247 / 255
番外編
近衛騎士団、特別強化①
しおりを挟む
--ある日--
「国王陛下、ヴァリフィア並びにエフェン・アーリグェー、お呼びとのことで参りました。」
「入れ。」
私はディルジアに呼び出しをされ、書斎へと来ていた。
隣に居るエフェンも同じ様子。
何か頼み事があるのだろうと、軽い気持ちだったのだが…。
「よく来てくれたね。」
「ディア、本題に入る前にひとつ聞きたいのだけれど。」
「何だい?」
「少し、魔法を使ってもいいかしら。危ない魔法ではないから安心して。」
「許可するよ。」
「ありがとう。」
魔力反応があった為、パチンッと私は指を鳴らす。
すると誰もいなかった場所から、人が現れた。
ディルジアの少し後ろに2人立っている。
「あはは……やはりバレていたか。」
「賢華には敵わないなぁ…。」
「その程度の隠蔽魔法では、私の目は欺けませんよ、シュン義兄様、レイ。」
立っていたのはディルジアの兄弟、
元第1王子であり今は『王兄殿下』のシュレンジア・ツィレイルと、
元第3王子の今は『王弟殿下』、レイジア・ツィレイルだった。
家族となった証に愛称で呼んで欲しいと頼まれ、この呼び方になっていた。
そして彼らは私のことを『リフィ』と呼んでいる。
シュレンジアが人払いをした為、何か重要な案件かと思いエフェンと2人で身構える。
「そんなに固くならないでくれ、リフィ。」
「シュン兄さんの言う通りだ。そう身構える必要はないよ。」
「そうですよ義姉さん。少し手伝って頂きたいだけですから。」
「「?」」
3兄弟は少し笑みを浮かべながら、しかし真面目な表情で私とエフェンを見ている。
その様子に、より強く身構えてしまう。
そしてそれは正解だった。
「端的に言うと、我が国の兵士達に魔法を……」
「「却下よ(だ)。」」
ディルジアが全てを言い切る前に、私とエフェンは同タイミングで断った。
その理由は簡単だ。
「まだ最後まで言ってないじゃないか…。」
「ディル。私やヴァリフィアの魔法を教えるとなると、国家間の軍事バランスを崩しかねない。戦争でもするつもりか?」
「まさか。平和が一番だと分かっていて、自ら地獄へ足を踏み入れるような真似はしないさ。」
「なら何故?」
エフェンはディルジアを鋭く睨む。
私も無言で見つめていた。
確かに私達が魔法を教えれば、兵士達は飛躍的に強くなるだろう。
つまり軍事力も桁違いに上がる。
だがそれは、国家間の軍事力のバランスが崩れるということだ。
1つの国が強い力を持てば、周辺諸国が警戒するのは当然だ。
そして勢力を拡大させる前に、他国と同盟を結び協力して潰すという行動に移る可能性もある。
しかし心配はいらないとディルジアは言う。
「2人が考えているようなことではなく、単純に一度だけ模擬戦をしてもらいたいんだ。」
「つまりディアが頼みたい事は、兵士達に魔法を叩き込む……私とエフェンで彼らを攻撃してくれないか、といったところかしら。」
「その通りだよ。強敵を想定した訓練をしてもらいたくてね。」
「……。」
「……。」
「2人とも、どうしたんだ?」
「「面倒ね(だな)。」」
「…え?」
私とエフェンの同時に出た言葉に対し、ディルジアは驚いて顔が固まっていた。
正直に、面倒だった。
つまりこれは本音だ。
本音がつい漏れてしまったのだ。
「えっと……断られるのか…?」
「…ディア、貴方が言う『この国の兵士達』って、騎士団や宮廷魔法師達も含まれるのかしら?」
「…?そうだが…。」
「なら、この国に『兵士達』とは、一体何人いるんだ?」
「万を軽々と超えるな。」
「つまり私達はそれだけの人数を相手にしなければならないということ?」
「そうなるな。」
「「……はぁ…。」」
私とエフェンが交互に質問をし、ディルジアが答えていく。
何の問題もないだろうという様に、淡々と答えている。
しかし問題なんて大ありだ。
それだけの人数が入れる訓練場など、世界のどこを探しても無い。
かと言って国境付近で訓練するわけにもいかない。
それになにより、面倒なのだ。
これが一番の理由。
「悪いが、私達はそんなに暇ではないぞ。」
「なら近衛騎士団だけでもいい!少しでいいから……少しで…!」
「私からもお願いしたい。リフィ、エフェン。どうか引き受けてはくれないだろうか…?」
「僕からも…。近衛騎士団は強いのですが、宮廷魔法師達には敵いません。しかし同等の実力にさせたいのです。」
3人の必死さが伝わってきた。
確かに最近こんな噂を耳にする。
『宮廷魔法師達は、近衛騎士団よりも自らが強いと確信し、勝手に騎士団の仕事を行う為、両者の間に溝ができている。』
というものだ。
騎士達も魔法を扱うが、宮廷魔法師達との差は歴然。
剣が届く距離に近寄れないが為に、騎士団の方がどうしても弱くなってしまう。
「これ以上宮廷魔法師達を暴走させるわけにはいかないし、位としては騎士団と同格の存在だ。だからせめて、近衛騎士団だけでも…!」
「……分かった。」
「本当か!?」
「ああ。近衛騎士団のみの相手なら…だ。」
「そうね…。模擬戦とはいえ、万を超える相手と戦える場所なんてないし、戦いたくもないわ。それこそ、これだけの人数と戦うのは戦争くらいでしょうね。」
近衛騎士団『ヴァーツィ』。
それはこの国で最も強い騎士達が所属する騎士団だ。
彼らは魔法と剣を上手く利用した戦術を用いる。
人数は20人程度。
選び抜かれた優秀な者のみで構成されている。
「近衛騎士団のみで構わない。それでよろしく頼む。」
ディルジア達は安堵の表情を見せる。
「いつ模擬戦してやればいいんだ?」
「いつでもいいさ。早ければ明日にでも。」
「了解。なら明日にしてくれ。ちょうど空いているからな。」
「私も明日は問題ないわ。」
「では明日2人が訪ねると、騎士団長に伝えておこう。引き受けてくれてありがとう。」
「「どういたしまして。」」
そうして、私とエフェンは書斎をあとにするのだった。
「国王陛下、ヴァリフィア並びにエフェン・アーリグェー、お呼びとのことで参りました。」
「入れ。」
私はディルジアに呼び出しをされ、書斎へと来ていた。
隣に居るエフェンも同じ様子。
何か頼み事があるのだろうと、軽い気持ちだったのだが…。
「よく来てくれたね。」
「ディア、本題に入る前にひとつ聞きたいのだけれど。」
「何だい?」
「少し、魔法を使ってもいいかしら。危ない魔法ではないから安心して。」
「許可するよ。」
「ありがとう。」
魔力反応があった為、パチンッと私は指を鳴らす。
すると誰もいなかった場所から、人が現れた。
ディルジアの少し後ろに2人立っている。
「あはは……やはりバレていたか。」
「賢華には敵わないなぁ…。」
「その程度の隠蔽魔法では、私の目は欺けませんよ、シュン義兄様、レイ。」
立っていたのはディルジアの兄弟、
元第1王子であり今は『王兄殿下』のシュレンジア・ツィレイルと、
元第3王子の今は『王弟殿下』、レイジア・ツィレイルだった。
家族となった証に愛称で呼んで欲しいと頼まれ、この呼び方になっていた。
そして彼らは私のことを『リフィ』と呼んでいる。
シュレンジアが人払いをした為、何か重要な案件かと思いエフェンと2人で身構える。
「そんなに固くならないでくれ、リフィ。」
「シュン兄さんの言う通りだ。そう身構える必要はないよ。」
「そうですよ義姉さん。少し手伝って頂きたいだけですから。」
「「?」」
3兄弟は少し笑みを浮かべながら、しかし真面目な表情で私とエフェンを見ている。
その様子に、より強く身構えてしまう。
そしてそれは正解だった。
「端的に言うと、我が国の兵士達に魔法を……」
「「却下よ(だ)。」」
ディルジアが全てを言い切る前に、私とエフェンは同タイミングで断った。
その理由は簡単だ。
「まだ最後まで言ってないじゃないか…。」
「ディル。私やヴァリフィアの魔法を教えるとなると、国家間の軍事バランスを崩しかねない。戦争でもするつもりか?」
「まさか。平和が一番だと分かっていて、自ら地獄へ足を踏み入れるような真似はしないさ。」
「なら何故?」
エフェンはディルジアを鋭く睨む。
私も無言で見つめていた。
確かに私達が魔法を教えれば、兵士達は飛躍的に強くなるだろう。
つまり軍事力も桁違いに上がる。
だがそれは、国家間の軍事力のバランスが崩れるということだ。
1つの国が強い力を持てば、周辺諸国が警戒するのは当然だ。
そして勢力を拡大させる前に、他国と同盟を結び協力して潰すという行動に移る可能性もある。
しかし心配はいらないとディルジアは言う。
「2人が考えているようなことではなく、単純に一度だけ模擬戦をしてもらいたいんだ。」
「つまりディアが頼みたい事は、兵士達に魔法を叩き込む……私とエフェンで彼らを攻撃してくれないか、といったところかしら。」
「その通りだよ。強敵を想定した訓練をしてもらいたくてね。」
「……。」
「……。」
「2人とも、どうしたんだ?」
「「面倒ね(だな)。」」
「…え?」
私とエフェンの同時に出た言葉に対し、ディルジアは驚いて顔が固まっていた。
正直に、面倒だった。
つまりこれは本音だ。
本音がつい漏れてしまったのだ。
「えっと……断られるのか…?」
「…ディア、貴方が言う『この国の兵士達』って、騎士団や宮廷魔法師達も含まれるのかしら?」
「…?そうだが…。」
「なら、この国に『兵士達』とは、一体何人いるんだ?」
「万を軽々と超えるな。」
「つまり私達はそれだけの人数を相手にしなければならないということ?」
「そうなるな。」
「「……はぁ…。」」
私とエフェンが交互に質問をし、ディルジアが答えていく。
何の問題もないだろうという様に、淡々と答えている。
しかし問題なんて大ありだ。
それだけの人数が入れる訓練場など、世界のどこを探しても無い。
かと言って国境付近で訓練するわけにもいかない。
それになにより、面倒なのだ。
これが一番の理由。
「悪いが、私達はそんなに暇ではないぞ。」
「なら近衛騎士団だけでもいい!少しでいいから……少しで…!」
「私からもお願いしたい。リフィ、エフェン。どうか引き受けてはくれないだろうか…?」
「僕からも…。近衛騎士団は強いのですが、宮廷魔法師達には敵いません。しかし同等の実力にさせたいのです。」
3人の必死さが伝わってきた。
確かに最近こんな噂を耳にする。
『宮廷魔法師達は、近衛騎士団よりも自らが強いと確信し、勝手に騎士団の仕事を行う為、両者の間に溝ができている。』
というものだ。
騎士達も魔法を扱うが、宮廷魔法師達との差は歴然。
剣が届く距離に近寄れないが為に、騎士団の方がどうしても弱くなってしまう。
「これ以上宮廷魔法師達を暴走させるわけにはいかないし、位としては騎士団と同格の存在だ。だからせめて、近衛騎士団だけでも…!」
「……分かった。」
「本当か!?」
「ああ。近衛騎士団のみの相手なら…だ。」
「そうね…。模擬戦とはいえ、万を超える相手と戦える場所なんてないし、戦いたくもないわ。それこそ、これだけの人数と戦うのは戦争くらいでしょうね。」
近衛騎士団『ヴァーツィ』。
それはこの国で最も強い騎士達が所属する騎士団だ。
彼らは魔法と剣を上手く利用した戦術を用いる。
人数は20人程度。
選び抜かれた優秀な者のみで構成されている。
「近衛騎士団のみで構わない。それでよろしく頼む。」
ディルジア達は安堵の表情を見せる。
「いつ模擬戦してやればいいんだ?」
「いつでもいいさ。早ければ明日にでも。」
「了解。なら明日にしてくれ。ちょうど空いているからな。」
「私も明日は問題ないわ。」
「では明日2人が訪ねると、騎士団長に伝えておこう。引き受けてくれてありがとう。」
「「どういたしまして。」」
そうして、私とエフェンは書斎をあとにするのだった。
32
お気に入りに追加
1,397
あなたにおすすめの小説


疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

成り上がり令嬢暴走日記!
笹乃笹世
恋愛
異世界転生キタコレー!
と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎
えっあの『ギフト』⁉︎
えっ物語のスタートは来年⁉︎
……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎
これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!
ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……
これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー
果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?
周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎

悪役令嬢はSランク冒険者の弟子になりヒロインから逃げ切りたい
鍋
恋愛
王太子の婚約者として、常に控えめに振る舞ってきたロッテルマリア。
尽くしていたにも関わらず、悪役令嬢として婚約者破棄、国外追放の憂き目に合う。
でも、実は転生者であるロッテルマリアはチートな魔法を武器に、ギルドに登録して旅に出掛けた。
新米冒険者として日々奮闘中。
のんびり冒険をしていたいのに、ヒロインは私を逃がしてくれない。
自身の目的のためにロッテルマリアを狙ってくる。
王太子はあげるから、私をほっといて~
(旧)悪役令嬢は年下Sランク冒険者の弟子になるを手直ししました。
26話で完結
後日談も書いてます。

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します
天宮有
恋愛
私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。
その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。
シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。
その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。
それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。
私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる