【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒

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番外編

近衛騎士団、特別強化③

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剣と剣がぶつかり合う、激しい音が鳴り響いていた。
エフェンと騎士達が剣のみで激闘を繰り広げているのだ。
近衛騎士団ヴァーツィの人数は20人程度なので、1人で相手をしているエフェンの凄さがより分かる模擬戦となっていた。


「もっと本気で来い!私を殺す気で来なければ、少しも楽しめないぞ。」

(悪役のような台詞……本当に楽しんでいるわね…。)


全員に疲労感が見えてきているが、エフェンは笑顔で余裕そうだった。
既に10分程戦っているのだから、最初から全力な様子の騎士達は疲れていても当然だろう。


「そろそろ頃合いよ、エフェン。」

「早くないか?」

「……強制的に終わらせるわよ。」

「分かった分かった…。」


エフェンが近くに戻ってきた数秒の間に、短い会話を交わす。
観戦しているのも楽しいのだが、やはり見ているだけでは面白くないのだ。

模擬戦に戻ったエフェンは、一瞬で彼らを倒してしまった。
流石の一言である。


「お疲れ様。まだまだ余裕そうね。」

「貴女に早くしろと言われていなければ、もう少し遊ぼうかと思っていたのですけどね。」

「あら、なんのことかしら?」

「全く……昔から変わらないな…。」

「さて、気絶している騎士達を起こさないといけないわね。」

「お頼みしても?」

「ええ。」


私が指を鳴らすと、彼らは目を覚ました。
続けて治癒魔法もかけておいた。


「身体の疲れは取れているはずよ。最後に、少し魔法について教えてあげましょう。模擬戦だけでは、実力が上がったのか実感出来ないもの。」

「それは真にございますか!?」

「ええ。まず無詠唱魔法を扱えていることには、何も言うことはないわ。けれど『魔法』というものを、貴方達は正しく理解出来ていない。そのせいで行使する際に威力が弱まってしまっているの。」

「つまり……?」

「…実践した方が早いわね。エフェン大臣、的を用意していただけるかしら。」

「承知しました。」


エフェンが指を鳴らすと、何も無かった場所に的が出現した。
本当にただの的だ。
彼らに教えられる範囲で、魔法について少し話をしようと考えた。


「この的に、初級魔法の『火球』を2発放つわ。よく見ていなさい。」


私は的に向けて、宣言通り2発の『火球』を放った。
どちらも無詠唱で発動させた魔法だ。
1発目は小さく弱いものにし、2発目は巨大で、威力の強い火球を放つ。
この違いが重要となってくる。


「今の2つの火球、何が違ったかしら?」

「威力が全くの別物でした…。」

「そうね。確かに威力が数倍ほど違うわ。」


私の問いに、騎士団長が答えた。
何故違ったのかを考えている様子。


「不思議そうな顔をしているわね、騎士団長。」

「はい…何故威力がそこまで変わるのか分かりません…。」

「では質問。無詠唱魔法を発動させる時、魔法を具現化させるために何をしているかしら?」

「えぇっと……イメージを明確にして、魔力を集中させる…ですかね。」

「そうね。つまり魔法イメージによって発現するの。」

「……あっ、なるほど。」


騎士団長は理解した様子。
しかし他の騎士達は、半分程度の人しか分かっていないようだ。
とりあえず話を進めることにした。


「騎士団長は今の言葉の意味が分かったようね。」

「はい。簡単に言えば、イメージ次第で初級魔法である火球も、中級魔法に近い威力にすることが出来る……ということですね。」

「その通りよ。ただし注意点があるの。イメージは確かに重要なのだけれど、発動するにはその魔法に見合うだけの魔力が必要になるわ。」

「「「……?」」」

「強力な魔法を使うには膨大な魔力が必要になるだろう?それと同じで、先程の火球でも使用した魔力量は数倍違う。つまりどれだけイメージを明確にしようとも、魔力が足りなければ発動しない。このことをヴァリフィア陛下はおっしゃっているんだ。」


エフェンが付け足して説明をしたことで、全員が正しく理解したようだ。
--その後、私とエフェンの指導のもと、騎士達が無詠唱魔法の練習を行った。
最初の模擬戦の時より、かなり実力が上がっている。
教えた甲斐があったというもの。


「本日はありがとうございました。」

「騎士団の実力が上がったことは保証するわ。これからも頑張って頂戴。」

「はい!我ら一同、精進して参ります!」

「ええ、期待しているわ。行きましょうか、エフェン大臣。」

「仰せのままに。」


そうして、私達は訓練場を離れるのだった。
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