【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒

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番外編

近衛騎士団、特別強化②

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--翌日--



「ヴァリフィア、こっちだ。」

「おはよう、エフェン。」

「おはよう。」


私とエフェンは、王城から少し離れた訓練場近くの場所へと来ていた。
朝の9時頃に、この場所を集合としていたのだ。
既に騎士団員達は朝の鍛錬を始めているようで、声や音が聞こえてきていた。


「こうして一緒に何かをするのは、久しぶりだな。」

「そうね。最近は忙しかったもの。」

「立場的に仕方がないからな。……さて、行くか。」

「ええ。」


私達は近衛騎士団『ヴァーツィ』の騎士達が集められた、訓練場内へと入る。
彼らは1対1で向き合い、剣を交えていた。
技術レベルが高いのは一瞬で分かった。

私とエフェンが訓練場へと足を踏み入れたと同時に、騎士達は一斉に整列し、一礼した。
そして騎士団長が挨拶に来る。


「ヴァリフィア・ツィレイル王妃陛下、エフェン魔法大臣様。ようこそおいでくださいました。」

「久しぶりね、騎士団長。お変わりないようで。」

「はい、元気にやっております。本日は模擬戦をして頂けるとお聞きしているのですが…。」

「ええ。早速始めましょう。」

「えっ!?もう始められるのですか!?」

「無論よ。エフェン大臣も大丈夫でしょう?」

「ああ……って、ここは公の場だったな…。」

「?」

「問題ありません。」

「そう。なら始めましょうか。」


そうして、私とエフェン対近衛騎士団の模擬戦が開始された。
互いに約20mほど離れる。
そして私が魔法を空に向けて放ち、それが開始の合図となった。


「さて、どう動く?」

「とりあえず魔法のみでいきましょう。」

「了解だ。」

「私は上空から魔法を撃つわ。」

「なら地上で魔法を撃ちつつ、引き付け役に回るとするさ。」

「頼むわね。」

「ああ。」


そして私は浮遊魔法を使い、訓練場を見渡せる位置まで上昇した。
その様子に警戒した騎士が数名、私に向けて魔法を放ってきたが、それを軽々と結界にて防ぐ。
そして一際威力が強い氷結魔法が飛んできた。
『氷槍』、その名の通り氷の槍だ。


(さすがに結界だけで防ぎ続けたら、騎士達も面白くないわよね…。)


そこで私は放たれた魔法に左手をかざし、手のひらをぐっと握る。
その瞬間、『氷槍』は砕け散って消えた。


「なっ!?」

「今、魔法が当たる前に砕けた…?」

「一体、どうなってるんだ!」

「余所見は厳禁だよ。」


一瞬の隙を見逃さず、エフェンが魔法を撃ち込む。
当たった騎士達は動けずにいる。
麻痺の効果があるからだ。

そして5分後--


「残りは騎士団長だけ……か。」

「早いわね…。もう少し耐えられると思っていたのだけれど……。」

「まだ…私が残っておりますよ……!」


そう言って、騎士団長が全力の魔法を放ってきた。
しかし慌てることもなく、易々と結界にて防ぐ。


「…やはり敵いませんか。悔しいですが、私達の負けです。」

「お疲れ様。今度は剣のみで戦ってみましょう。」

「け、剣のみ……ですか?」

「ええ。」

「その…失礼ながら、ヴァリフィア陛下は剣が扱えるのですか…?」

「…ふふ、さぁ、どうかしらね。私は戦わないから、エフェン大臣とだけでやって頂戴。観戦しているわ。」

「え…。」

「何か異論があるのかしら?」

「……いえ、何も。」


エフェンは不満そうにそう言った。
今の私は王妃。
エフェンよりも地位が高いので、何も言えないのだ。
お前も戦えよ…と目で訴えかけてきているが、知らないふりをする。
私が剣を扱えるということは、隠しておかなければ。
奥の手でもあるのだから。
本音は…


(私が剣を使った時、相手の驚いた顔を見られるのが楽しい……というのは秘密だね。)


とはいえエフェンを含め、国王であるディルジアなど一部の者は既に知っている。
固く口止めしているのだが。

私は疲れている騎士達に、治癒魔法をかける。
指を鳴らして無詠唱で発動しているので、騎士達からすれば急に疲れが取れた感じだろう。
しかし彼らの周囲には、虹色に輝く霧のようなものがかかっている。


「こ、これは…?」

「治癒魔法《霞癒かすみ》よ。綺麗でしょう?」

「はい…。本当に綺麗です……!」

「雨の種類の中に、霧雨というものがあることは知っているかしら?」

「ええ。太陽に照らされて虹色に輝く時は、とても幻想的になる雨ですよね。滅多に見られませんが……あっ!」

「気付いてくれたようね。お察しの通り、この魔法はその自然現象を元にした魔法よ。まぁ、『見た目に凝った治癒魔法』とでも思ってくれたら良いわ。」

「心をも癒してくれる魔法ですね……見とれてしまいます。」

「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しいわね。さて、休憩は終わりよ。エフェン大臣、よろしくね?」

「……承知しました…。」


私が笑顔でエフェンにそう言うと、彼はため息混じりに応える。
面倒だと思っていることが表情に出ているが、少し楽しそうでもあった。


(相変わらずね。戦うことを楽しんでいる……ふふっ、混ざるのも一興かな?でも剣を扱えることは隠しておきたい……複雑な気持ちね。)
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