾杯をし、何事も無かったかのようにパーティーは再開された。
私は改めて殿下に挨拶をし、その後は食事や会話を楽しんでいた。
その途中、三大公爵家であるディザウェル公爵家の当主が私の前で一礼し、声をかけてきた--
「「「えっ……。」」」
周囲がざわつく。
殿下も驚きのあまり目を見開いて、口が半開きになっていた。
「今夜はご招待くださり、ありがとうございます。夏季休暇中は殿下に会える機会があまりありませんから、本当に嬉しいですわぁ!」
周囲の反応を気にも止めずに、ルーシアは話を続けた。
ルーシアの両親であるトゥリーゼ伯爵夫妻は、顔を覆って今にも倒れそうになっていた。
それでも娘の事だからと、行く末を見守っている。
早く連れ帰った方が良い気がするのだけれど……。
「はぁ……もういいわ…。」
ここまで礼儀知らずな姿を見れば、私が怒ったところで、彼女に味方をする人はいない。
たとえいたとしても、この感情を抑えるということはできなかった。
「殿下とお会いできて、私…私っ……本当に……」
「いい加減にして頂戴!」
「っ!?」
私がルーシアの後ろから大声でそう言うと、彼女はビクッと少し飛び跳ねてこちらを振り返る。
相手が私だと気付くと、途端に表情が薄ら笑いに変わる。
まだ自分が優位な立場にあるとでも思っているのかしら。
頭がお花畑の様子。
「ルーシア。貴方は自分が何をしたのか、理解しているのかしら?」
「…?殿下に挨拶をしただけですわ。それの何がいけないと言うの?」
「ジェヌア殿下の婚約者である私が挨拶をしていないというのに、何故貴方が先にしているの?貴族として今の自分の行為が何を意味するのか、知らないとは言わせないわよ。」
「はぁ?何を強気になっているの?悪役令嬢風情が、ヒロインである私に説教するんじゃないわ!」
「……はぁ…。」
あまりの愚かさに、言葉が出なくなる。
伯爵令嬢であるルーシアが、侯爵令嬢である私にこのような物言いをしたのだ。
貴族が大勢招待されている公の場で、醜態を晒し続けている。
強気なのはどちらかしら。
「「確か伯爵令嬢のルーシアだったか。未来の王妃様に向かって!」」
「「「悪役令嬢?の意味は分からないけれど、セスア様は悪人ではないわ。」」」
「「そもそもセスア様を差し置いて、先に挨拶をするなど不敬極まりない!」」
そんな周囲の声を、相変わらず聞こえていない様子のルーシア。
さらには、ため息をついた私に殴りかかろうとしてきた。
驚いて、頭を守るように両手を添えた瞬間……
「ルーシア!」
振り上げられた拳の手首を握り、止めていたのはルーシアの父だった。
威厳に満ち溢れた声で、ルーシアを制す。
「そこまでだ。今日はもう帰るぞ。」
「嫌ですわ!殿下とお話できる機会ですのよ!?」
「いいから言うことを聞け!」
「……分かりました…。」
父に叱られたからか、さすがのルーシアも言うことを聞いた。
鬼の形相の父に、気圧されたのでしょうけれど。
どうやら、甘やかされて育ったわけではない様子。
両親はしっかりとしている感じがした。
きつく説教をしてくれるとありがたい……。
「皆様、娘がご迷惑をおかけしました…。全ては私の責任です。罰は私が受けましょう。……娘にはきつく叱っておきます。では失礼致します……。」
去り際、トゥリーゼ伯爵が頭を下げた。
最悪の場合、伯爵は罰を受けることになるでしょう。
爵位の降格が最大だが、今回は娘の行いに対し謝罪をするという適切な態度を取っている。
そこまで大きな罰となることはないはず。
「「「……。」」」
静まり返るパーティー会場。
私の顔色を伺っているみたいね。
そこで手をパンッと一度叩く。
「皆さん、パーティーの続きを楽しみましょう。」
「「「……。」」」
私が言った言葉に、集まっていた貴族達は驚きつつも、気まずそうに俯いた。
もう一声かけなければならないと感じ、私は言葉を続けた。
「確かに彼女は許されざる行いをしました。ですがそれは、パーティーを中断する理由にはならない……私はそう思います。」
「「「……。」」」
私の言葉に貴族達は顔を見合わせ、頷き合う。
そしてもう一度乾杯をし、何事も無かったかのようにパーティーは再開された。
私は改めて殿下に挨拶をし、その後は食事や会話を楽しんでいた。
その途中、三大公爵家であるディザウェル公爵家の当主が私の前で一礼し、声をかけてきた--
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