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番外編
私達の物語
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「こうして見ると、本当に世界は広いわね…。」
「まさかこの世界に転生するなんて、思ってもいなかったがな。それも、私は性別まで変わっていた。人生何があるか分からないものだね。」
私は今、エフェンと共に浮遊魔法にて王国の上空に居た。
王国を空から見下ろしている、つまりは浮いているのだ。
王国の外も見えている。
青空には少しの雲がかかり、気温はちょうど良い。
夜になると、この景色はより美しくなるだろう。
「…ふと思ったのだけれど、この世界……乙女ゲームの物語は学園の卒業の時点で終わっているのだから、今私達が生きているこの時間は、物語で言うところの……」
「後日談、或いは番外編だね。とはいえゲームでは学園を去った後のことは書かれていない。つまり、何も定まっていない世界を進んでいるということになる。」
「"今"は、私達が自ら物語を作っていると言っても過言ではないわよね?」
「学園に居た頃も、私達は好き勝手していたと思うが…。」
「生き残る為に必死だっただけよ。」
そう……、私は生き残る為に必死だったのだ。
自らを危険に晒していたこともあった、ですか?
それは結果的に自分を守ることに繋がっていたはず……、きっと…!
「本来の物語に抗ったからこそ、今がある…。『定められた物語』というものが無くなった世界ということよね。」
「そうだな。」
「なら、『私達の物語』をこれからも作っていきましょう?誰にも成せないような偉業を残し、この国が永遠の王国になるように…。」
「あはは。また難しいことを言うね。そうだな……例えば不死になって、死んだと思わせておいて王国を陰ながら助けるような、謎の存在にでもなるか?…なんてな。」
「……それは面白そうね。不死になる方法なら、魔法で思いついているものがあるけれど…。」
「もうあるのか…?!」
「ええ。身体の内部の時を止めるのよ。持続させるために魔力を循環させる魔法を組み合わせれば、おそらく不死になれるわ。まぁ、急所をやられてしまえば終わりだけれどね。」
「そこは結界でどうとでもなるだろうさ。にしても、言ってみただけだったんだがな…。まさか本当に不死の魔法を創っていたとは。」
「私は運命を変える為に魔法を極めたのよ。バッドエンドになっても死なないよう、不死になれる魔法を考えたことなんて、いくらでもあるわ。」
その後はエフェンと共に、今後について話し合った。
たとえ不死になったとしても、ディルジアには内緒にし、彼より少し長く生きて周囲には老衰で死んだと思わせよう……など、冗談か本音か曖昧な会話だった。
しかし、これから私やエフェンがどう動こうとも、乙女ゲームには何の関係もない事だ。
ゲームの物語は既に終わっており、今私達が生きているこの世界は、ただの魔法がある異世界に過ぎないのである。
学園生活が終わっている以上、誰にも縛られる必要など無い。
なぜなら、"今"は乙女ゲームのその先。
自分自身が主人公であり、自分以外の誰もが主人公でもある、
ゲームなど全く関係のない、
『私達の物語』なのだから--
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
数十年後。
国王ディルジアの死とともに王太子の息子へと王位が譲られ、その数ヶ月後にヴァリフィアとエフェンが数日違いでこの世を去った。
世間では、仲の良かった2人が、国王を追いかけるように死んでいったと言われている。
美しい愛情と友情だと…。
ディルジアは歴代の王の中で最も王国を繁栄させた。
『賢華』の二つ名を持つヴァリフィアと裏で『情報屋』と呼ばれていたエフェンの2人が居なくなったことにより、周辺諸国はツィレイル王国を手に入れようと動き出したが、その動きは一瞬で収まることとなる。
顔が見えなくなるほどフードを深く被った、謎の女性魔法師が現れたからだ。
そして別の国では、これまたフードを深く被り顔の見えない男性の魔法剣士が現れた。
彼らは王国に手を出すならば容赦はしないと、それぞれの国の国王や皇帝のみに圧倒的な力を見せつける。
そうして2人は、『白衣の魔女』・『黒衣の魔剣士』と王達の間で呼ばれることとなる。
しかし、誰もその正体は掴めない。
ヴァリフィアとエフェンではないかという噂が流れたが、火葬される瞬間を大多数が目撃していた為、その可能性はないとされた。
「彼は仲間外れにされたと、あの世で怒っているかしらね…。」
「かもな。だがあいつが不死として永遠に生きることに耐えられるとは思えない。」
「……彼にとって命とは、儚くも美しいもの。つまりは死ぬからこそ人間であるという考え方なのよね。私達のように一度死んで転生していれば、考えが違っていたでしょうけれど、そんなことは普通有り得ないから…。」
「そうだな…。あいつが頑張って繁栄させ、残したこの王国を守ってやらないとな。」
「ええ。……あら、魔物が大量に発生しているわね。誰も気付いていないようだけれど。」
「このまま放置すれば王国行きだな。」
「片付けましょうかエフェン……、いいえ、彩菜。」
「ああ。行くか、結明。」
2人の正体……それは紛れもなく、ヴァリフィアとエフェンだった。
魔法で自分の死体を偽装していたのだ。
故にヴァリフィアとエフェンは死んだことになっている為、2人は正体を隠すためにも互いに前世の名で呼び合っている。
その後、この世界では、
『戦争を起こそうとすれば、それを阻止する為に神の使徒が現れる。』
などという噂が広まり、真実かどうかは各国の上位貴族にのみ知るところとなった。
《半神》のような存在となったヴァリフィアとエフェンだが、この先はまた別の物語なのである--
「まさかこの世界に転生するなんて、思ってもいなかったがな。それも、私は性別まで変わっていた。人生何があるか分からないものだね。」
私は今、エフェンと共に浮遊魔法にて王国の上空に居た。
王国を空から見下ろしている、つまりは浮いているのだ。
王国の外も見えている。
青空には少しの雲がかかり、気温はちょうど良い。
夜になると、この景色はより美しくなるだろう。
「…ふと思ったのだけれど、この世界……乙女ゲームの物語は学園の卒業の時点で終わっているのだから、今私達が生きているこの時間は、物語で言うところの……」
「後日談、或いは番外編だね。とはいえゲームでは学園を去った後のことは書かれていない。つまり、何も定まっていない世界を進んでいるということになる。」
「"今"は、私達が自ら物語を作っていると言っても過言ではないわよね?」
「学園に居た頃も、私達は好き勝手していたと思うが…。」
「生き残る為に必死だっただけよ。」
そう……、私は生き残る為に必死だったのだ。
自らを危険に晒していたこともあった、ですか?
それは結果的に自分を守ることに繋がっていたはず……、きっと…!
「本来の物語に抗ったからこそ、今がある…。『定められた物語』というものが無くなった世界ということよね。」
「そうだな。」
「なら、『私達の物語』をこれからも作っていきましょう?誰にも成せないような偉業を残し、この国が永遠の王国になるように…。」
「あはは。また難しいことを言うね。そうだな……例えば不死になって、死んだと思わせておいて王国を陰ながら助けるような、謎の存在にでもなるか?…なんてな。」
「……それは面白そうね。不死になる方法なら、魔法で思いついているものがあるけれど…。」
「もうあるのか…?!」
「ええ。身体の内部の時を止めるのよ。持続させるために魔力を循環させる魔法を組み合わせれば、おそらく不死になれるわ。まぁ、急所をやられてしまえば終わりだけれどね。」
「そこは結界でどうとでもなるだろうさ。にしても、言ってみただけだったんだがな…。まさか本当に不死の魔法を創っていたとは。」
「私は運命を変える為に魔法を極めたのよ。バッドエンドになっても死なないよう、不死になれる魔法を考えたことなんて、いくらでもあるわ。」
その後はエフェンと共に、今後について話し合った。
たとえ不死になったとしても、ディルジアには内緒にし、彼より少し長く生きて周囲には老衰で死んだと思わせよう……など、冗談か本音か曖昧な会話だった。
しかし、これから私やエフェンがどう動こうとも、乙女ゲームには何の関係もない事だ。
ゲームの物語は既に終わっており、今私達が生きているこの世界は、ただの魔法がある異世界に過ぎないのである。
学園生活が終わっている以上、誰にも縛られる必要など無い。
なぜなら、"今"は乙女ゲームのその先。
自分自身が主人公であり、自分以外の誰もが主人公でもある、
ゲームなど全く関係のない、
『私達の物語』なのだから--
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数十年後。
国王ディルジアの死とともに王太子の息子へと王位が譲られ、その数ヶ月後にヴァリフィアとエフェンが数日違いでこの世を去った。
世間では、仲の良かった2人が、国王を追いかけるように死んでいったと言われている。
美しい愛情と友情だと…。
ディルジアは歴代の王の中で最も王国を繁栄させた。
『賢華』の二つ名を持つヴァリフィアと裏で『情報屋』と呼ばれていたエフェンの2人が居なくなったことにより、周辺諸国はツィレイル王国を手に入れようと動き出したが、その動きは一瞬で収まることとなる。
顔が見えなくなるほどフードを深く被った、謎の女性魔法師が現れたからだ。
そして別の国では、これまたフードを深く被り顔の見えない男性の魔法剣士が現れた。
彼らは王国に手を出すならば容赦はしないと、それぞれの国の国王や皇帝のみに圧倒的な力を見せつける。
そうして2人は、『白衣の魔女』・『黒衣の魔剣士』と王達の間で呼ばれることとなる。
しかし、誰もその正体は掴めない。
ヴァリフィアとエフェンではないかという噂が流れたが、火葬される瞬間を大多数が目撃していた為、その可能性はないとされた。
「彼は仲間外れにされたと、あの世で怒っているかしらね…。」
「かもな。だがあいつが不死として永遠に生きることに耐えられるとは思えない。」
「……彼にとって命とは、儚くも美しいもの。つまりは死ぬからこそ人間であるという考え方なのよね。私達のように一度死んで転生していれば、考えが違っていたでしょうけれど、そんなことは普通有り得ないから…。」
「そうだな…。あいつが頑張って繁栄させ、残したこの王国を守ってやらないとな。」
「ええ。……あら、魔物が大量に発生しているわね。誰も気付いていないようだけれど。」
「このまま放置すれば王国行きだな。」
「片付けましょうかエフェン……、いいえ、彩菜。」
「ああ。行くか、結明。」
2人の正体……それは紛れもなく、ヴァリフィアとエフェンだった。
魔法で自分の死体を偽装していたのだ。
故にヴァリフィアとエフェンは死んだことになっている為、2人は正体を隠すためにも互いに前世の名で呼び合っている。
その後、この世界では、
『戦争を起こそうとすれば、それを阻止する為に神の使徒が現れる。』
などという噂が広まり、真実かどうかは各国の上位貴族にのみ知るところとなった。
《半神》のような存在となったヴァリフィアとエフェンだが、この先はまた別の物語なのである--
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